先週、JRAの騎手から新型コロナウイルスの陽性者が出たと発表があった。中央では、昨年9月に2人の騎手の陽性が確認されて以来のことだ。プライバシー保護の観点から陽性者の氏名や人数などは公表されていない。数名の騎手が重賞で乗り替わり、SNSなどでは「陽性者は○○か」と憶測が飛び交ったが、競馬が通常どおり開催されているように、少人数の感染にとどまっているのだから、そのへんには触れずにおくのが大人の対応なのだろうか。
かく言う私も、何の症状も出ていないので検査をしていないが、PCR検査をしたら陽性にならないとは言い切れない。
自分も、周りの人も無症状の感染者かもしれないという前提で、これまでどおり、慎重に過ごすしかなさそうだ。
オミクロン株による第6波の影響で、当初は対面の予定だった今週の調教師取材が電話取材になり、来週の大井所属騎手の取材は、競馬場のスタンド内でのリモート取材という形になる。それでも、話を聞かせてもらえるだけいい。また、距離を取って、少人数だけでの撮影ならできるので、きちんとページを構成できる。コロナの影響は受けているものの、どうにか仕事をつづけられるだけ、ありがたい。
オミクロンが蔓延する前から、無症状のまま感染して、後遺症だけ出るケースもある、と言われていた。その後遺症のなかには「抜け毛」があり、私は一時、自分は気づかないうちに感染し、後遺症だけが頭頂部に出たのではないかと疑っていた。だとしたら、一昨年の8月初旬から始めた発毛剤リアップの塗布は、まったくの徒労だったということになる。リアップの有効成分であるミノキシジルが作用するのは、加齢による抜け毛、すなわち壮年性脱毛症であって、病気によるものには効き目がないからだ。
リアップを塗りはじめてから1年5カ月が経過した。今なお、何が原因でハゲたのか断定できる材料はない、というより、断定したくないのだが、ほぼ確実に壮年性のものだと思われる。
以前、ここに書いてたくさんの励まし(シャレじゃありません)の「いいね」をいただいてから、今回の報告まで、少し間があいてしまった。なぜかというと、お察しのとおり、効果があるのかないのか、よくわからないからだ。塗布直後に初期脱毛で大量に抜けてさらに薄くなり、半年ほど経ったときから元に戻りはじめ、そのまま「超回復」しそうに思われた。が、今なお頭頂部はカッパの皿状に薄くなっている。自分でさらに薄くして、元に戻っただけの自作自演じゃないかとも思ってしまう。ひょっとしたら、何もしなくてもこのままだったのかもしれない。いっそのこと、もうリアップを塗るのはやめようかと何度も思ったが、いざやめるとなると、やはり怖くなってためらわれてしまう。
誰とは言わないが、堂々とハゲを出している人を見ると、羨ましく思う。何も恐れていない。それに対して、私は弱い。
ハゲを自覚してから気をつけているのは、頭の下げ方だ。頭頂部を見られるのを嫌がるあまり、お辞儀が浅くなっていないか、意識するようになったのだ。頭を下げない、偉そうなオヤジが多い理由のひとつにハゲがあることは間違いない。
何事においても、失ったものを取り戻すのは難しい。若さ、体力、運動能力、回復力、気力、知力、信頼、人気、人脈、仕事、金、夢、希望、さまざまな欲、視力、聴力、歯、眉、そして毛髪。これまで、いろいろなものを失ってきた。なかには、評価基準が曖昧だったり、最初からなかったり、どうやっても取り戻すことのできないものもあるが、取り戻すことのできるものもある。
必要以上の性欲や、無謀さなど、加齢によって失われてむしろいいものもあるが、年を取って悪化している人もいるので、ひとくくりにはできない。
競走馬を引退した牡馬が乗馬になって睾丸を取るのは、それにより、落ち着きや従順さなど、それまでなかったり、少なかったりしたものを得るためだ。毛髪を失っても、下から地肌が出てくるだけではあるが、失ったことにより、見えてくるものもある。少なくとも私は、こうしてネタにできている。
捨てたら、そのぶん、私たちはきっと何かを拾っている。
失ったものと同じものを取り戻そうとしなくてもいいのだ。それが年を取る、ということなのかもしれない。
久しぶりにまともなことを書いたような気がする。