▲今回は夏場に影響がより出る斤量について(撮影:稲葉訓也)
ダービーも終わり、6月からのレースでは3歳馬も古馬に交じっています。定量戦でもこれまで以上に斤量差があるレースが増えていますが、川田騎手は「夏場のこの時期は、斤量の軽さがより生きてくるんですよね」と話します。そこで今回のテーマは「斤量」について。
馬にとっても騎手にとっても、たかが1キロ、されど1キロ。なぜ、この時期の馬は1キロで大きく変わるのか。そこに付随して、なぜ夏場は若手騎手の活躍が目立つのか。そして今年から変更された斤量制度までお話しいただきました。
(取材・構成=不破由妃子)
「夏場のこの時期は、斤量の軽さがより生きてくる」
──3回中京の1日目と5日目に出走したオシゲ(牝3・須貝厩舎)は連続2着という結果でしたが、そのとき勝ったのが今村聖奈騎手と河原田菜々騎手で、川田さんが54キロだったのに対し、今村騎手は51キロ、河原田騎手は50キロの軽量でした。レース後のコメントで、川田さんご自身も“斤量差”について触れていらっしゃったので、今回はぜひ斤量について、川田さんの体感するところをお聞きしてみたいなと。
川田 夏場のこの時期は、斤量の軽さがより生きてくるんですよね。
──それはなぜですか?
川田 馬たちが暑さに堪えているから。本来、馬は寒さに強く、暑さに弱い生き物ですから、どうしてもこの時期はほかの季節に比べてダメージが大きい。普通にトレセンで過ごしているだけでも春や秋冬に比べてしんどいはずで、その蓄積があるなかで競馬をしているわけです。だからこそ、最後に余力がなくなったところで3キロ、4キロといった減量が効いてくる。
──なるほど。昔から夏競馬で若手の活躍が目立つのはそういうことか…。
川田 その年にデビューした子であれば、4、5カ月ほど実戦を経験して、ちょうど競馬に慣れてくる頃というのもありますね。競馬の中身がデビュー当時とは変わってきますから。若手の活躍が目立つのは、その両方が作用していると思います。
それと、この時期の未勝利馬は、勝ち切らなければJRAに残れない状況にあるので、多少無理をしてでも間隔を詰めて使っている馬が多いんです。となると、馬は当然疲れが溜まっていますから、そういった背景も減量がより効いてくる要因のひとつです。
──いずれにしても夏競馬は、若手にとって存在をアピールしやすい舞台なんですね。今回調べてみたのですが、川田さんはデビューから2年半で通算100勝に到達し、減量が取れた。その間、1キロずつ恩恵が減っていったわけですが、やはり1キロの影響を感じましたか?
川田 感じましたよ。今年から斤量の制度が変わって、1キロ増えましたよね。3歳牝馬は52キロから53キロになったわけですが、変化は感じない。54キロから55キロも変わりません。57キロから58キロとなると、ちょっと変化を感じる馬もいますが、そもそもルールが変わってみんな等しく1キロ増えていますから、この“1キロ増”は大勢に影響はないわけです。
でも、減量が取れていく過程で1キロ減量が減るということは、自分だけが1キロ増えるということ。みんなが55キロのところ、最初は52キロで乗れていたのに、それが53キロになり、54キロになり、最後はみんなと同じ55キロになるわけじゃないですか。周りの斤量に自分だけが近づいていくわけで、そこはやっぱり変化がありましたよ。
──体感的には、どういうところに変化が現れるんですか?