スマートフォン版へ

執念の8番手と執念の人気のない方

  • 2017年05月25日(木) 12時00分

ダービーのベストポジションは道中8番手でいいんじゃないか?

もう少し正確に記すと、
最近の東京の、ダービー週の、2分24秒を切る時計が出そうな良馬場の、ダービーのベストポジションは、道中8番手でいいのではないか?

と思う。思っちゃうのだ。

去年や一昨年を思い出せば、誰が見てもわかることだけど、念のため記してみる。
以下は、直近2年の2分24秒を切ったときのダービー好走馬。
8番手が大事なことがよくわかる。
同時にその前後も大事なこともよくわかる。

マカヒキ 8-8-8-8  1着 川田
サトノダイヤモンド 5-7-6-7  2着 ルメール
ディーマジェスティ 10-10-8-10 3着 蛯名

ドゥラメンテ 7-8-8-7 1着 Mデムーロ
サトノラーゼン 9-9-9-7 2着 岩田
サトノクラウン 14-14-14-13 3着 ルメール

最近の、この時期の、東京の、良馬場が、そんな傾向を生むのだろうけど、Mデムーロ、ルメールが通年騎乗になったことも大きいのではないか? 二人の騎乗馬は有力馬で、そういう有力馬に騎乗するときの外国人騎手は確実に勝つための騎乗をする。だから、周囲もマークしやすいのかもしれない。だから必然的に「中団やや前」という位置に有力馬も集まるのではないか。

ダービーポジションということばは、フルゲートが24頭以上だった頃に言われたことばで、18頭フルゲートの競馬では「死語」だろうけど、上記の理由で、死語のはずの「ダービーポジション」を再生させてみる。 

かつては「1角10番手以内」がダービーポジションと言われたけれど、今は「道中8番手」でどうだろう。
1角8番手としないのは、1角〜4角を回るまでずっと8番手にいるのがベストと思うからだ。

ベストで道中8番手、ベターで道中7〜9番手。これでどうだろう。

今年も2分24秒を切りそうな馬場になりそう。
だとしたら、勝ちたい馬は、もしくは勝てると思っている馬は今年も必然的に道中「8番手」を目指し、そこにいるのではないか。
なぜなら、有力馬に騎乗する騎手・厩舎がそこを狙っていそうだから。

アドミラブル Mデムーロ ドゥラメンテの競馬(7-8-8-7)をすればいい。
レイデオロ ルメール サトノクラウンは後ろ過ぎた、サトノダイヤモンドは気持ち前すぎた。
サトノアーサー 川田 去年と同じ競馬をすればいいし、ベストポジショニストの池江師が8番手の指示を出さないわけがない。

もう一人のベストポジショニストの福永・カデナ、ずっとダービーを目標に馬を育ててきた(はずの)四位・スワーヴリチャードらがそこを狙っていてもおかしくない。

うむ、今年のダービーは8番手の奪い合いの気がしてきたぞ!

--------------------
アドミラブルの8番手
--------------------

Mデムーロは青葉賞では3角から動くという東京2400の定石を破る競馬でアドミラブルを操った。しかし、その競馬をしていたら、ふつうは持たないこともわかっているはず。

それは先週のオークスを見ていてもわかる。
スローで流れたのはわかっていたはずだけど、アドマイヤミヤビでは動かなかった。途中で動くのが大好きなデムーロだけど、それをしなかった。

青葉賞 12-12-9-4 1着
オークス 15-13-13-12 3着

青葉賞はどうしても権利を取ることと、東京競馬場でどのくらい脚を使えるかを試す意味で、あのような競馬をしたのではないか? ちゃんとスタートさえ切れれば、ドゥラメンテで勝ったときのポジションを狙うのでは? そんな見立て。

にしても、Mデムーロはいつからアドミラブルだったのだろう?

