ゴールの瞬間――競馬の最高潮の一瞬を切り取るレース写真。勝負の迫力を表現することこそ、プロのカメラマンの腕の見せ所です。しかし、人気馬が勝つとも限らないのが競馬の難しさ。ファインダーからは見えないノーマークの馬が差し切った……などなど、プロ泣かせのレース展開も多々あります。
そこで今回、4名のカメラマンが週替わりで登場。普段は目にすることのない、痛恨の失敗作をご紹介いただきます。成功写真の陰にある、涙ぐましい努力の欠片たち。競馬の最前線の熱量を、ぜひ感じてください!
【ルール】
ご紹介いただく写真は、下記のテーマに沿った3本
(1) GIレースで失敗してしまった1枚
(2) 秋競馬のレースで失敗してしまった1枚
(3) 逆に、自分だけが撮れた会心の成功作を1枚
【今週登場するのは…】
netkeiba.comで関東圏をメインにレース写真を担当している下野雄規カメラマン
(1.GIの失敗作) アドマイヤムーンが勝った2007年のジャパンC
【失敗作】このドヤ顔で、ポップロックの勝利を確信したら…
【実際のニュースでは】ウイニングランの様子を速報ニュースでは使用しました
GIレースで失敗するのは、ダービーとジャパンCが多いですね。両方とも東京2400m。
でも、オークスで失敗したのはヌーヴォレコルトの時くらいですが。オークスは真ん中から外の決着がほとんどですが、ダービーとジャパンCは内外離れる時がよくあるのが原因でしょう。
この両レースはカメラマンが多く、撮影位置が後ろになるためにゴールまでの距離が普段より遠くなり、錯覚を起こすんでしょうね。
左回りだと左目でターフビジョンを確認できないのもあるし、そもそもターフビジョンがゴール板で見えない時もあります。実はかなり厄介です。
それでも、写真が一枚もない0点の撮影は避けなければいけないので、なかなかのプレッシャーです。
GIレースで失敗した写真で真っ先に思い出すのは、2007年のアドマイヤムーンのジャパンCです。0点です。
実況ではアドマイヤムーンが呼ばれているにもかかわらず、アドマイヤの勝負服は確認できず。
内にいる茶色っぽい勝負服は失速したチョウサンだと思っていて、外から差してきたウオッカと一緒にきたポップロックにフォーカス。そして、オリビエのこのドヤ顔。
なんの疑いもなく振り切ったら、内にいた馬は、実は実況で呼ばれていたアドマイヤムーンだった事に気付いてビックリ。
そういえば、このジャパンCから馬主名義が変わって、見た事もないダーレーの勝負服になっていたのでした。
(2.秋競馬での失敗作) フラアンジェリコが勝った2015年の京成杯AH
【失敗作】大外に写っている緑のメンコがフラアンジェリコ!
【実際に入稿されたのは】表彰式メインのカットを複数枚いただきました
秋のレースと言えば、2015年京成杯AHのフラアンジェリコ。社台グループのカメラマンでさえギブアップした、いわく付きのレースです。
ファインダーを覗いてしまうと、そこから見えるもの以外は見えません。だから、脚色や勢いを見てどの馬が勝ちそうかをファインダーを覗く前に判断します。
競り合ってる馬同士ならファインダー内で確認できるのですが、それ以外から飛び込んでくる馬は見えません。
僕の場合は、右目でファインダー覗きながら、左目ではターフビジョンを確認したりもします。確認すると言ってもファインダー内に集中してるので、一瞬確認するだけですけどね。それでもこのレースは全く分かりませんでした。
残り数メートルまでは正解だったと思います。
その後、ピントの合ってないフラアンジェリコが目の前を横切ったわけですが、直線に入ってどこに進路を取ったのか全く分かりませんでした。後でVTRを見たら、終始前が壁でブラインドになっていたんですね。
どこかに動画が上がっていると思うので、この大接戦を見てみてください。結果を知ってる今でも撮れる気がしません。
(3.会心の成功作) レッドファルクスが勝った2016年のスプリンターズS
【会心作】ミッキーアイルを撮っていた人が多かったレース
他のカメラマンさんがどのレースを失敗したのかよく覚えてませんが、けっこうミッキーアイルを撮っていた人が多かったと言われていたので、2016年のスプリンターズSですかね。
これは、あぁ差し切るなって思って普通に撮りました。
(文中敬称略、次回は9/22に公開します)