■高倉騎手の“お菓子”との戦い
高倉 僕らが1年生のころは、お菓子は1週間で900カロリーまでって決められていて。
優作 日曜日の夜、寮官が、それぞれに買ってきたお菓子のカロリーを計算するんだよな。だから、カロリーが袋や箱に書いていないものはダメで、そのチェックを通ったら、今度は鍵付きの“お菓子ロッカー”に入れなきゃいけない。
高倉 そこで僕、考えたんです。まず、袋がジッパー式で、カロリーが低めのビスケットとかを買うんです。それで、中身をカロリーが高いチョコレートとかと入れ替える(笑)。袋がパンパンになるまで入れるから、明らかに見た目がおかしいんですけど、中身まで見られることは少なかったので、なんとかチェックをすり抜けてました。寮官だけじゃなく、先輩の目もありましたから、なんとかバレないように、もう必死で…(笑)。
優作 お菓子ロッカーには、先輩たちがくつろいでるスペースの前を通らなくちゃ行けなかったよね。
松山 あれ、嫌だったな…。
優作 だから僕は、“今日はやっぱお菓子やめとこ…”って、食べないことも多かった。食べていい時間も決まってたし。
恭介 でも、3年の実習が終わったあたりで、お菓子のカロリー制限が緩くなったよね。
優作 そう。でも、3年生になったから自由が増えたんじゃなくて、僕たちが3年生になった年に、競馬学校自体のルールが変わったんだよ。今年デビューした子たちが入学した年に、規則がいろいろ緩くなって。
高倉 それまでは、ポテトチップス2袋でアウトだったのに…。
松山 外出時間もすごく延びて、お菓子のルールも緩くなって、携帯電話もOK になって。
恭介 でも、そのほうが余計な悪さをしなくて済むよ。
松山 僕たちは、お菓子を隠したりしてたもんなぁ。でも、僕ら5人って、一度も罰を受けてないんだよね。それまでの期は、たいてい停学とかあったらしいけど、一度もなかったよね。初めてらしいよ。
優作 きついことも多かったけど、それより楽しかった思い出のほうが、僕は上回ってるな。
■1年生は“しゃぶしゃぶ風呂”
恭介 入学式の日に、いきなり「お前ら、終わったら全員、娯楽室に来い」って、先輩に呼ばれたよね。祝福の言葉でもかけてくれるのかな…と思ったら、違った(笑)。
松山 伝統行事なんだろうね。誰もが通る道なんだよ。
優作 うん。それで床に座らされてな。
松山 僕、みんなが床に正座をしているなか、普通にソファに座っちゃって、すごく怒られた覚えがある(笑)。
恭介 1年生のときは、たしかに先輩は怖かったな。
優作 (高倉騎手に)でも、俺らは怖くなかったでしょ?
高倉 ん…、そうですね…(笑)。
恭介 無理して“怖い先輩”になろうと思った時期もあったけど、みんなグダグダだった(笑)。あと、僕らの代は、後輩を怒ったりすると、教官から「そういうことをしたらアカン!」って言われたよね。
高倉 僕らの期は可愛がられてましたから(笑)。
優作 あと、先輩に「風呂場にいるな!」って言われなかった?
恭介 そうそう、5分で上がれって。風呂場で体重を落とそうとするなって言われた。
優作 普通にゆっくりお風呂に入ってたら、先輩に「汗取りするな!」って言われたんだけど、そのときは“汗取り”の意味がわからなかった(笑)。
松山 たしかに1年のときは、シャワーだけやったな。
優作 そうそう、湯船にほとんど浸からなかった。
高倉 僕も、お湯に浸かるんじゃなくて、お湯をすり抜けるというか。いつも、しゃぶしゃぶ状態でしたよ(笑)。先輩が汗取りをしてるんですけど、眉間にシワを寄せて漫画を読んでいたりするので(笑)、その場に長くはいられなかったです。