小学生のスケッチのモデルを務めるサウンドトゥルー(提供:一般社団法人umanowa)
臆病だけど…いろんなことに興味津々!
2020年4月に立ち上げた一般社団法人umanowaの代表を務めている糸井さんだが、2016年11月から2020年3月末までのおよそ3年と5か月の間は、新ひだか町の地域おこし協力隊としてこども達への馬文化の伝承を中心に取り組んできた。その経験を生かして、umanowaでは馬産地日高の馬に関わる歴史・産業・文化について学ぶ「ひだかうまキッズ探検隊」や、小学校で馬を活用した授業を行っている。
ひだかうまキッズ探検隊の子供たちとタイトルホルダー(提供:一般社団法人umanowa)
「ひだかうまキッズ探検隊で子供たちを乗せたバスが岡田スタッドの放牧地のそばをよく通るんです。『あそこの放牧地にいる馬は?』と子供たちに尋ねると皆『サウンドトゥルー』と言えるようになりました」
マイネルダビテのように長寿の馬が町内にいると地元の人が知らないことに衝撃を受けた糸井さんにとって、子供たちがサウンドトゥルーを認知してくれたことが本当に嬉しかった。
また新ひだか町の高静小学校では、3年生のカリキュラムに馬について学ぶという授業を取り入れており、糸井さんはその授業を企画担当している。
「競走馬をはじめ、いろいろな馬がいるということを小学校のうちから伝えていきたいと思っていました。ちょうどタイトルホルダーが凱旋門賞に遠征するという時期だったので、生産牧場である岡田スタッドに高静小学校の子供たちを連れて見学に行きました。その時にサウンドトゥルーも子供たちに紹介しました」
子供達はサウンドトゥルーをスケッチし、岡田牧雄さんから同馬について話を聞いた。
「サウンドトゥルーが多くのファンに愛されているのは、諦めないことの大切さを皆さんが感じたからではないかと、牧雄さんは子供たちに向けて話をしていました」
岡田牧雄さんとサウンドトゥルー(提供:一般社団法人umanowa)
生産牧場以外にも、蹄鉄を付け替える装蹄師の作業を乗馬クラブ内で見たり、獣医師の話を聞いたり、セリの現場を見学したりと、授業内容は多岐に渡る。
「ひだかうまキッズ探検隊と内容は似ていますね。例えば静内農業高校の生徒に授業をしてもらうなど地域にある資源を使って、子供たちに馬を知る機会を提供しています」
その農業高校の生徒の授業時、先生役の高校生が「馬はどんなイメージか」という質問を子供たちにした。
「高校生は可愛いとか大きいという答えを予想していたのに、サウンドトゥルーと答えた子供がいたんです。馬についてかなり学びが進んでいた中で、サウンドトゥルーと答えてくれたのが私は本当に嬉しかったです」
装蹄師の作業を見学する小学生たち(提供:一般社団法人umanowa)
ひだかうまキッズ探検隊の子供たちに続いて、高静小学校の生徒にまでサウンドトゥルーはしっかり認知されたことになる。
すっかり子供たちの人気者になったサウンドトゥルーは、糸井さんから見てどのような性格なのだろう。
「臆病なところもありますし、でもいろんなことに興味津々で見学者が来たらグイグイグイグイ近づいて来るんです。それでここ撫でて、ここかいてみたいな面もあります。食いしん坊なので油断するとすぐに太ります。面白くて見ていて飽きない馬で、ダビテとは全然違うタイプです」
サウンドトゥルーは食いしん坊!(提供:一般社団法人umanowa)
見学者は結構多いようだ。11歳まで現役を続け、通算68戦13勝という成績を残した。その中でもJRAのGIレース・チャンピオンズC勝利がひと際輝く。岡田牧雄さんが話していた通り、諦めないことの大切さを体現したような馬だった。それだけにファンも多く、見学者もかなり訪れているようだ。
「道外から年に何回もいらっしゃる方もいて、この馬がいかに愛されているかを感じますね」
たくさんの人に愛されているサウンドトゥルーの様子は、YouTubeチャンネルの「馬産地ひだかの馬房から」の中の「日々、サウンドトゥルー」(糸井さん撮影)でも視聴することができる。いざ見始めると、心にすっと入り込むような優しさが画面から感じることができる。
マイネルダビテから始まった馬の何気ない日常を映像に残したり、前述したような子供たちへの授業を通して、これからも馬と人との懸け橋になるべく、糸井さんは活動を続ける。そして「日々、サウンドトゥルー」の撮影も続いていく。
(了、次回の更新は4月を予定しております)