11月23日、船橋「京成盃グランドマイラーズ」。シーチャリオットの再起戦は、何ともほろ苦い結果になった。ゲートに顔をぶつけたようなスタート。その時点で人馬ともリズムが狂い、道中5番手の外、ひとまず中団はキープしたものの、首が上がり終始ぎくしゃく。直線ステッキが入ってからも、左右にフラつき、真っすぐ前に伸びてこない。やっとの4着。馬券の対象から外れたのはデビュー以来初めて。ただ、ゴールイン後、脚元を気にする素振りもなく、カンカン場の様子など、活気にあふれレース直後とは思えない。鞍を下ろし、クリス厩務員に引かれ、何ごともなかったように厩舎へ向かう。終演からわずか5分ほどの主役退場。すぐ息が入った、脚を余し力を余した、逆にいえばそういうことか。
京成盃グランドマイラーズ(サラ3歳上 別定 南関東G3 1600m 良)
○(1)ベルモントストーム (56・石崎隆) 1分40秒3
△(2)インターセフォー (54・張田) 1
△(3)チョウサンタイガー (56・酒井) 3/4
◎(4)シーチャリオット (57・内田博) 2
△(5)ベルモントソレイユ (56・早田) 1/2
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(6)カセギガシラ (56・鈴木啓)
▲(7)イシノファミリー (56・的場文)
単660円 馬複1550円 馬単2950円
3連複4060円 3連単22360円
パドックのシーチャリオット。前走東京ダービーから21kg増、威風堂々、惚れ惚れとする馬体と仕草。四肢の踏み込みも力強く、何より2歳デビュー戦と較べ466kg→523kgだから、馬自身の成長は、期待通り、思惑通りでいいだろう。よくみえすぎる、立派すぎる、そういうケースの思わぬ墓穴。競馬とはつくづく微妙で難しい。「やはり久々が大きいですね。勘が戻っていなかった。道中スムーズに折り合えず、馬混みに入れて砂を被ったのもまずかった」(内田博騎手)。しかし当事者、観戦者とも、そうショックな敗戦ではなかった気がする。レースに行って、まだ若さ、粗っぽさが残るということ。今日の競馬からは大井右回りがおそらくベター。それも2000m前後、じっくり乗れる中〜長距離が向いている。元より器用さには課題があり、連戦連勝というタイプでもない。無事にいけば次走「東京大賞典」が改めて試金石だ。
勝ったベルモントストームは、道中好位のイン、理想的に乗られ一瞬の脚を生かし切った。重賞3勝目、3歳春京浜盃以来1年半ぶり。今日の場合、シーチャリオットにポカがあり、それを除くメンバーとは、潜在能力、競馬センスが違った結果。1600m・1分40秒3、深い馬場を考えてもギリギリ水準の数字だが、ごく控えめにみて“マイラーの円熟”とはいえるだろう。「内枠で動きづらかったが、そのぶん脚をタメられた。苦労してきた馬だけに嬉しい。この路線(1600m前後)なら、まだまだ楽しみがあるでしょう」(石崎隆騎手)。現4歳世代、実際筆者などは、クラシック時アジュディミツオーより同馬を上に評価していた。石崎Jは、この中間ベルモントストームに、「針を打って休ませる」プランを出したと聞く。「腰とか後肢、すべてがそれでよくなった。跳び(走るフォーム)も違ってきましたからね」(出川克調教師)。本格化となれば、来春フェブラリーS挑戦までの期待を賭けたい。
インターセフォーは差す競馬で2着ならほめられる。気温10度、その中のイレ込み、発汗は気になったが、そういう気性と納得するしかないだろう。あとはオープンの壁をどう超えるか。チョウサンタイガーも同様で、今日の末脚を重賞勝ちにつなぐには、もう一段パワーアップがテーマになる。ベルモントソレイユは逃げたコウエイソフィアを早めに交わして先頭。持ち味は出し切ったものの、そこからプラスアルファとなると限界もありそうだ。イシノファミリーは、スローを見切った的場文Jが向正面で一気のスパート、しかし直線大きくバテた。本質的にいい脚一瞬。状態も100%ではなかったか。
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浦和記念(11月30日サラ3歳上 別定 交流GII 2000m)
◎ヴァーミリアン (54・武豊)
○メイプルエイト (54・張田)
▲ウツミジョーダン (56・石崎隆)
△ハードクリスタル (56・横山典)
△マクロプロトン (56・内田博)
△コアレスハンター (56・御神本)
△ノボトゥルー (58・ペリエ)
ヨシノイチバンボシ (56・吉田稔)
エアウィード (56・菅原勲)
JRAから新星が登場する。ヴァーミリアン。前走初ダートのエニフS快勝。2着ドンクールとは鼻差だが、このレース、ウインデュエル、カイトヒルウインド、ヒシアトラス、強豪ぞろいだっただけに中身が濃い。当時ハイペースの2番手からもうひと伸び。父エルコンドルパサー、半兄サカラート。ここをあっさりなら今後の路線は決定的ともいえるだろう。伸び盛りの3歳馬。クラシックこそ不本意だったが、昨暮れラジオたんぱ杯を制したほどの絶対能力。あとは浦和初コース、フィーリングが合うかどうかだ。武豊Jとのコンビ[3-2-0-0]。
ダービーGPを取り消したメイプルエイトが思いのほか早い復帰。春3冠、すべて2着。それもJDダービーでドンクール、アグネスジェダイに先着だから、古馬相手でも能力は見劣らない。自在性と勝負根性が大きな売り。逆境をどうはね返すか、世代No.2のプライドに期待する。ウツミジョーダンは昨年4着。しかし今年は夏〜秋、古巣岩手で善戦を続けながら、今回川崎へ転厩してここへ臨む。いかにもという勝負気配。元より中〜長距離向きのパワフルな末脚に定評がある。人気になりそうなハードクリスタルは、現実にJRAノンタイトルで、前走金沢もグラップユアハートに完敗だった。反応が鈍いイメージがあり、少し割り引いて評価した。コアレスハンターも健在だが、それならイキのいいマクロプロトンで互角だろう。ノボトゥルー、ヨシノイチバンボシは、格、実績以前に距離が合わない。
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11月26日、東京「ジャパンカップ・ダート」。アジュディミツオーは10着だった。勝ち馬にレコードで走られ、それに2.5秒差(13馬身)では完敗としか言葉がないが、あえていうなら今回内枠がほしかった。ユートピアとの兼ね合いで、結果的に共倒れ。牽制し合い引っ張りこむうち、4コーナー、後続にどっと来られた。どこか不完全燃焼のうらみは残る。スタート直後、右前を落鉄していたとも、あとで聞いた。
カネヒキリは鼻差ながら十分強い競馬をした。「最後ぎりぎりだったけど、まだ3歳馬。今日は勝ち切ったことが大きいでしょう」。武豊騎手のコメント通り。ただ、まるで手が届かないかといえばそうでもない。現実に接戦したシーキングザダイヤは前走名古屋でレイナワルツに先着を許し、スターキングマンは金沢でグラップユアハートに完敗している。諸行無常。競馬とは、予想、馬券を当てることとは、その馬の“一瞬”をつかむ、捉える、そういうことに尽きると思う。
回りくどい負け惜しみで申しわけない。言いたいことは「ドンマイ」だった。アジュディミツオーしかり、シーチャリオットしかり。水準の能力を備え、無事に使える生命力を持つ限り、風向きひとつでいつかチャンスがめぐってくる。照る日もあれば曇る日もある――。「生き物だから、そんなとき(走らない)もあるでしょう」。内田博Jは、最後そうコメントしたと聞く。