12月29日、大井「05東京大賞典」。年が明け、すでに賞味期限切れの回顧になるが、レースの印象、雑感だけを書かせていただく。
アジュディミツオーは、ひとこと立派な勝利だった。2分03秒1が実質レコードに近いこと(昨年と馬場差+1.0秒)。来るなら来いの正攻法で後続を完封したこと。ジャパンCダート大敗に気持ちが揺れ、ドバイ遠征の反動…など、いらぬことを考えた、記者▲の予想は、今振り返って忸怩(じくじ)たる思いが残る。大井2000mを走らせて、一番速い、強いのは同馬であるという事実。スタンドに大きく手を上げ、喜びを爆発させた内田博ジョッキー。そのウイニングランをほろ苦い気持ちで眺めたのは、05年の大きな悔いだ。
シーキングザダイヤ、タイムパラドックスは、もう少し脚抜きのいい馬場がほしかったか。ともあれ力を出し切った2、3着といってよく、とりわけ前者はパワー、逞しさの点で超一流に近づいている。今後アドマイヤドンの域にどう迫るか。ベラージオの末脚、ユートピアの粘りもイメージ通りで、以下、大健闘したニューシーストリー(園田)、経験を積んだボンネビルレコード、それぞれに手応え、収穫はあっただろう。
シーチャリオットはわからない。懸念された1番枠を巧みに捌いた佐藤隆J。向正面で外に出し、4コーナー絶好の3番手に上がっている。イメージはアジュディミツオーと一騎打ち。しかしそこから前を追うどころか馬群に一気に呑み込まれた。骨折休養後2戦目。まだ実が入っていない…結果的にそういうことか。パドックなど、相変わらずハチきれるような馬体と気合。いつもの繰り言ながら、競走馬とはつくづく微妙で難しい。それでも、「10年に1度の大器―」、個人的な評価は、まだしばらく変えないでおく。
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1月1日、期間限定で南関東参戦の内田利雄騎手が、その初騎乗、浦和競馬第1レースをいきなり勝った。12頭立て最外枠のグレイスラブリー。3コーナー先頭から渾身のステッキでぎりぎり鼻差凌いでみせた。馬自身とりたてて能力上位とは思えず、1番人気は“期待票”でもあっただろう。「ホッとしました。いい緊張感がありますね。(同馬に限らず)前々の競馬を心がけて乗っていきます」。結局5日間の騎乗で[3-3-4-22]。数字はひと息伸びなかったが、乗り馬の質を含めれば十分合格。ロスが少なく、かつ思い切りのいい騎乗で、随所にさすがの“腕”はアピールした。
今さらいうまでもなく、同騎手は通算3070勝の大ジョッキー。所属の北関東競馬廃止で苦境に立たされ、しかし以後、岩手、東海ブロックの短期免許を取得、それぞれ19、21勝をあげてきた。岩手、東海、まだ乗れる可能性(期間延長)もあったと聞くが、あえて「NAR全国免許」にこだわり、全国行脚を続けている。積み重ねた実績、磨かれた技術はもちろん、前人未踏の道を自然流、あっけらかんと進んでいく、姿勢と意気が何より凄い。3月3日まで4競馬場で騎乗予定。船橋、大井、川崎…、南関ファンには楽しみが一つ増えた。なお、1月10日船橋競馬からは安藤光彰騎手が、やはり短期免許(所属変更)で南関4場に参戦する。こちらは2768勝の東海エース。大井・高橋三郎厩舎所属だから、重賞レースの騎乗機会にも恵まれそうだ。
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船橋記念(1月11日 サラ4歳以上 別定 南関東G3 1000m)
◎ベルモントファラオ (56・石崎駿)
○コアレスタイム (54・的場文)
▲エコルプレイス (58・内田博)
△カセギガシラ (58・鈴木啓)
△ジルハー (52・町田)
△プリンシパルリバー (58・張田)
△グローリーウイナー (54・石崎隆)
今年から1800→1000mと条件が大きく変わった。顔ぶれに新鮮味が出て、レースに緊張感が増せばファンにとってもちろん歓迎。もうひとつ、短距離戦とは、一定レベルで繰り返し行われると、その時計がストレートに短縮されていく傾向がある。競走馬全体の底上げということ。ここ10年来、JRA馬の飛躍的な能力アップも、あるいは短距離重視の競走体系にあるかもしれない。船橋1000mレコードは、昨年2月にマークされた58秒6(コアレスサンデー)。軽い馬場なら今回その更新まで考えられる。
ベルモントファラオは、JRAから転入後9戦6勝、それも1200m(大井)3戦3勝のスピード馬だ。明けて7歳ながら今が旬。父アジュディケーティング、高橋三郎厩舎で再生され、ハタノアドニスとイメージがダブってくる。前走5ヶ月ぶりの勝島賞(大井・1800m)、ボンネビルレコードの5着。適条件のここで完全燃焼は間違いない。
相手が難解。“名前”があるのは、JRA・5勝エコルプレイス、全日本2歳優駿、羽田盃の覇者プリンシパルリバーだが、ともに近況から勢いに?がつく。面白そうなのはコアレスタイム。前3走、船橋1000mを2、2、3着。父ワカオライデン、1200m(JRA)2勝なら、スプリント能力は十分だろう。混戦に強い的場文Jも大きな魅力。カセギガシラ、ジルハーあたりの食い込みを期待して、馬単、3連単、高配当を狙ってみる。