6月15日、川崎「関東オークス」。地元テンセイフジが一気のまくりで快勝した。交流重賞に昇格して6年、地方勢の優勝は今回初めて。2100m2分16秒5、脚抜きのいい馬場とすると平凡な時計だが(昨年トーセンジョウオー2分15秒9)、後続に2.1/2差をつけ、自身最後まで余力があった。同馬は、桜花賞→東京プリンセス賞→関東オークスの、牝馬クラシックを3、1、1着で通過した。440キロ台、一見華奢にみえながら、意外なほど芯が強く、いい脚を長く使う。
関東オークス(3歳牝 定量 交流GIII 2100m不良)
△(1)テンセイフジ (54・石崎駿) 2分16秒5
◎(2)シールビーバック (54・松永幹) 2.1/2
(3)エイシンサンバレー (54・安藤勝) 鼻
▲(4)ライラプス (54・武豊) 首
(5)クインオブクイン (54・濱口) 1
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△(8)セブンチャンピオン (54・佐藤隆)
△(10)コスモマーベラス (54・内田博)
○(11)ミライ (54・金子)
△(12)クリストサファイア (54・石崎隆)
単750円 馬複2090円 馬単5720円
3連複6480円 3連単38290円
「他馬を気にする面があるのでスタートはソッと出た。最初から外々を回ってまくるイメージ。直線抜け出して一瞬ソラを使ったけど、またすぐハミをとってくれました」(石崎駿騎手)。同騎手はこれで重賞3勝目。4月、ナイキアディライトの「マイルグランプリ=大井」で弾みがつき、今回交流重賞初優勝も軽々と達成した。馬の特長をつかみ考えて乗れること。仕掛けのタイミングなど勝負勘が素晴らしいこと。恵まれた環境(父・隆之騎手)は当然として、本人の才能、努力、やはりそちらが大きいだろう。デビュー4年目、21歳。夢が無限に広がっている。テンセイフジは、このあと短期放牧、10月「ロジータ記念」目標と明言された。JRA古馬との対戦も描くと、自身ひと回り体を増やすことがテーマになる。
2着争いはゴール前できわどくなった。内枠から早めに攻めたシールビーバック、これを目標に追いすがったエイシンサンバレー、さらに大外強襲ライラプス。時計、勝ち馬との着差からは、正直どれも好走とはいいがたく、馬場と展開、わずかにシールビーバックに分があった結果だろう。「(敗因が)ダートなのか距離なのかわからない。道中の行きっぷりはよかったけれど…」(武豊騎手)。JRA重賞1勝(芝)。しかし初ダート、2100mでは大きく話が違ってくる。ミライはいったんハナを切ったものの、クインオブクインに並ばれ3コーナー手前で競り負けた。距離、折り合いを考えた騎乗だろうが、1000m通過62秒4では後続も脚を使わず追走できる。現時点の同馬は、やはりケレン味なく飛ばしてこそか。セブンチャンピオンは道悪、クリストサファイアは左回りがどうやらよくない。
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テレビ埼玉杯(6月21日浦和 3歳上 別定 南関東G3 1400m)
◎ブルーローレンス (58・的場文)
○ベルモントストーム (56・石崎隆)
▲ブラウンシャトレー (58・張田)
△ハタノアドニス (58・御神本)
△ロッキーアピール (58・山崎)
コアレスフィールド (58・佐藤隆)
絞れる顔ぶれ。いわく3連単向きのレースになった。ブルーローレンスは堅い中心でいいだろう。前走GIIIさきたま杯2着。結果無念の首差だが、終始快調なテンポで飛ばし終いもしっかり伸びている。良の1400mで1分25秒5なら、短距離走者として全国レベル。これまで11勝、すべて的場文騎手とのコンビでマークした。重〜不良、4戦4勝。今回どこをとっても死角がない。
ベルモントストームは、近況から本質的に短〜マイラーと判断できる。浦和は3歳春しらさぎ賞を制し相性がいいこと。別定戦で他馬より2キロもらったこと。ハタノアドニスがいる限り、好位でじっくり折り合いがつく。逆にハタノアドニスは目標になると厳しいイメージ。さすがに9歳馬、かつてのスピード、粘りは疑問だ。それなら道中多少モタついても、総合力でブラウンシャトレー。3連単、ブルーローレンス→ベルモントストーム→ブラウンシャトレーをまず買いたい。
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東京湾カップ(6月23日船橋 サラ3歳 別定 南関東G3 1800m)
◎ドラゴンシャンハイ (54・石崎隆)
○ブラウンウォーキー (54・張田)
▲キンセイブレイド (54・的場文)
△ワタリファイター (54・左海)
△ブルーマルゼン (54・山田信)
△ビービープライド (55・金子)
△トネノヒカリ (54・佐藤祐)
ニイタカヴァンクル (54・宗形)
ナイキコランダム (54・内田博)
こちらも争覇圏は絞られる。しかしクラシック実績のない3歳馬。大半が未知数の部分を抱え、意外な波乱、落とし穴もありそうだ。
素質をとればドラゴンシャンハイ。休養をはさみ3戦3勝。地元2勝は当然として、前走JRA500万、大外一気が圧巻だった。当時4コーナー11番手からゴボウ抜き。1300m1分20秒1、上がり37秒0なら低レベルでは決して無い。シャンハイ×ミルジョージの大型馬。オーナーは吉田照哉氏。中間ひと息入ったが、稽古は長めから好時計を連発している。
5戦4勝キンセイブレイドも期待馬だが、唯一の敗戦が前々走川崎2000mクラウンカップ(9着)。当時ハナを切りながら勝負どころでズルズル後退。人気に見合う信頼性が出てこない。格下ながら勝負強さを感じさせるブラウンウォーキー(3戦3勝)、一線級相手に善戦してきたワタリファイター。ブルーマルゼン、ビービープライドの川崎勢も展開ひとつで脈ありだろう。
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好事魔多し…とはまさしくこれか。シーチャリオットの故障、戦線離脱。左トウ骨遠位端剥離骨折。膝の少し上あたりだろう。東京ダービーのレース中発症したものらしい。すでに骨片除去手術を終え全治4か月と診断された。そう深刻なものではなさそうなのが救いだが、何よりこれだけの馬である。カネヒキリとの対決。大きく盛り上がるはずだった「ジャパンダートダービー」。残念としか言葉がない。
もっとも競走馬に故障は付き物。走る馬ならそのリスクはなおさら大きい。クラシックさ中の故障、挫折。古くはホスピタリテイ(昭和57年)、マルゼンアディアル(同60年)、さらにナイキジャガー(平成8年)、キャニオンロマン(同9年)。少し経緯は違うが、昨年のアジュディミツオーにしても2歳時デビュー戦快勝後骨折。6ヶ月の休養を経験しながら、最後は頂点へ昇りつめた。
「馬は元気いっぱい。しばらく自厩舎で休ませる。ずっと使ってきたし、いい充電にする意味でもじっくりやっていきたいね」(川島正行調教師)。このコメントは頼もしい。あくまで前向き。すぐ気持ちを切り替えられるあたりが名トレーナーの器量だろう。“塞翁が馬”、そんな言葉もあった。あとはシーチャリオット自身の持つ“運”と“生命力”に期待をかけたい。