2月25日 アーリントンC ペルシアンナイト1着 Mデムーロ
3月5日 未勝利 アドミラブル1着(松若) 2着馬の鞍上Mデムーロ
4月1日 アザレア賞 アドミラブル1着 Mデムーロ
4月16日 皐月賞 ペルシアンナイト2着 Mデムーロ

ごくふつうに考えると、Mデムーロは500万のアザレア賞に騎乗した時点で、ダービーではアドミラブルだったと想定できる。皐月賞後のペルシアンナイトの鞍上未定というアナウンスからもそれがわかるし、アザレア賞後のMデムーロのコメントからもそれがわかる。

アザレア賞レース後コメント・Mデムーロ
「追い切りにも跨がっていたし、前回の勝利の時の2着馬にも乗っていて、この馬の強さは感じていたけど、今回も強いのひと言。折り合いもつく馬で、距離もまったく問題なかった」(週刊競馬ブックより)

「強いのひと言」などという日本語を駆使するんだ!記者の意訳かもしれないけど、ニュアンスはそういうことなんだろう。コメント全体のトーンもピュアだ。純粋に強さを語っているように感じる。

いきさつはどうであれ、Mデムーロをダービーで確保したことは大きい。音無師の執念を感じる。今は、ルメールとMデムーロをどう確保するかも重要だ。それはオークスまでルメールを確保し続けた藤沢和師をみてもわかる。去年、一昨年のダービーを見てもわかる。勝ち負けは別として、出来うる最高の準備をするのが調教師の仕事だとしたら、ベストの騎手を確保するのも大仕事だろう。

ところで、青葉賞1着馬はダービーでは勝てないと言われている。実際勝った馬はいない。
でも、青葉賞を1人気で1着して、ダービーでも1人気に支持されたことのある馬もいない。

シンボリクリスエスも、ゼンノロブロイも、ペルーサも、フェノーメノも青葉賞は1人気で1着だったけど、ダービーでは3人気2着、3人気2着、2人気6着、5人気2着だった。1人気にはなれなかった。

ここは自分的には重要ポイントだ。

皐月賞を1人気で1着した馬がダービーでも1人気になるとほぼ勝つ(5-0-1-0)。皐月賞は、1人気で勝つのが難しいレースで、そこを1人気で勝つのだから、ダービーで1人気になって、勝つのは当たり前かもしれない。

NHKマイルを1人気で1着した馬が、ダービーで1人気になるとこれまた強い。
キングカメハメハ、ディープスカイがそれに該当する。

皐月賞もNHKマイルもG1レースだから、そこを勝った馬がダービーで1人気になるのは、当たり前かもしれないけれど、G2レースだって頑張れる。キズナは前走・京都新聞杯を1人気で1着して、ダービーでも1人気に支持されて1着した。

つまり、ダービー馬を輩出していない青葉賞でも、青葉賞を1人気で1着して、なおかつダービーで1人気に支持されるような馬なら、1着の可能性が残されていると思うわけだ。

かつて、NHKマイルを1人気で1着したカレンブラックヒルも、当時はニュージーランドTを勝った馬でNHKマイルを勝った馬はいないと言われていた。しかし、中山開催に替わった2000年以後、ニュージーランドTを1人気で1着して、NHKマイルを1人気に支持された馬もカレンブラックヒルまではいなかった。

だからこう思う。アドミラブルは、ダービーで1人気になったほうがいい! むしろいい!

--------------------
レイデオロの8番手
--------------------

サトノダイヤモンド  5-7-6-7  2着 ルメール

サトノクラウン 14-14-14-13 3着 ルメール

レイデオロもルメールが騎乗するのだから、ダービーでは8番手を狙いそうだ。

前走は出負けして、後方になったけれど、「目標はあくまでもダービー」だから、無理せず末脚を伸ばす戦法に変えられたのではないか。マカヒキは皐月賞で最後方系の競馬をして、ダービーでは8番手を取って勝った。川田は名手だけれど、その川田よりも上手いはずのルメールがそういう競馬をできないはずがない。

藤沢和厩舎にとっては、執念のダービーだろうけど、ルメールにとっても、2年連続で3着、2着なのだから執念のダービーのはず。

今年はソウルスターリングとレイデオロでルメールを確保した藤沢和厩舎。しかし来年またルメールを確保できる保証はない。オークスで勝ったから、ダービーは遠慮する。そんな余裕はないはず。

