これはやはり、妙案、好アイディアになるのだろう。先週発表された「ダービーWeek」構想。日本ダービー翌週の6月4〜11日、各地方競馬場で施行される“ダービー”を、全国規模(計63ヵ所)で相互発売、一大イベントに盛り上げていこうというもの。4日・九州ダービー(佐賀)からスタートし、以降、札幌、大井、姫路、名古屋、水沢…、1週間で6つのダービーをクローズアップする。現在、FDO(関口房朗氏)、オッズパーク(ソフトバンク関連)、Jミルク(日本酪農乳業協会)3社が協賛、約2000万円の拠出するというから、単なる話題作り、アドバルーンとはおそらく違う。
ただし、現時点で記者の感想を素直に書くなら、実質はないが夢はある――そんな感じか。“実質”がないとは、地域レベル差がきわめて大きく、仮に各ダービー勝ち馬に、「ジャパンダートダービー=大井7月12日」など優先出走権を付与しても、有名無実になりそうなこと。逆に“夢”があるとは、旅と競馬、タイアップして愉しみたい、そんなファンに究極のターゲットとなりそうなこと。「旅打ち…」とは、ギャンブル好きに何とも魅力的な言葉である。まあしかしこれを果たそうとすれば、時間とお金、かなりの余裕が必要だろう。例えばスタンプラリーを模したもの。6競馬場すべて回ったファンに交通費半額バック、そんなシステムでもできればいいが。
“実質”という点で私案を1つ。86〜95年に行われていた「旧ダービーグランプリ」の復活を考える。地方所属馬限定、JRAオフリミット。優勝劣敗、自由競争、その観点からは論外とも言われそうだが、現実に水沢競馬場で10年間火花を散らした“地方馬だけのグランプリ”は、毎年とてつもなく面白かった。オラがダービー馬が、全国区(地方限定)で、どんな戦いを演じるのか。第1回を大井の牝馬トミアルコが勝ち、しばらく南関東主導で流れたが、年を追うごとに他地区馬の猛反撃。スイフトセイダイ(岩手)が勝ち、ミスタールドルフ(金沢)が勝ち、トミシノポルンガ(笠松)…今でも語り継がれる地方の名馬が王座についた。各地域、強烈な対抗意識。実質上、JRA馬に馬場を貸すだけの現在とは、場内の熱っぽさがまるで違った。
強い馬が勝つ、それを讃える、本来の競争原理を否定するものではもちろんない。ただしかし、地方競馬ならではの愉しさをアピールすること、その視点からは、「統一G至上主義」だけでは立ち行かない、そうも思えてくるのである。一段ハードルを下げ、手が届く目標を用意する、それによって地方馬(陣営)のモチベーションがむしろ上がってこないだろうか。レース名の変更など検討が必要だが、「2つのダービーグランプリ」は、むろん併設、別モノとして続ければいい。必要なのはあきらめムードからの脱却、地方競馬全体が“元気”を出せる施策である。
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マリーンC(4月5日船橋 サラ3歳上牝馬 別定 交流GIII 1600m)
◎ローレルアンジュ (57・的場文)
○グラッブユアハート (56・安藤勝)
▲レマーズガール (56・武豊)
△テンセイフジ (56・酒井)
△トーセンジョウオー (56・後藤)
△ジーナフォンテン (56・佐藤隆)
△レイナワルツ (55・兒島)
プラチナローズ (50・武士沢)
ミライ (55・金子)
グラッブユアハートの前走エンプレス杯4着は不可解だった。3〜4コーナー外から追撃態勢はイメージ通り。しかし鞍上のGOサインに反応せず、直線も申しわけ程度にしか伸びていない。「半年前のグラッブに戻ってしまった…」(安藤勝騎手)。昨秋「白山大賞典」から重賞3タテ。それもクイーン賞は大差(10馬身)の独走だから納得しづらい。この中間短期放牧。心身ともリフレッシュできるかどうか。元より牝馬らしく繊細な面はあった。
ローレルアンジュを強気に狙う。転入2連勝、いきなり2100mのGII制覇とは驚いたが、地方適性が高いこと、奥手血統(父パラダイスクリーク)であること、鞍上に人を得たこと。うなずける理由は十分浮かぶ。JRA5勝の内訳は、1200〜1400m3勝、1700、1800mそれぞれ1勝。府中1400mでタイキエニグマと接戦があり、むしろスピード競馬でビュッと切れるタイプだろう。57kgは少々辛いが、勢いの方を重視する。
レマーズガールはエンプレス杯2着で、対グラッブ8勝6敗とリードを広げた。能力的に一つ底をみせた感はあるが、反面何ともタフでしたたか。重賞6勝、格と貫禄を買えばやはりこちらか。トーセンジョウオーは昨夏以来長休明けで一枚割り引き。500kgを超す大型馬で、本質的に叩かれつつのタイプとみえる。それなら、無欲の差しでテンセイフジ、ジーナフォンテン。レイナワルツは前走地元「名古屋大賞典」が食い足りず、マイル戦もやや忙しいイメージが出てきた。