▲横浜で開催されたホースメッセ、筆者も登壇したトークショーをレポート(画像はスライドショーより)
命を落とすその時まで、人のために生きている
競走生活を引退したあと、馬たちはどこに行くのか。種牡馬や繁殖はほんのひと握りで、ほとんどの馬たちの用途は「乗馬」となっている。だが日本の乗馬人口を考えてもすべての馬が乗馬になれるわけでもないことは、ちょっと考えればわかることだ。だが実際に乗馬になるための再調教を受け、乗馬として命を繋いでいる馬が数多くいるのも事実だ。
取材等で乗馬クラブを訪ねてみると、20代半ばから後半の高齢馬が乗馬として重宝されているケースによく出会う。認定NPO法人引退馬協会・代表の沼田恭子さんは、乗馬倶楽部イグレットも経営しており、実際に元競走馬も繋養しているが、クラブにいる高齢の練習馬に起こる問題点を次のように語った。
「必ず出てくるのが病気の問題ですね。疝痛を起こしやすくなったり、怪我をしやすくなるということもありますが、1日で1頭につき何鞍乗れるかも(経営上)計算していると思うんです。高齢になるとそれもできなくなりますし、限られた馬房数の中で(人を乗せるという)お仕事をしてくれる馬がちゃんといてくれないと困りますよね。ですからあまりお仕事ができなくなった馬は、お仕事ができる馬と入れ替えなければならないという方向にどうしてもなってくるのはないでしょうか」(沼田代表)
▲乗馬クラブ側の負担が大きい現実(スライドショーより)
前回も書いたが、イグレットでは高齢になった馬をクラブから出さず、最後まで面倒を見ている。
「お仕事をしない馬のトレーニングやお世話をするのは、スタッフにとっても負担になっています。これは理解がないとなかなかできないんですね。レギュラーのクラブの会員さんにとっては年を取ってもいてくれるという安心感はあると思いますが、乗馬クラブ側の負担というのはとても大きいです」(沼田代表)
沼田代表によると、現在は30歳前後まで生きる馬が増えてきたという。途中、故障などで練習ができなくなるなど個体差はあるが、元気ならば20歳を超えても乗馬として活躍するのは十分可能のようだ。