金盃(2月21日 大井 サラ4歳以上 別定 南関東G2 2000m)
「金盃」とはやはり、昔話をしたくなるレースである。大井(南関東)の春を告げる伝統のハンデ戦――。昭和50〜60年代、重賞の数自体が少なかったこと、交流グレードなど夢の夢であったこと。南関東の一線級はおおむねここを早春の目標に定め、全力投球で臨んできた。
ただその時代のハンデ戦。実績上位のスターホースは、相手との力関係以前に自身“極量”をどうこなすか、そういう勝負も多かった。例えば86年など、7頭立てながら3頭まで重斤を課せられた。カウンテスアップ=60kg、ロッキータイガー、テツノカチドキ=60.5kg。結果カウンテスアップ完勝は(2馬身差)、タフな体質、脚質(先行)が大きいだろう。同馬は、父フェートメーカー(スワップス系外国産馬・大井5戦5勝)、530kg台の巨漢で、パワー・持久力に絶対の自信があり、鞍上・的場文騎手は後年、“自分の乗った最強馬?”そう問われるたびカウンテスをあげている。85年ジャパンCで皇帝ルドルフに肉薄したロッキータイガーは、切れ味を減殺されたか何とも歯がゆい3着だった。テツノカチドキの凡走(6着)は、当時東京大賞典(3着)→川崎記念(3着)、強行軍が応えたものか。ともあれダートにおける古きよき時代の名馬とは、あくまで“耐久力”が優先した。イナリワンではなくチャンピオンスター、ヒカリルーファスではなくコンサートボーイ。昨今の趨勢(スピード優先)はさておき、ひとまずそれが地方競馬の歴史ではある。
◎パーソナルラッシュ
(59御神本)
○ボンネビルレコード
(58内田博)
▲コアレスハンター
(56山田信)
△クールアイバー
(56町田)
△ベルモントストーム
(57石崎隆)
△メイプルエイト
(58張田)
△マズルブラスト
(58今野)
チョウサンタイガー
(57酒井)
アウスレーゼ
(56真島)
ウエノマルクン
(56柏木)
今年から別定重量に変更された。ただ一線級の牡馬に59kgなら“極量”とまではいえず、しかも全馬が総じて重い56〜59kg。特に有利不利もないだろう。パーソナルラッシュ◎は、3歳時ダービーGP(盛岡)圧勝の潜在能力、前走川崎記念、見せ場十分のレースぶりを合わせてとった。その川崎記念はアジュディミツオー、ヴァーミリアンのハイペース先行を直後でマーク。3〜4角の行き脚など、あわやというムードがあった。元より函館コース圧勝など右回りは不安なく、大井1戦大敗(04年東京大賞典9着)も、致命的な出遅れを思えばエクスキューズがつく。もう一つ、鞍上・御神本Jは、07年の馬券上、ほぼ無条件で“買い”と考えている。ふっ切れた天才――そういう感触。馬の力に頼らず、常に柔軟なレース運び。スキとかムダがいっさいない。天性のセンスに経験が加わり、今大きく花開こうとしている。ケガなくシーズンを終えればリーディング上位は間違いない。
ボンネビルレコードの鬼脚は認めたいが、前2走ひと息不満もないではない。自ら動けない不器用さ、強さとモロさが同居する気性面の難しさ。ここをすっきり勝てれば改めて大井の君主と納得する。初コンビの内田博Jが新境地を開くかどうか(的場文騎手・負傷)。一昨年2着、健在という以上に充実しているクールアイバー、昨年岩手でタイトル2つを積み上げた古豪コアレスハンターまでほぼ互角と考えた。さらに展開をイメージすると先行馬有利。単騎逃げの可能性があるマズルブラスト、前々でレースができるベルモントストームも流れひとつでチャンスが浮かぶ。昨年の覇者メイプルエイトはおよそ1年ぶりで仕上がりひと息。チョウサンタイガーは大井コースがしっくりこない。牝馬アウスレーゼは夏型と判断する。