▲初の重賞タイトルを手にしたムイトオブリガード(撮影:下野雄規)
東京芝2500mという特殊な舞台で行われたアルゼンチン共和国杯(GII)は、ムイトオブリガードが勝利! エスコートした横山典弘騎手は「思い描いた通りのレースができました」と語りました。哲三氏も「さすがだな」と唸る名手の手綱捌きからみえた“馬に合ったベストな乗り方”を持論を交えて解説します。(構成:赤見千尋)
「シンプル」のなかにつまった熟練のワザ
アルゼンチン共和国杯は、2番人気ムイトオブリガードが先行して内から抜け出しました。僕の好みの先行の仕方で、手綱を取った(横山)典さんの騎乗ぶりがさすがだなと。簡単に乗っているように見えるかもしれませんが、逆に言うとそこが本当にすごくて。馬に対して走りやすいようにということをいろいろしているんですが、「何々をしている」というところを見せないんです。
このコラムでもいつも話していますが、馬に対して「こうしている」「こうしたい」というのが見え過ぎてしまうと、それはロスに繋がると考えていて。もちろん、その時その馬の状況によっても違いますが、典さんや豊さんはごくシンプルに、「こういうことをしている」ということを見せずにやってしまう。
今回のレースでは、スタートを決めて、ある程度先行するよという意思表示を見せながら、行きたい馬を行かせて内にポジションを取りました。直線も内から伸びて来たわけで、いたってシンプルな流れ。
でもその中には、3、4コーナーで自然にスピードに乗れるよう、その手前から前の馬との距離をしっかり取っていたり、追う時に手綱の持ち換えを不必要にしないなど、ごくごく自然に、ムイトオブリガードにとっての走りやすい環境を作っているように見えました。
典さんも派手に追う時もありますし、拳の動きや手綱の持ち換えを派手にするときもありますが、ムイトオブリガードのような先行馬に乗った時は、あんまりしないイメージがあって。そこは馬によるんですが、これから伸びる、伸びる手前の馬にはしていないという感じです。
▲見えなくとも、馬のために色々なことをしながら騎乗している(撮影:下野雄規)
馬体から拳をあまり離さないで、重心もしっかり馬の背中に固定出来ている。固定という言葉は誤解を生みそうですが、要は重心が馬のバランスと一体化していてブレないんです。その上で、そこに余裕があったり、スピードに乗って来たら手綱を持ち換えたりする。
そこを勘違いしているジョッキーがいるんですが、スピードに乗っているからこそ生きる効力を、スピードに乗る前からやってしまっている人がいて。
僕の持論では、