今さらの話だが、競走馬の評価とは、時の経過、そしてレースが終わるたびに刻々変わる。だから、「その馬の1年後」を予測するのは、困難というより不可能に近い。故障、休養などがあればもちろん、仮に順調なステップでも、成長力やら、リズムやら、さまざまな複雑な問題が立ちはだかる。デビュー時、神童と思えた馬が、秀才、優等生とトーンダウンし、ついにはただのオープン馬…。そんなケースも少なくない。
お笑いのフリではないけれど、そこで予想者の「悲しいこと」。自分の惚れた馬、見込んだ馬、その未練を容易に断ち切れないことである。こんなはずはない、これで終わるはずはない…。状態、距離、コース、もっともらしい敗因をひねり出して、性懲りもなくプッシュを続ける。記者本人の馬券、財布だけならまだいいが、読者諸兄には甚だ迷惑。予想者の性というか業というか、自分の“見込み違い”を、なかなか素直に認められない。
報知グランプリC(船橋2月23日 4歳上別定 南関東G3 1800m)
◎ベルモントストーム (54・石崎隆)
○ベルモントソレイユ (56・早田)
▲イシノファミリー (56・金子)
△ジーナフォンテン (55・張田)
△サクラハーン (54・山田信)
△ゴシップコラム (52・内田博)
△ウエノマルクン (56・鷹見)
コアレスハンター (57・佐藤隆)
ファイブビーンズ (54・左海)
ベルモントアクター (57・石崎駿)
ベルモントストームは惚れた馬だ。昨春「京浜盃」を圧巻の差し切り、それも直線だけで後続を6馬身ちぎったからインパクトがきわめて強い。当時の期待は、クラシック完全制圧はもちろん、明けてフェブラリーS挑戦。トーシンブリザードにどう続くか、そんなイメージ。しかし現実はその後順調さを欠き、東京ダービーで負け、JDダービーで負け、ようやく完調を伝えられた黒潮盃も、さして収穫の感じられない4着だった。復帰した前走「金盃」5着。仕上がった馬体で1番人気、掛かり気味に逃げたレースぶりも、正直評価が分かれるだろう。あえて本命は、こんな馬ではない…いうところの希望的観測を含めたもの。早熟のスピード馬か、もっと器が大きいか、改めて今回正念場と考えた。同オーナー・ソレイユの逃げなら、じっくりタメて切れ味勝負。ひとまず船橋コース、3戦3勝の事実がある。
ウエノマルクンは前走金盃3着、いつものまくりではなくインを伸びた精神力に、円熟と逞しさを感じさせた。ただ、元より気性難がある馬で、テン乗り鷹見騎手がどう捌くか、未知数の部分もやはり大きい。相手にみたベルモントソレイユは、本質的に短〜マイラーだが、今季折り合い進境、レース運びが格段にうまくなった。イシノファミリーは船橋重賞3勝、コース適性が何より強み。前走川崎記念大敗だが、1コーナー、タイムパラドックスと接触の不利もあった。ジーナフォンテンは、前走エンプレス杯を不完全燃焼とみたか、中1週ながらハードな追い切り。実績からまだ見限れない部分はある。以下、流れに乗ってサクラハーン、ゴシップコラムの川島正行勢。古豪コアレスハンターは、金盃15着の大敗。心身ともさすがにピークを過ぎただろう。
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ユングフラウ賞(2月16日浦和 3歳牝馬 1400m重)
△(1)ヨウヨウ (54・内田博) 1分26秒8
▲(2)インフレッタ (53・甲斐) 3
○(3)スコーピオンリジイ (55・酒井) 1
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◎(6)テンセイフジ (54・石崎隆)
ユングフラウ賞は、桜花賞トライアル。1〜3着までに本番優先出走権が与えられる。勝ったヨウヨウは、向正面から強気のまくり。最近内田博Jによくある流儀で、馬の持つ能力を最大限生かしてみせた。直線入口いったん手綱を緩ませ、最後もう一度加速して最後は独走。北海道で交流重賞を善戦してきたヨウヨウの能力は認めるとして、もはやどんな馬でも動かせてしまう南関リーディングジョッキーの腕が、印象とすると正直大きい。
川崎2戦2勝で臨んだインフレッタはスタート出負け。差す競馬に切り替えて2着なら善戦以上の価値がある。ただし397キロの馬体、今後の伸びしろとなるとまだ半信半疑だろう。昨秋ローレル賞を勝ったスコーピオンリジイも初コースとすると合格点。抜けた能力は疑問だが、逆に経験を積みだいぶ常識にかかってきた。期待したテンセイフジは後方のまま末脚不発。あるいは渋った馬場がよくないか。
牡馬に比べひと息冴えない牝馬陣。3月上旬、大井「桃花賞」(2着まで桜花賞優先権)が行われ、昨暮れ「2歳優駿牝馬」好走組のアサティスジョオー、セブンチャンピオン、ヒカリトリアネーらが出走予定。今年も本番は乱戦になりそうだ。何とか面白いダークホースを見つけ出したい。