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3歳馬強し

  • 2005年08月22日(月) 19時37分
 8月16日、大井「黒潮盃」。ボンネビルレコードが鮮やかな差し切りで重賞初制覇を飾った。笠松・フジノウェーブが内枠からハナを切り、1000m通過60.7秒のハイペース。ボンネビルレコードは中団よりやや後ろをじっくり進み、直線大外に進路をとった。あと1ハロン、GOサインとともに圧倒的な瞬発力。3番手から満を持して抜け出したトウケイファイヤーを並ぶところなく捕えている。ボンネビルレコード、これが自身2勝目とは、改めて何やら不思議な感慨がわく。昨秋10月16日新馬戦を勝って以来、自己条件であろうと重賞挑戦であろうと、常に“善戦”を繰り返してきた。アサティス産駒。一見細身で華奢に映るが、内面はウイングアローあたりに似ているだろうか。敗戦をバネにする基礎体力と精神力。1800m・1分52秒7は、馬場状態を含め文句なく優秀で(昨年キョウエイプライド=53.3秒)、仮にここへメイプルエイトあたりが出てきても十分接戦がイメージできる。どこかパンチ不足の馬…。それが今回ものの見事に変身した。

黒潮盃(サラ3歳 別定 地方競馬交流・南関東G2 1800m 不良)

▲(1)ボンネビルレコード (55・的場文)1分52秒7
△(2)トウケイファイヤー (55・有年)  3/4
 (3)ダンシングスキー  (56・鈴木啓) 5
○(4)ブラウンコマンダー (56・張田)  2
△(5)キョウエイペガサス (55・山田信) 1.1/2
…………………………
△(6)フジノウェーブ   (55・安藤光)
△(7)マズルブラスト   (55・内田博)
◎(11)ドラゴンシャンハイ (56・石崎隆)

単480円 馬複2,680円 馬単4,590円
3連複30,440円 3連単169,750円

 3月10日の落馬事故。今季大きく出遅れたかにみえた的場文騎手だが、結局これで重賞4勝目。「ドンピシャリのタイミング。強くなったね。前走(JDダービー3着)がフロックじゃない、それを証明できた意味でも今日は嬉しい」。展開を読み、馬の脚を読み、最高の結果に結びつけた。内田博騎手とのリーディング争奪。数字はさておき、彼自身は今が円熟、連日極限のベストプレーを演じているといえるだろう。もう一つ、今年の3歳馬はレベルが高い。繰り返しになるが、1800m・1分52秒7はその裏付けに十分だった。前日古馬B1下コスモベルモットが53秒9。しかも黒潮盃当日は、夕刻の驟雨で大井コース特有、時計の出にくい馬場である。折りしも佐賀競馬場「サマーチャンピオン=交流GIII」のビデオが流れ、3歳アグネスジェダイがヨシノイチバンボシを差し返して勝っていた。「ずっと頑張ってくれたし、しばらく充電。あとは馬と相談して…」(ボンネビルレコード=庄子調教師)。いずれにせよ伏兵が勝ってこの時計だから、3歳馬の展望はきわめて明るい。

 トウケイファイヤーがいい競馬をした。厳しい流れの2番手を手応え十分。抜け出すタイミングも悪くなかった。勝ち馬の決め脚が強烈で印象は完敗だが、自身1分52秒8、鞍上も含め“自信回復”という内容だろう。3着以下はちぎられたが、九州(佐賀・荒尾)No.1の転入馬ダンシングスキーが善戦した。ハイペースの好位でバテず、骨太のしっかりした馬体からも成長株か。ブラウンコマンダーはボンネビルレコードより一歩早めに外から動き、そのぶん案外伸びなかった。粘っこい馬場状態も敗因と考えられ、この一戦だけで評価は落ちない。期待したドラゴンシャンハイ。道中3番手のインはいいとして、首が高くフットワークに終始リキみが感じられた。「前走(東京湾C)逃げたせいか、掛かってしまった。重かった(4kg増)のもあるでしょう。力負けとは思っていない」(石崎隆騎手)。競馬センス抜群にみえたが、そこはキャリア4戦の3歳馬。今日は試練、経験だったと納得する。マズルブラストは好位からジリ下がり。使い込んできた蓄積疲労か、あるいは本質的にマイラーか。現時点では判然としない。

   ☆     ☆     ☆

スパーキングサマーC(8月18日川崎 サラ3歳以上 別定 南関東G3 1600m 良)

◎(1)マクロプロトン  (53・内田博) 1分40秒7
○(2)サンポンド    (53・的場文) アタマ
 (3)イシノブライアン (53・甲斐)   1
△(4)ティーケーツヨシ (55・酒井)   3/4
▲(5)サクラハーン   (55・佐藤隆) クビ
……………………………
△(8)デンバースワン  (53・今野)
△マキノヒリュウ   (53・山田信) 取り消し

単140円 馬複210円 馬単280円
3連複3,140円 3連単6,190円

 マクロプロトンが、9連勝目を重賞で飾る快挙をとげた。単勝140円の1番人気。しかし現実には薄氷を踏む勝利。勝負ごとの厳しさ、改めて痛感する一戦でもあった。逃げたサンポンドは1000m通過61.0秒のマイペース。マクロプロトンは1コーナー殿り、その時点で内田博Jのムチが入った。元より末脚勝負にしても反応が鈍すぎる。向正面、3コーナー、終始じりじりする行きっぷり。直線入口、何とか2番手に上がったものの、前と差が詰まらない。馬を信じてあきらめない、結果頭だけ捻じ伏せたのは、鞍上の執念、ガッツに尽きるだろう。「今日はイレ込みがきつかった。ホッとしてます。力だけで勝てました」。さまざま見方はありそうだが、馬自身使い詰めで少し調子が落ちている、それが妥当か。1600m・1分40秒7、軽い馬場を考えると時計自体がいかにも甘い。

 ともあれ南関東再トレードで、マクロプロトンは現在船橋・坂本昇厩舎。陣営は早くからこのレースを意識し、前走TR快勝など万全の態勢を敷いてきた。上昇度、相手関係、時計比較、あらゆる角度から勝機濃厚。それでもいざレースとなると簡単には勝たせてくれない。「道中ずっとヒヤヒヤした。期待が大きかったぶん、嬉しいというより肩の荷がおりた感じでしょうか…」(坂本昇師)。コメントを聞いてやはり…とうなずく。やるだけのことはやった、客観的な状況は整った、それでも最後は勝利の女神がどこに微笑むかわからない。

 サンポンドは的場文J騎乗で能力を出し切った。現実に持ちタイムだけ走れなかったが、こちらも酷暑を使い詰め。状態が100%ではなかっただろう。逆にベテラン・イシノブライアンが3着健闘。地元マイル実績通りの好走だった。ティーケーツヨシは結果的に距離不足。サクラハーンは勢いがないという結果になった。話を戻してマクロプロトン。今日の勝利で「日本テレビ盃」の優先出走権を獲得したが、そこは使わず、次走10月大井「東京記念=2400m」と明言された。やや意外、しかし面白い選択だと思う。いい感触が得られれば、それこそ交流GI・東京大賞典などにも展望が開けてくる。あとは馬自身の成長力だ。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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