大井記念(6月6日 大井 サラ4歳以上 別定 南関東G2 2600m)
「大井記念」と聞いてまず思い出すのは、やはり97年アブクマポーロだ。当時ポーロはオープンの入口まで達しており、ここで大きな試金石を迎えている。3〜4コーナーひとまくりの圧勝劇。ナイキジャガー、セントリックら既成勢力を大きくちぎり、ケタ外れの能力をみせつけた。以後、同馬は帝王賞、川崎記念、東京大賞典などGI・4勝。アウェーのJRAウインターSも制し、日本ダート界の頂点へと昇りつめる。
近年あまり風向きのよくない(珍重されない)長距離戦。しかし現実にポーロは、大井記念直後、初めて挑んだGI「帝王賞」を、コンサートボーイの2着だった(鼻差)。あくまで持論だが、長距離を制するものはすべてを制す――。2600mをどう走るかは、やはり地力のバロメーターという部分もある。
◎ホクトアサティス (54・張田)
○ボンネビルレコード (57・的場文)
▲ウエノマルクン (56・柏木)
△エイシンチャンプ (58・内田博)
△サンデーバニヤン (57・坂井)
△シャコーオープン (57・戸崎)
△ケージーチカラ (57・鈴木啓)
アイディンワンダー (56・石崎隆)
ヤスミダブリン (56・今野)
ホクトアサティスは、今回そのテーマにぴたりと嵌る中心馬だ。今季、ブリリアントC→グリーンCと準重賞2連勝。ともに形こそ逃げ切りだが、グリーンC・2000mなど、道中完璧な折り合いで上がり37.1秒。並んでくる相手がいれば、まだまだ伸びた印象がある。本格化手前の3歳時、東京ダービー断念組による「若竹賞=2000m」を、5馬身差で勝った記録。父アサティスはもちろん、母の父アイランドハンター(ダイオライト記念)という血統背景。近年希少になった生粋のステイヤーとイメージしたい。呼吸の合う張田J鞍上で54kg。相手の出方をうかがいつつ自在に乗れる。
ボンネビルレコードは、昨秋黒潮盃→東京記念を文字通りの鬼脚で連破した。こちらも父アサティス、中〜長距離を走らせて爆発的な切れがある。前2走1番人気で9、8着とリズムが悪いが、当初から狙いはこのレースと考えてもいい。中間長めからハードに追い切り好タイム。少々不利な57kgをどう克服するか。こと瞬発力は群を抜く。エイシンチャンプは評価に迷う。GI朝日杯勝ち、皐月賞3着のビッグネーム。前走転入初戦を出遅れながら3着だった。ただ個人的にこのパターンはあまり食指が動かない。ある意味限界をみせてのトレード、そして本質的に芝ベター。内田博Jで人気なら少なくとも妙味は薄い。順調さを買ってウエノマルクンが3番手。以下、長休明けでもソコソコ動けそうなサンデーバニヤン、シャコーオープン。
東京ダービー(6月7日 大井 サラ3歳 定量56kg 南関東G1 2000m)
過去10年の基本データから書いておく。1番人気=[4-0-3-3]。逃げた馬=[3-1-1-5]。連対馬20頭の所属別は、大井9頭、船橋9頭、川崎2頭。直前の羽田盃勝ち馬は、×、×、2、1、7、1、3、1、8、1着(96年ナイキジャガー、97年キャニオンロマンは故障・回避)、過去20年に遡っても、ほぼ5割の確率で“2冠馬”となっている。
原則的には堅いレースだ。同じ(大井)コースで距離が1F延びるだけだから、いったん築かれた力関係はかなり大きな意味を持つ。現実に昨年はシーチャリオット=メイプルエイト、どこまで行っても…という決着だった。ただ今年は少し微妙かもしれない。羽田盃自体が、必ずしも“順当”ではなかったこと。過去10年の2冠馬は、4頭すべて羽田盃を単勝100円台、断然人気で勝っている。
サンキューウィン。データにしろ印象にしろ、何とも取捨が難しい。脚質、気性、さらに道営出身のキャリアを含め、ムードはオリオンザサンクス(99年・2冠馬)に近いだろうか。羽田盃は外から一気に先手をとり切り、そこから不思議なほどスムーズに折り合った。1800m1分53秒1も水準以上(昨年シーチャリオット=53.5秒)。ごく客観的にはあっさり2冠達成があって不思議ない。
◎シャイニールック (56・石崎隆)
○バンクレイド (56・内田博)
▲トキノシャンハイ (56・山田信)
△サンキューウィン (56・左海)
△グッドストーン (56・張田)
△キングトルネード (56・酒井)
△キャプテンシーオー (56・今野)
アタゴハヤブサ (56・的場文)
サワライチバン (56・御神本)
ジェネスサイレンス (56・石崎駿)
ともあれ、シャイニールック◎は、東京湾C快勝(5月3日)の時点で決めていた。デビューは少し遅れたものの圧倒的な4戦4勝。一貫して折り合い優先、先を見据えたレースぶり。その東京湾Cも、道中ひやりとするアクシデント(すぐ前を進んでいたニイタカパイソン・故障中止)に会いながら、直線こともなげに突き抜けた。決め脚、瞬発力はもちろん、3歳馬らしからぬ落ち着きと集中力に惚れ惚れする。「ムダ肉のつきにくい体質で馬体が柔らか。それと心肺機能が素晴らしい」(川島正行調教師)。まさしく実戦向きということだろう。父ダイタクサージャンはサンデーサイレンス産駒ながら、JRA・6勝、すべて2000m以上であげた異色派だった。エリートとは呼べない反面、逞しさがイメージできる。
サンキューウィンは今回マークがきつくなり、引いた枠順(最外16番)からも、ある程度ピッチを上げた逃げだろう。ただしこういうケースは追走組がかえって辛く、グッドストーン、キングトルネード、サワライチバンなど、先行タイプは最後総崩れのシーンも浮かぶ。差す競馬を覚えパワー型に育ってきたバンクレイド、数字上にせよ羽田盃36.6秒、驚異の上がりタイムを計時したトキノシャンハイ、この2頭を本線で買ってみる。大穴は東京湾C・2着、混戦に強そうなキャプテンシーオー。アタゴハヤブサは、今回装着するというブリンカーがどう出るか。