史上3頭目の無敗の三冠馬となったコントレイルの産駒が、1月23日に日高町の下河辺牧場で誕生した。同牧場のツイッターで翌24日に発表された。その仔馬はスウィーティーガールの2023。額に大きな流星のある、可愛らしい牝馬である。この仔が、コントレイル産駒の第1号だろうか。
母馬を人気種牡馬と確実に交配させるため、また、セリのときに仔馬の体が大きくなって見栄えがするように――といった理由で、1、2月の早生まれの馬が珍しくなくなった。馬の数カ月の差は大きい。早生まれだと、5月や6月の遅生まれの馬より成長度で先んじることができるし、寒い時期は土壌菌などの影響を受けにくいという利点もある。
が、寒さが成馬以上にストレスになる可能性もあるし、積雪のため遅生まれの馬より放牧地を歩き回る運動量が少なくなるなど、懸念される部分もある。現に、かつて、早生まれの馬は活躍しないと言われた。ところが、厳寒期の飼養管理技術の進歩などにより、近年は、1、2月生まれのGI馬もちょくちょく現れるようになった。
例えば、昨年の牝牡の春のクラシックの上位5頭の誕生日を見てみると――。
桜花賞
1.スターズオンアース 2月27日
2.ウォーターナビレラ 5月27日
3.ナムラクレア 3月30日
4.サークルオブライフ 3月24日
5.ピンハイ 2月11日
オークス
1.スターズオンアース 2月27日
2.スタニングローズ 1月18日
3.ナミュール 3月2日
4.ピンハイ 2月11日
5.プレサージュリフト 4月25日
皐月賞
1.ジオグリフ 2月25日
2.イクイノックス 3月23日
3.ドウデュース 5月7日
4.ダノンベルーガ 2月7日
5.アスクビクターモア 4月1日
日本ダービー
1.ドウデュース 5月7日
2.イクイノックス 3月23日
3.アスクビクターモア 4月1日
4.ダノンベルーガ 2月7日
5.プラダリア 4月3日
早生まれの活躍馬が当たり前に出てくる時代になったことがわかる。
では、クラシックよりもっと早い時期、2歳時の6月の新馬戦で好成績をおさめる馬のなかにも早生まれの馬が多いのだろうか。
昨年の新馬戦開幕週の勝ち馬の誕生日を見てみると――。
6月4日(土)
東京5レース ノッキングポイント 1月30日
中京5レース ダイヤモンドハンズ 2月7日
6月5日(日)
東京5レース モリアーナ 3月2日
東京6レース クラックオブドーン 2月11日
中京5レース ジョウショーホープ 3月9日
やはり、イメージしていたとおり、早生まれの活躍が目立つ。上記5つの新馬戦で3着以内に来た馬で、遅生まれは6月5日の中京新馬戦で2着になったメイクザビート(5月15日生まれ)だけだった。
近年、クラシックを狙うための理想的なスケジュールは、2歳時の春にトレセンに入厩してゲート試験に合格してからいったん外厩へ放牧に出て、再度入厩して6月か7月の新馬戦を勝つ。その後は数カ月休みながら成長を促し、秋の重賞で賞金を加算。3歳になってからは無理のないローテーションでクラシックを目指す、というものだ。
早めに新馬戦を勝つうえで早生まれが有利となると、ここに記した生まれたときから(生まれる前、種付けの時期から)の戦略は、ずっとつながっていると言える。
つくづく、シビアな世界である。
その現実を認識したうえで、もう一度、下河辺牧場のツイッターでスウィーティーガールの2023の動画を見ると、愛らしさのなかに、早くも勇ましさがにじみ出ているように見えるのは気のせいだろうか。
サラブレッドは、ただ可愛いだけではなく、特別な能力を持っているからこそ魅力がある。妙な表現になるが、だからこそ、ほかの動物にはない可愛らしさがあるのだ。
今もまたスウィーティーガールの2023の動画を見ている。寝そべって、顔だけこちらに向ける姿などは、やはり可愛い。
この仔を見守るという、大きな楽しみができたことに感謝したい。
頑張れ、コントレイルっ仔。