3月2日、浦和・しらさぎ賞。ナイトスクールが完璧な逃げ切りで重賞連覇を果たした。言うところのロケットスタート。ゲートを出た一瞬で2馬身ほどもリードをつけ、そのままグイグイと加速する。スピードに乗って重心が沈む典型的なマイラーの走り。それでいて1000m通過が63秒2、きっちり折り合いがつくあたりがキャリア5戦目、完成されてきた証拠だろう。3〜4コーナー、鞍上の手綱はピクリとも動かず、逆に2番手マズルブラストの脚があがる。着差以上の強さ。予想した一騎打ちではなくワンサイド。浦和コースの適性、それだけのことではもちろんない。
しらさぎ賞(サラ3歳 別定 南関東G3 1600m良)
◎(1)ナイトスクール (55・内田博) 1分41秒4
○(2)マズルブラスト (54・今野) 2.1/2
(3)ブレットトレイン (54・酒井) 2
△(4)ワタリファイター (54・左海) 1.1/2
(5)セブンチャンピオン (53・石崎隆) 2
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▲(7)エアムートン (54・張田)
△(8)ジルハー (55・金子)
単250円 馬複210円 馬単470円
3連複7190円 3連単15160円
父マキャベリアン、英国産、ダーレーの一翼であるナイトスクール。「ここでいい競馬をして大井クラシックに胸を張って進みたい」坂本昇調教師、レース前のコメント通りの結果になった。本番(5月11日・羽田盃)へどうローテーションを組むか未定だが、羽田盃1800mまでは展開ひとつでこなせそうなムードがある。「精神的に落ち着いて、まったく危なげない走り。素質でしょうね。正直負ける気がしませんでした」(内田博騎手)。とはいえ、本番はシーチャリオット騎乗がすでに確定している。さらにいえばマズルブラストも、デビュー3戦目まで内田博騎手のお手馬だった。今の彼は、体がいくつあっても足りないだろう。
マズルブラストは終始勝ち馬をマークして乗られたが、スピードと器用さで一歩譲り今日に限ると完敗だった。「道中掛かってしまったし、広いコースがいいでしょう」(今野騎手)のコメント通り。ただし総合能力は5分と5分、評価が下がることはない。9頭立て9番人気ブレットトレインが直線インをスルスル伸びて3着だった。昨年暮れの全日本2歳優駿(G1)6着、まるで狙えない馬でもないのだが、現実に3連単1万5千円の立役者。この馬券はやはり難しく、柔軟な推理、買い方が要求される。24キロ増で4着と健闘したワタリファイター、桜花賞の試走含みで入着したセブンチャンピオン。この2頭はそれぞれ次走へ展望が開けたか。逆にエアムートンは線の細さがはっきりして一歩後退。いつになく先行策をとったジルハーも、この結果だと今後手探りとしかいいようがない。
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同じ3月2日、石崎隆之騎手(49、船橋・出川龍一厩舎)が、デビュー通算5500勝を達成した。第4レース、そのロンロンは好位から4コーナーじわりと先頭、ゴール際差し返す勝ちっぷりで下級条件(C3)ながら、いかにも石崎騎手らしい名人芸を思わせた。90〜02年まで13年連続南関東リーディング。NAR最優秀騎手を13年間守り抜き、しかも94年は阪神「ワールドスーパージョッキーズ」にも優勝している。南関東、いや日本ジョッキー界のまさしく至宝。49歳、持病の腰痛もあり、勝ち星のペース、騎乗回数などは全盛期より少し減ったが、ここ一番の勝負勘、レースの読み、いささかも翳りはない。
「力」ではなく「技」の騎手だ。展開を読み、力関係を読み、いざ勝負どころでカウンターを繰り出すのが真骨頂。馬を励ます、動かすというより、我慢させて脚をタメる。ダートのトップジョッキーとすると異例であり希少なタイプ。冷静、平常心、そしてキャリアに培われた確かな技術。いつの取材だったか、「競馬新聞はよく読んでますよ(熟読している)」と言ってくれたことがある。調整ルームで、装鞍所で、勝つための努力、研究を怠らない。そういう時間が好きなんですか?との記者の問いには「いやぁ仕事だから」と笑っていたが。
「あといくつ勝てるか、いつまで乗れるか。一戦一戦を大事にしたい」いつもながら淡々とコメントしたが、今年も3歳馬、手駒はそれなりにそろっている。ブルーバードCを制したタイムライアン、JRA500万を含む3戦3勝ドラゴンシャンハイ、さらにベルモントストームの全弟ベルモントギルダー。ひと区切りつけた大ベテランは、再び新たな気持ちで「春」に臨む。
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東京シティ盃(3月9日 大井 サラ4歳上 別定 南関東G3 1400m)
◎ベルモントソレイユ (58・早田)
○クールアイバー (58・石崎駿)
▲トミケンマイルズ (58・張田)
△ジェネスアリダー (58・桑島)
△ハタノアドニス (58・酒井)
△ブルーローレンス (56・的場文)
△カセギガシラ (58・内田博)
ナイキゲルマン (58・石崎隆)
アイチャンルック (54・山田信)
傑出馬不在。9歳ハタノアドニスはさすがに実績通りの評価ができず、スピード路線の新鋭トミケンマイルズも昨暮れ不可解な取りこぼし、中間ササ針というステップが気にかかる。前提は波乱含み。人気もソコソコ割れそうだ。
とはいえ、ストレートな推理はベルモントソレイユだろう。2歳時、ゴールドジュニアー(大井・1390m)圧勝、同世代でナイキアディライトに次ぐ絶対スピードがあること。昨シーズン、浦和、川崎の1900m〜2000mを使い、逞しさが違ってきたこと。素材のよさもさることながら、何より高橋三郎調教師とそのスタッフ、馬のレベルアップを図る創意工夫と情熱が素晴らしい。前走グランプリC(船橋・1800m)も、最後ゴシップコラムを差し返す2着だった。
クールアイバーは金盃2着。7歳馬ながら生涯最高のときを迎え、外回りコースなら1400mでも距離不足を感じない。トミケンマイルズは文字通り単穴。勝たれて納得の力関係、お膳立てだが、この馬と記者は予想の相性がどうも悪い。上昇馬ブルーローレンスはこれまで2戦大敗の大井コースをどうこなすか。内田博・カセギガシラは底力の点で信頼感が薄く、それならじっくり脚をためて乗るジェネスアリダーが穴。