予想オッズは2人気。
ダービーは過去10年で、1人気が4勝、3人気が4勝、2人気は1勝、7人気が1勝だ。
悩んだら1人気と3人気の単勝を買えばいい。儲かるかはわからないけれど、高確率で的中する。

つまり2人気は、ややナイガシロにできる人気でもあるのだ。
ついでにいえば、馬券圏内でもけっこうナイガシロにできる(1-1-0-8)。

青葉賞組は勝てないというデータは無視する一方で、2人気が勝ちにくいというデータは大切にしてしまう。ワハー。

もし実オッズでも2人気だったら、自分は心配しようと思う。ただルメールのポジショニングには注目だ。

--------------------
池江厩舎の8番手
--------------------

にしても興味深いのは、皐月賞が池江厩舎・こだわりのローテの「前走きさらぎ賞」ではない2頭でのワンツーだったことだ。

そもそも池江厩舎が出走させる「きさらぎ賞→皐月賞」馬には、もれなく「目標はあくまでもダービー」がくっ付いていた。しかし、アルアインとペルシアンナイトからは「目標はダービー」というコメントは聞こえてこなかった。あったのかもしれないけれど、例年ほど伝播していなかった。で、その2頭がワンツー。声を出さないことが皐月賞への期待の表れだったということか? そういえば「目標はダービー」の池江厩舎の馬は皐月賞では3着が精一杯だ。

池江師の声は「………(無言)」も含めて耳をそばだてないと!

逆に言えば、池江厩舎・こだわりのきさらぎ賞に出走させたサトノアーサーにはどれほどの期待をしているのだろう? って話だ。

事実、皐月賞後に池江師は「(ダービーは)サトノアーサーと3頭で出すことになると思います。ダービーは“3段重ね”でいきたい」とリップサービスしていた(日刊スポーツより)。

皐月賞に出そうと思えば出せたけれど、皐月賞は毎日杯を1着したアルアインとアーリントンCを1着したペルシアンナイトに任せて、サトノにはダービーへ英気を養ってもらう。そんな腹づもりだったか!?

実際、アルアインとペルシアンナイトの皐月賞でのポジショニングにはダービーへの視野は感じられなかった。

アルアイン 1-4-5-5 1着
ペルシアンナイト 11-15-5-5 2着

アルアインは前方での積極競馬に、ペルシアンナイトは向正面15→5の競馬に、皐月賞への全力投球ぶりが伺えた。目標はダービーと高らかに宣言してたサトノダイヤモンドの皐月賞8-8-9-5の競馬とは明らかに違った。

それは毎日杯を見てもわかる。

サトノアーサーの毎日杯の位置取りは、8-8-7(2着)
アルアインの毎日杯の位置取りは、2-2-2(1着)

ダービーを視野に入れた闘い方をしていたのはどうみてもサトノアーサーだ。

皐月賞前までは、2億を越える値段のサトノアーサーへの配慮だけで、池江厩舎の王道ダービーローテを歩ませているとも思っていた。しかし、アルアインが皐月賞で1着できるということは、毎日杯でアルアインと接戦を演じたサトノアーサーの力も十分足りるという見立てにもなる。

池江師の“3段重ね”がただのリップサービスだとしても、アルアインとペルシアンナイトの皐月賞2段重ねが師のサトノアーサーへの期待を増し増しにしたのは間違いないだろう。

池江厩舎のサトノでのダービー挑戦はアーサーで3年連続3回目の挑戦となる。
ここ2年は連続2着。
しかもすべて違うローテ。
あらゆる航路でダービーを目指していることがわかる。

サトノラーゼン 5人気2着 前走京都新聞杯2人気1着
サトノダイヤモンド 2人気2着 前走皐月賞1人気3着
サトノアーサー 前走毎日杯1人気2着

京都新聞杯からトライして2着、皐月賞からトライして2着、今度は毎日杯からトライする。サトノをダービー・オーナーにするための執念のようなものも感じずにはいられない。

