6月29日、大井「帝王賞」。タイムパラドックスが完璧な差し切りで古馬ダートNo.1の座についた。重賞7勝目、交流GI・3勝目。しかし今回はこの馬自身、生涯最高のレースではなかったか。道中は中団をスムーズに進み、直線圧倒的な瞬発力。インをすくう好騎乗が光ったジャパンCダート、軽い相手のわりに手こずった川崎記念。対してこの夜の勝ちっぷりは、馬の能力、持ち味がストレートに表現された。2000m・2分03秒5はレースレコード(98年アブクマポーロ)にコンマ1秒差であること。“鬼門”とされた大井コースを7歳の年齢で克服したこと。パラドックス自身、外見そう見映えはしないが、やはり父ブライアンズタイム、芯の強い晩成型というべきだろう。先週の展望で記者は「決定戦にはやや不満なレベル」と書いた。ひとまず撤回して脱帽する。少なくとも今回のパラドックスは勝つべくして勝った。
帝王賞(4歳上 定量 交流GI 2000m重)
▲(1)タイムパラドックス(57・武豊) 2分03秒5
△(2)ストロングブラッド(57・内田博) 1.1/2
◎(3)ナイキアディライト(57・石崎隆) 2
△(4)ユートピア (57・安藤勝) 2
△(5)クーリンガー (57・和田) 1
………………………
(6)ケージーチカラ (57鈴木啓)
△(8)トーシンブリザード(57石崎駿)
○(9)スターキングマン (57デザーモ)
単370円 馬複1630円 馬単2700円
3連複1820円 3連単11700円
武豊騎手はゴール板で大きなガッツポーズをみせた。彼とすると珍しいことかもしれない。「返し馬からいい感じが伝わったし、気分よく走らせればチャンスがあると思っていた。嬉しいですね。僕自身帝王賞を初めて勝てた」。改めてファイルを開くと10回目の騎乗。一昨年ゴールドアリュールの故障など、なぜかめぐりあわせが悪かった。天才ジョッキーの数少ない“憂鬱”を、パラドックスがここで一気に晴らしてくれた。「大井に来た武豊は買えない―」そんなことをしたり顔でいう予想者がいる。人気馬を消す、馬券作戦の一つとしては否定しないが、ごく客観的にみて、勝負勘、追っての技術などやはり群を抜いている。記者自身は、川崎にせよ船橋にせよ、どこへ行っても全力投球で臨む“姿勢”が何より好きだ。
ナイキアディライトは2分04秒1で走って3着。昨年04秒0だから相手が強かったと納得だろう。1000m通過60.5秒(昨年62.8秒)。後ろがトーシンブリザード、サクラハーンだから特につつかれた印象もなく、軽い馬場で自身ピッチが上がった結果か。本来騙し騙しでは乗れないGI。2分03秒台に届かない以上、今回3着が能力通りだ。ストロングブラッドは、前走かしわ記念快勝の実力をここで再び示している。好位から直線インを突く戦法もイメージ通り。パラドックスが距離2000mの適性で上回った。ユートピア、クーリンガーは、アディライトが飛ばしたぶん、追走が厳しくなった。ともにマイラーに近い先行型。力勝負ではこんなものというしかない。スターキングマンは中団からジリ下がり。パドックの馬体、気合などけっして悪くみえなかったが、結果的にかつての集中力が戻っていないか。
☆ ☆ ☆
スパーキングレディカップ(7月6日川崎 3歳上牝 別定 交流GIII
1600m)
◎ジターナフォンテン (55・左海)
○トーセンジョウオー (56・後藤)
▲グラッブユアハート (56・安藤勝)
△レマーズガール (57・武豊)
△エターナルハピネス (55・的場文)
△ジーナフォンテン (57・内田博)
△オルレアン (55・中舘)
クインオブクイン (52・浜口)
ラヴァリーフリッグ (56・石崎隆)
ジターナフォンテンをもう一度狙ってみる。JRA500万条件ながら、船橋に転じ5戦3勝。格下を承知で臨んだ前走マリーンカップ、結果6着でも道中は前々で十分な見せ場があった。恵まれた馬格、豪快かつ柔軟なフットワーク。記者の見方、勘が当たっていれば(希望的観測)、ジターナはここでシンデレラガールに昇りつめて不思議ない。貴重な経験をして今回GIII2度目の挑戦。繰り返し書くが、レマーズガール頂点の牝馬ヒエラルキーは、層が薄い、相手が弱い、“偏差値”で続いてきた部分が大きいだろう。
JRA馬4頭。トーセンジョウオーはそのマリーンカップで復活した。昨春アクイレジアに競り勝った関東オークス。当然川崎はいいはずで4歳馬の上昇度にも魅力がある。グラッブユアハート、レマーズガールの比較は、マイル適性で前者やや上位とみた。再び目標にされるオルレアンなら、内田博ジーナフォンテン、的場文エターナルハピネスの方に食指が動く。笠松クインオブクインもテンのスピードはかなりのもので、仮に道悪でも、最後乱戦の差し較べをイメージした。