“おかげで”伸びた売上に素直に喜べない歯痒い思い
もうみなさんご存知とは思いますが、JRA賞に続いて、NARグランプリ2020の表彰式も中止になってしまいました。新型コロナの影響、とどまるところを知らず、です。
私は長らくNARグランプリ表彰式の司会を仰せつかってきました。いつから、という確かな記憶がないのですが、過去の表彰馬や表彰者のリストを見ると、たぶん1993年(式典は翌94年2月に開催)からだと思います。
そして今年も早々にご指名を受けていました。いつも式典の最後は「また来年の表彰式でお会いしましょう」という言葉で締めくくっていたのですが、去年の“約束”は“空振り”になってしまいました。
NARグランプリは、地方競馬の最前線で活躍され、受賞される方々にとっての“晴れ舞台”。馬券売上が低迷を続けていたときも、“歯を食いしばるようにして”挙行されてきた、年に一度の大切なセレモニーです。
ここ数年はインターネット投票の広がりによる売上向上に伴って、会場の盛況ぶりも右肩上がりになっていたところ。そして今回は、大井のサブノジュニアがJBCスプリントを制して年度代表馬に選ばれたので、さらに盛り上がるはずでした。
また、NARグランプリもJRA賞も、表彰式の後に祝賀パーティが開かれるのが通例です。そこは、年に一度、大勢の関係者が集まって近況を報告したり、いろいろな企画を提案したりする機会にもなっています。
しかし今年は、もともと受賞者だけが参列する表彰式に限っての開催とされていました。貴重な情報交換やプレゼンテーションの場の1つが失われてしまったわけです。
まぁそれでも、表彰式さえできればいいか、と思っていたんですけどね。いやぁ、何とも残念。今は(私が司会を仰せつかるかどうかは別として)、来年の表彰式が無事に開催されるよう祈るしかありません。
さて、先週の当コラムでばんえい競馬の馬券が売れに売れているという話を書いたら、斎藤修さんもそれをネタにされていました。とにかくこの年末年始は、数年前には誰1人想像できなかった売上を計上したのです。
ほかの地方競馬もJRAも、去年は無観客開催とネット投票の“おかげ”で売れ行き好調でした。そんなときにこんな話を書くのはどうかと思うのですが、これを素直に喜んでいいのか、疑問が生じています。
コロナの感染拡大は、緊急事態宣言の再発出など、経済に打撃を与える状況を招いています。中にはその“特需”で潤っている会社やお店もあるようですが、収入が激減してしまった方々にとっては、馬券どころではなくなっているかもしれません。
さらに心配なのは、このままでは本業の不振で馬を手放さざるをえなくなる個人馬主さんが増えてしまうんじゃないか、ということ。だからといってどうすればいいかがわからないのが、何とももどかしいんですけどね。