ダービー
サトノラーゼン 9-9-9-7 2着 前走4-5-5-5 1着
サトノダイヤモンド 5-7-6-7 2着 前走8-8-9-5 3着
サトノアーサー 前走8-8-7 2着

自分は、ベストポジショニストの池江師が毎日杯でダービーのために8番手の競馬をさせたと思っているので、道中8番手の指示を出す馬はサトノアーサーだと思い込んでいる。

予想人気は5人気。
5人気はダメとは思ってないけど、できることなら週末までPR活動に励んでもらって、3人気になって欲しい。現在の3人気はアルアインだから、厩舎内で人気のポジションチェンジをすればすぐだ。

--------------------
ダービー注目馬
--------------------

前記したようにカデナ、スワーヴリチャード、ベストアプローチなど、今年は他にも8番手を狙ってそうな馬がいるけれど、ダービーは1人気〜3人気に敬意を抱くレースだとも思っているので、ここまでにしておく。

特に注目は、アドミラブル(1人気)とサトノアーサーだ。

とにかく今年のダービーは1角に入るときのポジショニングが激しそうで、楽しみだ。

で、8番手前後にアドミラブルやレイデオロやサトノアーサーらがきっちり収まったら、その後ろから行く馬では差せないと思う。だから、ダービーが揺れ動くとしたら、前方にいる馬だと思い込んでいる。

アルアイン
ダンビュライト
クリンチャー

アルアインも、ダンビュライトも、クリンチャーも、池江厩舎、音無厩舎、ノースヒルズからそれぞれ見れば、人気のない方だ。
いや、アルアインは予想では3人気だけど、自分はサトノアーサーと入れ替わって、アルアインは5人気になればいいと思っている。その方がはるかに買いやすいからだ。

ダンビュライトは音無厩舎で、アドミラブルの出現により、皐月賞3着なのに今回も人気のない方になった。

クリンチャーは、同馬主のノースヒルズのカデナと比べて、人気のない方だ。

人気のない方の3頭に共通することは先行脚質。
アルアインは、池江師から、トーセンホマレボシ(3着)、トーセンスターダム(16着)みたいな競馬の指示が出そう。で、粘れるか否か。だから「皐月賞馬だけど人気がない」そんな状況が欲しい。トーセンホマレボシは、その競馬で同厩舎のワールドエースに先着した。

ダンビュライトは武豊騎手が逃げたら面白いと思っている。オークスのフローレスマジックには巨大な組織のテッペンから「逃げ」の指示があったそうだけど、武豊騎手に「アドミラブルが勝てるようなレースをしてくれ」という指示が降りるとは思わない。だからこそ、逆に武豊騎手自らが逃げたら面白いのに、誰も突っつかないだろうに、松若は要注意騎手だけど、音無厩舎の馬を突いたりしないだろうに、なんて思っている。

クリンチャーは皐月賞で一番難しいレースをしたように思う。宮本師が4角先頭はオーナーの指示とコメントしていたけれど、それがダービー前に出るというのが面白くて、ますますクリンチャーから目が離せなくなった。

実は、netkeiba.comの藤岡佑騎手と四位騎手の対談をずっと読んでいた。ダービーに合わせて対談に出るのだから四位騎手はよっぽど自信があるのだろうと思っていたし、実際そんな感じだったが、先週の対談を読み終わって、実は藤岡佑騎手こそが裏メニューではないか? と思うようになった。

だから今週の対談を楽しみにしていたら、自分が思っている以上にクリンチャーに対する期待が随所ににじみ出ていた(ように感じた)、対談ではアドバイスを拒否していた四位騎手だけど、オフレコではしっかりアドバイスしてるんじゃないか? うむ、きっとそうだ!

皐月賞は外、外を回っての早い仕掛け、それが指示でもアドリブでもどっちでもいい。とにかく対談からは、もう少しゆっくりと直線に入れたら「勝てた!」と言ってるように感じた。

だからクリンチャーからは目が離せない。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング