5日、船橋「かしわ記念」。ストロングブラッドが鮮やかな差し切りでG1初制覇を飾った。好枠からナイキアディライトが快調に飛ばし、それをメイショウボーラー、アドマイヤドンがまくりあげる展開。内田博・ストロングブラッドは3頭の後ろ、仕掛けをワンテンポ遅らせ、直線あと1ハロン、抉るようにインを突いた。ジャストのGOサイン、一瞬のうちに抜け出して着差1馬身という以上の完勝だった。
「前の3頭は強いからロスのないところを狙っていた。初めて乗った馬でいい結果を出せてうれしいです」。鞍上からは、今やはりオーラが出ている。「ああいう形でこれほど切れる馬とは正直イメージしていなかった。腕というしかないでしょう」(増沢末夫調教師)。1000m通過が60.1秒はG1とすると速くもないが、レースが動いた3コーナー手前、ハロン11.9秒と一気にペースが上がっている。それを瞬時にとらえた判断力、思い切り、追い出しての確かな技術。もはや当代No.1ジョッキーとしていいかもしれない。任された馬は、G1だろうが最下級条件だろうが常に全力。その真剣さが馬に「生命力」を吹き込んでいる。
かしわ記念(サラ3歳上 定量 交流G1 1600m良)
△(1)ストロングブラッド (57・内田博) 1分37秒9
○(2)タイムパラドックス (57・武豊) 1
◎(3)ナイキアディライト (57・石崎隆) 2
△(4)アドマイヤドン (57・安藤勝) 鼻
▲(5)メイショウボーラー (57・福永祐) 首
単1860円 馬複2560円 馬単7010円
3連複2390円 3連単27190円
もっとも、ストロングブラッドにも勝って不思議ない能力と適性は十分あった。G1こそ初制覇だが、昨春は群馬記念(高崎)圧勝、当地1500mをレコードで快走している。2着プリサイスマシーン(川崎出身)は、最近のJRA移籍組では出世頭。まくり気味に出たスピード、瞬発力は文句なしにそれを凌いだ。他に重賞2勝、さくらんぼ記念(上山、1800m)、カブトヤマ記念(福島、芝1800m)。何か茫洋としてつかみづらいが、反面ひとつタイミングを捕らえたとき、イメージ以上の底力を発揮するタイプだろう。次走は中1週で、5月18日のさきたま杯(浦和、1400m)。昨年、同レース3着。好調を維持して乗り込めば、当然連勝の目が出てくる。
タイムパラドックスが、ゴール際大外から2着に届いた。ジャパンCダートなど実績からマイルは距離不足の感もあったが、結果が出てみればそうでもない。勝ち負けは別に、折り合いに苦しんだ川崎記念、ダイオライト記念。おそらく同馬の場合、緩みのない力の競馬が性に合う。
ナイキアディライトは期待通り渾身の逃げ。ひとまず馬券にからんだことで(3連勝・ワイド)、ここはよしと納得したい。メイショウボーラー、アドマイヤドン、超A級に終始マークされながら、その追撃をぎりぎり凌いだ。確かなパワーアップ。次走の帝王賞、展開ひとつで十分脈ありといえるだろう。
勝ち時計の1600m・1分37秒9は過去10年、良馬場に限るとNo.1。アドマイヤドン、メイショウボーラーも数字上は凡走と言い切れない。前者は往年の迫力ひと息、後者は地方ダートへ課題残し。再び王者不在ということか、戦いはまだまだ続く。
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南関東もいよいよクラシック本番に突入する。羽田盃→東京ダービー(6月8日)→ジャパンダートダービー(7月13日)と続く3冠ロード。言わずもがな、今年はシーチャリオットが一つ飛び抜けたレベルにあり、今回の羽田盃は同馬の強さを確認する、交流Gへ向け展望的な意味合いが大きいだろう。馬券的妙味は期待薄。あえてと言うなら3連単の絞り込み。まあしかし、こういう競馬もときにはいい。
シーチャリオット。まさしく真打ち登場というダーレー2期生。昨年暮れ「全日本2歳優駿」で土がついたが、明けて大井2戦、雲取賞、京浜盃の勝ちっぷりからは格段にパワーアップしている。道中持ったまま好位を進み、直線ケタ外れの瞬発力。マズルブラスト、トウケイファイヤー、時計からはこの2頭自体が例年の南関クラシックレベル。シーチャリオットはそれを馬なりで差し切った。一時代が築ける予感。距離1800mをどう勝つか。
ダート負け知らず、出世レース・端午Sを勝ったカネヒキリ。先週「兵庫チャンピオンシップ」を制したドンクール、同2、3着のアグネスジェダイ、プライドキム。JRA馬の層も厚いだけに、なおさらこの日の走りが興味だ。
羽田盃(5月11日大井 サラ3歳 定量 南関東G1 1800m)
◎シーチャリオット (56・内田博)
○トウケイファイヤー (56・有年)
▲マズルブラスト (56・今野)
△メイプルエイト (56・張田)
△サウンドイモン (56・坂井)
トウケイファイヤー、マズルブラストの比較は勢いで前者とみた。京浜盃2着、シーチャリオットと5馬身差だが、当時3か月ぶりを逃げたもの。新鋭・有年騎手も今度は相手の力を把握している。どう乗ったら際どい勝負に持ち込めるか。案外ノンプレッシャーで、自分のレースができそうだ。馬自身は、直前49.4-35.8秒の猛追い切り。思惑通り最高潮に達している。
マズルブラストは、漠然としたイメージながら、追ってそれほど味がない感もあり、メイプルエイトの上昇度を買う手もあるか。血統魅力は、コンサートボーイ×ハイセイコーの背景を持つサウンドイモン。
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東京プリンセス賞(5月12日 サラ3歳牝馬 定量 南関東G1 1800m)
◎アウスレーゼ (54張田)
○ヨウヨウ (54内田博)
▲ミライ (54金子)
△テンセイフジ (54石崎駿)
△セブンチャンピオン (54石崎隆)
△クリストサファイア (54今野)
△シンデレラジョウ (54左海)
スコーピオンリジイ (54酒井)
翌日の「プリンセス賞」はフルゲート16頭。馬券的に面白そうだ。伏兵ミライが逃げ切った浦和「桜花賞」をどうみるか。1600mで1分39秒5のレースレコードである以上、番狂わせ、フロックとは言えないが、当時水の浮く道悪、極端な高速馬場で前残り。そこで力を出し切れなかった馬に注目したい。
アウスレーゼはその桜花賞、返し馬の時点から外へ外へとモタレていた。初体験の左回り。レースも終始流れに乗れず、はっきり脚を余している。3月大井の桃花賞は、3〜4コーナーを一気のまくりで価値ある2着。北海道時代、1800m・OP2着があり、距離延長はむしろ歓迎材料だろう。
ミライは大井1800m、同型との兼ね合いとさまざま難関を残しており、ひとまず単穴の評価とした。実績、総合力で上回るヨウヨウも、ゲート難が解消せず、内田博ジョッキーながらそう信頼度は高くない。テンセイフジの切れ味、セブンチャンピオンの馬力も見直し。アウスレーゼから少し手広い流し馬券を考えたい。