12月7日、大井「勝島賞(オープン・準重賞)」。ボンネビルレコード(牡3、父アサティス)が快勝、目標の東京大賞典へ向け視界良好をアピールした。道中スローもあり、いつになく早め早めに動く競馬。直線半ばで先頭、食い下がるクールアイバーに意外なほど手こずったが(ハナ差)、ボンネビル自身、過去こういうケースで惜敗が多く、そう考えるとこの日は勝ち切った事実が大きいだろう。心技体、とりわけ“心”の部分で充実している。
JDダービーをカネヒキリの3着。以後、黒潮盃→東京記念と連勝し、一躍世代トップクラスに加わった成長株。この父らしい追い込みの個性派で、ウイングアローとムードが似ている。470kg台と馬格はあっても、すらりと手脚が長いステイヤー体型。真価発揮にはやはり2000m以上ほしいだろう。ともあれ、この1勝で大賞典出走権が確保された。すっかり手の内に入れた的場文男。GI本番でも、伏兵の評価は十分できる。
その大賞典、主力メンバーが固まってきた。JRAはGI・4勝のタイムパラドックスを筆頭に、JCダート好走シーキングザダイヤ、スターキングマン。南部杯2連覇ユートピア、さらに浦和記念勝ちヴァーミリアンの強力布陣。対して地方側は、昨年の覇者アジュディミツオー、未完の大器シーチャリオット。地元で雪辱を期すナイキアディライト、前走1年半ぶりに重賞制覇ベルモントストーム――。カネヒキリ回避に目をつぶれば、ひとまず旬のフルメンバーといえるだろう。もう一つ、JRA対地方という対決の図式が明確であってこそグランプリは夢が増す。地方(南関東)勢は、今年が大きな踏ん張りどころだ。
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12月15日船橋「クイーン賞」。交流牝馬重賞に関しては、「食傷気味の低レベル」などと何度か悪口を書いてきた。ただしかし、今回は7月の川崎「スパーキングレディーC」以来、およそ半年ぶり。JRA、地方ともだいぶ顔ぶれが変わっている。新星誕生…ここで新しい勢力図、ピラミッドができるのかどうか。ただし改めて私見を書けば、従来の牝馬交流重賞、1600〜2000mの決まりきった距離だから面白くないという部分もある。1000mでもいいし2400mでもいい。船橋など、どちらも確かな舞台が作れるコースだ。
クイーン賞(サラ3歳上牝馬 別定 交流GIII 1800m)
◎グラッブユアハート (55・安藤勝)
○クインオブクイン (53・濱口)
▲スルーレート (53・吉田豊)
△レマーズガール (56・的場文)
△アイチャンルック (54・真島)
△カッサンドーラ (54・早田秀)
スターリーへヴン (54・デザーモ)
ドリームチャッター (53・石崎隆)
ベルモントパティ (54・鈴木啓)
コウエイソフィア (54・御神本)
グラッブユアハートは、前走金沢「白山大賞典」で牡馬相手にロングスパート。結果ハードクリスタル、スターキングマンを完封し、“牝馬限定レベル”からアタマ一つ抜け出した。対レマーズ4勝6敗、なるほどまだ数字は帳尻が合わないが、強気の競馬で勝ち切った自信と勢い。元より超のつく良血で、馬体重も一戦ごとに増えている。ここをきっちり決めれば、遅まきながら“女傑”への道も夢ではない。
そのレマーズガールは、今回川崎「スパーキングレディーC」以来長いブランク。休み明けは反応が鈍いタイプという印象があり、乗り替わった的場文騎手もそうそう楽観できないだろう。格より調子でクインオブクインをとった。前走JBCクラシック7着はタイムパラドックスに4馬身差だから合格点。しかも前々走東海菊花賞ではレイナワルツを一気のまくりで沈めている。人気がないぶん、思い切った競馬をイメージした。
JRA新星はスルーレート、スターリーヘヴンだが、前者はダート2勝、後者は初経験。交流重賞の場合、迷わずスルーレート上位でいい。南関東はスムーズに乗れたときのアイチャンルックが1頭望みか。ただ3走前からの真島騎手、むしろ内田博、的場文Jより手が合う印象もないではない。大穴はカッサンドーラ。北海道B級ランクだが、前走「道営記念」を5着した4歳馬。そのレースぶりには、おやっという見せ場があった。