▲武兄弟で重賞初制覇! 武幸四郎調教師にインタビュー (C)netkeiba.com
武豊騎手・武幸四郎調教師による「兄弟重賞初制覇」となったファンタジーステークス。勝ったウォーターナビレラはこれで無敗の3連勝となりました。その血筋を辿ると、曾祖母の父は武兄弟の父である故・武邦彦調教師が騎手時代に騎乗したトウショウボーイ。武一家での重賞制覇とも言え、「何かの縁があるのかな、と感じました」と武幸四郎調教師は話します。
また、「前走は天国からのあと押しがあったんじゃないかと思います」という出来事も。武一家とオーナー一族の数十年にわたる縁が紡いだ重賞制覇について、武幸四郎調教師に伺いました。
(取材・構成=大恵陽子)
当歳時から気になっていたトウショウボーイの血
――ウォーターナビレラでファンタジーS制覇、おめでとうございます!
武幸四郎調教師、以下武幸 ありがとうございます。北海道での新馬戦、2戦目の中山・サフラン賞とそれぞれレース後に少し楽をさせてあげられて、ちょうどいいレース間隔で向かうことができ、馬の体調も良かったです。
――当日の様子はどうご覧になっていましたか?
武幸 前走のサフラン賞では鞍を置く時に暴れてしまってナーバスな面が見られたので、装鞍所ではなく厩舎で鞍を置きました。そうしたら普段通りのテンションでいてくれて、まずは不安点が一つなくなってレースに向かうことができました。
――距離短縮となったファンタジーSではこれまで2戦とは違ったペースでした。
武幸 前2戦はスローに近い流れだったのに対して、今回は1400mで、しかも重賞とあって速い流れでしたが、スタートが速いことによって流れに乗れました。
――デビュー時からずっとスタートのいい馬ですね。
武幸 スタートが速いですし、ゲート試験も北海道に入厩してすぐに受かりました。そういうところに時間がかからないので、ゲート試験合格後は坂東牧場で一度楽をさせてから新馬戦に向かうことができました。毎回、結果を出してくれるので、こうして楽をさせてあげられます。精神的にナーバスな面があるので、余分な時間をかけずに間隔を取ってあげられることができて何よりです。
――直線では2着ナムラクレアが来た分だけ伸びたようにも見えました。
武幸 向こうの勢いが良くて、「差されちゃうのかな」と一瞬思いましたけど、前半で無理していない分、こちらも最後まで脚を使ってくれました。
――武兄弟での重賞初制覇となりました。勝った瞬間のお気持ちは?
武幸 調教師になってからは、送り出した時点で僕にできることはもうないので、勝つことができれば一番ですが、「何より無事に帰ってきてくれれば」と見守っています。なので、普通に調教師席で見ていて、声を出すようなこともなかったです。オーナーさんや生産者さんにはとても喜んでいただいて、嬉しかったです。
▲ファンタジーSを勝ったウォーターナビレラと武豊騎手 (C)netkeiba.com
サフラン賞直前に他界したオーナーの思い
――山岡正人オーナーとは長いお付き合いなのだとか?
武幸 父(武邦彦師)が先代の山岡良一オーナーからお世話になっていました。武田作十郎厩舎に父と兄が所属していて、以前は年に1回、京都で「武作会」というのを山岡良一オーナーが開いてくださっていました。父、兄、僕も参加していて、そのご縁で開業した時に馬を預けていただきました。ずっと一家でお世話になっています。
――それでしたら、オーナーも相当お喜びになられたでしょう?
武幸 サフラン賞を勝った時にウイナーズサークルでご子息の山岡正人オーナーから「父(良一オーナー)が先日亡くなりました」と伺いました。「えっ!」と、とても驚き、「天国であと押ししてくださったんじゃないでしょうか」というお話をしました。今回のファンタジーSは、名義と勝負服が先代から山岡正人オーナーに変わっての勝利でした。
――故・山岡良一オーナーの時代も含めて、「ウォーター」の冠名馬がJRAの重賞を勝つのはこれが初めてで、不思議な力を感じます。「不思議な」と言えば、ウォーターナビレラの曾祖母の父がトウショウボーイなんですね!
武幸 そうなんですよね。当歳で血統表を見た時に「あ、トウショウボーイが入っているんだ」と思いました。こういう牝系が残っているんだな、と。父がトウショウボーイに乗っていたので、何かの縁なのかなぁと思いました。
▲サフラン賞でのウォーターナビレラ (撮影:橋本健)
――武豊騎手とはレース後や週明けのトレセンで何か話をしましたか?
武幸 次もある馬なので、修正点などを話しました。「素直な馬で、テンションが上がるところだけ今後気を付けて進めていった方がいいかな」という話でした。
――次走はGIでしょうか?
武幸 行ければ阪神ジュベナイルフィリーズに行きたいですけど、馬の状態次第です。まだレース後間もないので、この後、立ち上げていって脚元やテンションなどが問題なければ向かおうと思います。
――阪神JF出走となれば、楽しみです。最後に、ウォーターナビレラの現時点での長所を教えてください。
武幸 2歳牝馬ながら、カイバを食べてくれて体が減りません。元々、馬体重もそれなりにあって、その点は不安点が一つ消えます。どうしても食べない馬は調教でやれることが限られてきますが、この馬の場合は「食べて、トレーニングして、休んで」という一番理想的な形が取れることだと思います。これからも応援よろしくお願いします。
(文中敬称略)