2月15日、船橋「報知グランプリカップ」はナイキアディライト(船橋・出川厩舎)の圧勝だった。かすかに不安のあったスタートも五分に出て、本来の鋭い加速。ごく自然に、1馬身、2馬身とリードしていく。鞍上がグッと抑えて2コーナーから向正面。37.0〜50.6〜63.7秒の超スローを、後続が申し合わせたように動かない。しかしこれは、消極的、生ぬるいというより、馬の「格」が違いすぎる、そんなケースとみるべきだろう。直線入口、外から迫ったマクロプロトンを馬なりで突き離すとあとは独走。上がり37.5秒、余裕十分のフィニッシュだった。「リズムを戻す意味で理想的なレースができた。ただ相手が相手。これくらいは走れないと…」(石崎隆騎手)。安堵感はあっても、満足感はない。単オッズ1.3倍。無論、当然である。
報知グランプリカップ(サラ4歳上 別定 南関東G3 1800m 良)
◎(1)ナイキアディライト (58・石崎隆) 1分53秒8
○(2)チョウサンタイガー (56・酒井) 3
△(3)ベルモントソレイユ (56・安藤光) 1.1/2
▲(4)ジーナフォンテン (55・佐藤隆) 2.1/2
△(5)マクロプロトン (54・山田信) 1.1/2
………………………
△(6)マキノヒリュウ (54・町田)
△(10)プリンシパルリバー (56・左海)
単130円 馬複230円 馬単360円
3連複1,420円 3連単3,000円
ナイキアディライトはこれで重賞8勝目。一昨年帝王賞、アドマイヤドンのハナ差2着をはじめ、交流実績にもこと欠かさない。とりわけ船橋1800mに限れば、日本テレビ盃、1・2着。アジュディミツオーを2年連続完封した。それでいて実際頂点まで昇りつけず、「強者」のイメージが薄いのは、やはり逃げ一手の頼りなさか。フェブラリーSを筆頭に、いつしか究極のハイレベルに達してしまったダートGI。「厳しい競馬になって、もうワンパンチが足りないね。調教などもそのあたりを意識して取り組みたい」(石崎隆騎手)。すでに6歳春、正直微妙と言うしかない。残された時間が少ないのは事実である。
2着チョウサンタイガーは、ペースが上がった3〜4コーナーで強いて動かず、その分最後伸びてきた。道中アディライトの競馬をされては精一杯の結果だろう。ベルモントソレイユも同様で、終始経済コースを進みロスがなかった。テン乗り安藤光騎手、ベテランらしい好騎乗と考えたい。ジーナフォンテンは、アディライトに次ぐ上がり38.2秒。当初から連闘で川崎「エンプレス杯」出走が明言され、ある意味思惑通りの競馬といえる。瞬発力に衰えは感じられない。逆に4コーナーからまくったマクロプロトンは、結果5着が大きく不満。真価発揮は馬体が絞れる春以降か。それでもただ一騎、勝負と出た山田信の思い切りは、レースにメリハリをつけている。ジョッキーは今が旬。いかにも張り詰めた騎乗とみえた。
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エンプレス杯(川崎2月22日 サラ4歳上牝馬 別定 交流GII 2100m)
◎グラッブユアハート (55・安藤勝)
○テンセイフジ (54・酒井)
▲ジーナフォンテン (56・佐藤隆)
△レイナワルツ (55・兒島)
△クインオブクイン (54・濱口)
△レマーズガール (56・武豊)
△ジェダイト (54・内田博)
ライラプス (54・松永幹)
ローレルアンジュ (55・的場文)
グラッブユアハートは信頼していいだろう。重賞3連勝中。金沢・白山大賞典を突破口に、心身とも驚くほど馬が変わった。前々走クイーン賞など大差勝ち。いささか低調な牝馬交流重賞では、はっきり別次元の強さを感じる。3/4馬身差という、案外地味な勝ち方で終わった前走TCK女王盃は、押し出されるような逃げになり、おそらく闘志に火がついていない。距離2100m、川崎コースとも克服済み。3番手あたりからまくる形なら、大差はともかく3〜5馬身、直線独走のシーンが浮かぶ。
相手は地方馬をとる。中でもテンセイフジはTCK女王盃、結果3着ながら上がり37.6秒、グラッブ、レマーズガールを数字上大きく凌いだ。昨夏関東オークスを完勝。同レース史上初の地方馬優勝、現実にライラプスを2馬身半抑えている。ようやく完調。仮にグラッブに破綻があれば(力走続きの反動など)、ホームの利で逆転まで考えたい。ジーナフォンテンは前述通り切れ味健在。微妙なステップだが、かつて同レースをネームヴァリュー相手に勝っている。意外性があるタイプで、馬券的には食指が動く。昨秋JBC・3着、スタンドを大いに沸かせたレイナワルツ。それとほぼ同様の能力を持つクインオブクイン。東海勢も上位を狙う位置にある。昇り目のないレマーズガールはオッズ次第で押おさえ程度か。ライラプス、ジェダイトはダート微妙。ただ、後者は姉にケープリズバーン(平成11年・TCK女王盃)という血統背景。こちらもオッズと相談だろう。
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19日、「フェブラリーS」のアジュディミツオーは7着に終わった。痛恨の出遅れ。いや出遅れというより、スタート地点の芝でダッシュがつかない感じだろうか。「武蔵野Sもそうだったけど、しっくりこない。さらに経験が必要ですね…」(内田博騎手)。いずれにせよ、先行して粘るミツオーの脚質からこれは致命的な不利だった。ダート戦なのになぜ芝にゲートがあるのか?確かに大きな矛盾だが、逆にいえばそれこそが「アウェー」の厳しさ。ハードルは乗り越えていくしか道がない。
ただ、すべてを含めた内容はそう悲観するものでもないだろう。直線あと1F、馬群を割って懸命に脚を伸ばした。前がスムーズに開けていれば5着はあったか。カネヒキリの強さには素直に脱帽。しかし逆境に立ち向かおう、はね返そうというミツオーの精神力、逞しさは十分みえた。恥ずかしくない負け――。ひとまずそう総括する。
同日、フラムドパシオン圧勝の「ヒヤシンスS」。船橋・グッドストーンは、2.2秒差の10着だった。終始イン(1番枠)を大事に乗られた結果だから、正直力不足というしかない。現時点、いささか低調な南関東3歳馬。救世主的なヒーローが現われないと、少なくとも春シーズンは厳しくなる。
1頭だけ「候補」をあげる。グッドストーンのステイブルメイト(岡林厩舎)、2戦2勝のライジングウェーブという馬。父メイショウドトウ。前走3番手から差す競馬で、期待通りの成長をアピールした。現在収得賞金280万円。あと2つ順当に勝ち抜ければクラシックにぎりぎり間に合う。