10月5日、大井「東京盃」。3歳アグネスジェダイが抜群のスプリントをみせつけた。道中ベルモントソレイユ、ロッキーアピールの3番手。痺れるような手応えとはこのことで、外々を実にスムーズ。鞍上の手綱はぴくりとも動かない。直線中ほど、ほぼ馬なりのまま前2頭を並ぶところなく抜き去った。着差こそ1馬身だが、勢い、余裕が後続とはまるで違う。「とにかく状態がよかった。フワッとする面があるので、最後はハミをかけて追いました。嬉しいですね。僕自身、大井は初勝利でもあったから」(小牧太騎手)。1分11秒2、例年10秒台の決着だから、数字上のレベルは高くない。それでも同馬の走りに限っていえば、楽勝という事実だけで必要十分。「これで胸を張ってJBCへ…」(森秀行調教師)。能力と適性が明確になり、一挙に視界が開けている。腕っぷしが強く、追えるイメージの小牧騎手が大井初勝利とは、本人のコメントで初めて知った。単なるめぐり合わせにすぎないと周囲は思う。しかしこういう記録、本人には意外なほど胸のつかえであるのだろう。
東京盃(10月5日大井 サラ3歳上別定 交流GII 1200m重)
△(1)アグネスジェダイ (54・小牧太) 1分11秒2
△(2)ニホンピロサート (56・横山典) 1
○(3)ロッキーアピール (56・今野) 首
(4)マンボツイスト (56・村松学) 1/2
(5)ベルモントソレイユ (56・早田) 1
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▲(6)エンゲルグレーセ (56・中舘)
△(7)ハタノアドニス (57・石崎隆)
△(9)ノボトゥルー (58・武豊)
◎(11)スピニングアロー (56・張田)
単570円 馬複1,690円 馬単3,530円
3連複10,440円 3連単49,830円
アグネスジェダイは、札幌芝1000mのデビュー勝ち。いったんクラシックを視野に入れ、ダート路線変更後もユニコーンS、JDダービー、さらにダービーGPと王道を歩んできた。善戦を続けた半面、距離適性が判然とせず、近況はなにやら尻すぼみのジレンマがあった。父アグネスワールドのスピード型。結果的に原点復帰ということか。岩手ダービーGPから中2週、厳しいステップの中で馬を作った森秀行スタッフの腕も、ここで大きく賞賛できる。さらにハードルが高くなる11月3日名古屋JBC。しかし新戦力としての魅力は大きい。
ニホンピロサートが貫禄で2着に届いた。混戦を割ったパワーと根性はさすがだが、18キロ減の馬体でこの力走。本番がやや心配という感もないではない。エンゲルグレーセは立ち遅れ。大井短距離でこのミスはおおむね致命傷になってしまう。ロッキーアピールは外々の2番手追走。前走アフター5スター賞と同様のレース運びで、持ちタイムだけきっちり走った。結果的に相手が上というしかあるまい。スピニングアローは中団からジリ下がり。どうにも不可解。「こういう馬場(道悪)は合わないね…」(張田騎手)が、唯一思い当たる敗因か。10歳マンボツイストの4着健闘は立派だが、正直先につながるとも思えない。先手をとれないハタノアドニスは高齢だけにこんなもの。ノボトゥルーも含め、いよいよ世代交代の時期にきている。
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東京記念(10月6日大井 サラ3歳上別定 南関東G2 2400m不良)
◎(1)ボンネビルレコード (56・的場文) 2分33秒3
○(2)ウエノマルクン (56・鈴木啓) 3/4
△(3)トウケイファイヤー (54・有年) 2
▲(4)シャコーオープン (58・石崎駿) 頭
(5)アイチャンルック (56・真島) 1.1/2
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△(8)マクロプロトン (57・内田博)
△(9)ケージーチカラ (58・御神本)
△(12)スプリングエトナ (56・石崎隆)
単240円 馬複1,490円 馬単1,660円
3連複5,400円 3連単19,490円
こちらも3歳馬強し…の結果となった。ボンネビルレコード、見事な差し切り。ホクトアサティスが掛かり気味に先行し、長丁場とすると厳しい流れ。ボンネビルは中団のインをじっくり進み、直線あと1F、外から豪快な末脚を繰り出した。本格派の追い込み馬、いかにもというパフォーマンス。展開の利、好騎乗を割り引いても、その充実はひとこと凄い。「前走(黒潮盃)が強かったから、自信を持って乗れました。馬体が一戦ごとに増えているし(当日5キロ増)、これから本当に楽しみです」(的場文騎手)。カネヒキリ、シーチャリオットの域はともかく、メイプルエイト級にはすでに追いついたかもしれない。父アサティス、かつてのウイングアローとよく似た鬼脚。2分33秒3は東京記念過去10年でNo.1。3歳馬の優勝例は、何と昭和53年ハツシバオー(当時3冠馬)にさかのぼる。次走未定だが、ひとまず暮れの大賞典が目標か。
2着ウエノマルクンは、好位から早めに動き一分の隙もないレースぶり。地力と経験を感じさせたが、惜しいことに今回も相手関係で運がなかった。トウケイファイヤーは好スタートをいったん下げ、終いジワリと伸びたから収穫が大きいだろう。まだまだ未知数を感じさせる3歳馬。鞍上・有年騎手とともに、今後どう成長するか。久々シャコーオープンも、前々を積極的に動いて4着は上々だが、最後舌を出して遊んだあたり、常識にかからない面も依然課題として残っている。スプリングエトナは、現時点で距離が長いか。マクロプロトンは初コースで流れに乗れず、ケージーチカラは速い時計の競馬で追走に苦しんだ。
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ロジータ記念(10月12日川崎 サラ3歳牝馬別定 南関東G2)
◎テンセイフジ (56・石崎駿)
○グローバルリーダー (52・張田)
▲ジュエルシャネル (52・内田博)
△ビバオグリワンダー (52・的場文)
△ナイススマイルワン (52・石崎隆)
△ビービーシグナス (52・金子)
△マルマツキセキ (52・繁田)
クリストサファイア (54・今野)
スコーピオンリジイ (54・酒井)
シンデレラジョウ (52・左海)
※出走馬・騎手は想定
春の主力級から、ミライが抜け、ヨウヨウが抜けた組み合わせ。プリンセス賞→関東オークス連破の2冠馬テンセイフジが地力で大きくリードする。小柄でも卓越した瞬発力と勝負根性。とりわけ関東オークスは、JRA勢に21/2馬身差をつけて余裕の勝利。交流後、地方馬初の優勝だから絶大な価値がある。以後5か月の充電は当初から予定のステップ。中間入念に乗り込まれ、最終追い切りも文句なしの動きだった。あえて死角といえば、ただ1頭56キロがどう響くか。
スコーピオンリジイ、シンデレラジョウら既成勢力が伸び悩み、相手は夏の上昇馬だろう。中でグローバルリーダーは6戦3勝、息の長い末脚に特徴があり、2100m向きとイメージできる。前々走遠征した水沢「ひまわり賞=岩手オークス」3着。今回初コースながら、精神面の逞しさは実証済みだ。大井5戦4勝ジュエルシャネルも注目馬だが、こちらはややカカる気性で、左回り、長丁場をどう折り合うか。圧巻のまくりで2連勝ビバオグリワンダー、父ブライアンズタイムの成長株ナイススマイルワンも差がない。地味なところでは関東オークス6着、前走浦和をひと叩きしたビービーシグナス。