ディープインパクトの後継種牡馬キズナが好発進!(辻三蔵)
想像以上にスケールが大きい種牡馬の予感
今年の中央競馬2歳リーディングサイヤーは、新種牡馬のキズナが首位独走。獲得賞金1億5540万円は2位ダイワメジャー(1億3068万円)、3位ディープインパクト(1億1829万円)を大きく上回る(データは2019年9月1日現在)。
キズナ産駒は出走頭数1位のエピファネイア産駒(45頭出走)に迫る44頭がデビュー。
晩成の印象はあったが、仕上がりの早さが目立つ。
しかも勝馬頭数11頭はディープインパクト(12頭)に次いで2番目に多く、勝馬率25%はディープインパクト(勝馬率46%)、ダイワメジャー(勝馬率28%)に続いて3番目の高さ(出走頭数20頭以上に限定)。
函館2歳S(GIII)で世代最初の重賞制覇を果たしたビアンフェ、コスモス賞(オープン)を制したルーチェデラヴィタと2頭のオープン馬を輩出。今は亡きディープインパクトの後継種牡馬として好発進を決めた。
コース別成績では、JRA13勝中11勝が芝のレース。JRA全10競馬場中8競馬場を走破し、おぼろげながら傾向が見えてくる。
短距離戦は芝1200〜1400mで5勝。競馬場の内訳は、芝1200mで函館2勝、小倉1勝、芝1400mは阪神、中京で1勝ずつ。直線に急坂がある阪神・中京、洋芝の函館、開催最終日の重馬場だった小倉に良績が集中。本質的に短距離寄りではないので、スピードよりも持久力が必要なコースに限定されている。
中距離戦は芝1600、1800mで6勝。芝1600mは阪神、新潟で1勝ずつ。芝1800mは小倉3勝、札幌1勝。小回りの小倉、洋芝の札幌、急坂の阪神と馬力優先の競馬場が主流。新潟芝1600mを勝ったときは開催最終週の稍重馬場だった。
中距離戦では末脚の持続力を発揮している。瞬発力勝負は分が悪く、新潟、東京芝成績は[1-1-0-15/17](勝率6%、複勝率12%)。馬場状態も含めて、上がりがかかるコース設定が理想だ。
面白いのはダート1700mで2戦2勝(小倉・札幌で1勝ずつ)していること。小回りコースで長くいい脚を使える長所を生かしている。
調教では明確な分析結果が出た。キズナ産駒の直前追い切り成績では、栗東坂路調教馬が[6-4-1-17/28](勝率21%、複勝率39%)と好成績を収めている。
坂路調教では折り合いに重点を置き、瞬発力を伸ばす。上がり時計の速さが重要で、ラスト1ハロン12秒前半は必須条件。
2019年以降、キズナ産駒の調教パターンを調教コース:栗東坂路、3ハロン39秒7以内、2ハロン25秒1以内、1ハロン12秒4以内に設定した場合、[5-2-1-1/9](勝率56%、複勝率89%)と良績を残している。
生まれ持った才能(スタミナ、レースセンスなど)を尊重し、調教では弱点である瞬発力を引き出す。それだけ完成度が高く、弱点を補う余裕がある懐の深さがあるのだろう。キズナは私たちが想像した以上に、スケールが大きい種牡馬かもしれない。