スマートフォン版へ

ハイセイコー記念展望&ロジータ記念回顧

  • 2012年11月13日(火) 18時00分
◆ハイセイコー記念(11月14日 大井 サラ2歳 定量 南関東SII 1600m)

 ハイセイコー記念は旧・青雲賞。今年第45回目を迎える伝統の大井2歳馬重賞で、ハイセイコー他界、その翌年(平成14年)から、現タイトルへレース名が変更された。鎌倉記念、平和賞より1つしグレードが高いSII、1着賞金2000万円。

 ただし皮肉なこと。怪物の名を冠したわりに、その結果は翌春につながらないケースが多く、過去10年、優勝馬のクラシック活躍は、20年ナイキハイグレード(羽田盃勝ち・東京ダービー3着)ただ1頭しか例がない。昨年はドラゴンシップ→アイキャンデイの牝馬決着。しかもこの2頭は翌春牝クラシックですら、いいところなく終わってしまった。

 さて今年の2歳勢力図。結論から書けば“まだ混沌”が客観的だろう。鎌倉記念→平和賞を連破したインサイドザパーク。なるほど直線一気の勝ちっぷりこそ個性的で鮮烈だが、時計は古馬C1〜C2レベルの域を出ない。大井路線、ゴールドジュニアー、はくたか特別の勝者オベロンホワイト、ナリチュウドラゴンも同様で、接戦を制した切れ味は認めても、時計がいかにも平凡だけに飛び抜けたイメージが浮かんでこない。

 そして道営勢。かなりハイレベルと思えたサンライズカップC・1〜3着馬、ジェネラルグラント、アウトジェネラル、ストーミングスターが、先日GIII・北海道2歳優駿で、JRA1勝級にいともあっさりひねられてしまった(優勝アルムダプタ)事実がある。今回、ハイセイコー記念でフレッシュかつ、スケールの大きい新星が現われるかどうか。来春メインステージになる大井コースだけに、なおさら注目度の高い一戦だ。

(1)…波乱含み。1番人気[2-3-3-2]、2番人気[3-3-1-3]、3番人気[1-2-3-4]。数字上は合格点だが、人気馬同士すんなりという決着は、一昨年セルサス→リョウウンがあった程度。おおむね伏兵がどこかにからむ。

(2)…近年船橋。地元大井=5勝、2着3回と優勢だが、船橋=3勝、2着6回もアベレージとすると差がなく、ここ2年は船橋連覇。川崎も2勝、2着1回と脈がある。転入馬[0-0-0-0]と意外な不振で、南関東生え抜きが上位独占。

(3)…素質馬。過去10年、優勝馬の平均キャリア=3.8戦、同2着馬=3.9戦。ある程度経験も必要だが、どちらかといえば素質、潜在能力が優る傾向。牝馬は昨年ワンツーを含めて[1-1-0-11]。分がいいとはいえない。

(4)…好位差し。逃げ=4、先行=8、差し=7、追込=1。道中一人旅、伏兵の逃げ切りもしばしばあるが、主流は好〜中位からの差し。過去10年で3勝をあげている的場文Jに今年は騎乗馬がなく、戸崎、御神本、坂井Jが1勝ずつ。

※データ推奨馬
 ◎キタサンオーゴン…近年最もアベレージがいい船橋所属。デビューから3戦2
勝、好位から機敏に動けるタイプで大井初コースも特に減点は浮かばない。マイル〜
中距離を得意とするマーベラスサンデー産駒。御神本Jは昨年ドラゴンシップで、佐
藤賢二厩舎は一昨年セルサスでそれぞれ優勝。


 ☆       ☆

◎アウターバンクス 55和田
○ドリームタイム 55柏木
▲ブラックワード 55戸崎
△ザスパイスガール 54町田
△ナリチュウドラゴン 55酒井
△ドリームキングダム 55真島
△キタサンオーゴン 55御神本
 ヴェリイブライト 55今野
 ソルテ 55金子
 イブニングスター 55山崎誠

 アウターバンクスを狙った。道営[1-1-1-1]、一見物足りない戦歴だが、新馬勝ちは出遅れを抜群の瞬発力で差し切ったもの。以後一貫高いハードルに挑み、存在感十分のレースをみせてきた。前2走イノセントC・3着、サンライズC・4着はいずれも重賞。とりわけサンライズCでは、道中終始折り合いに苦労しながら上がり38.8秒。当地2強とされるアウトジェネラル、ジェネラルグラントにきわどく迫った。

 首が高い走法など若さが残る反面、エンジンかかって逞しい末脚。ロージズインメイ×サンデーサイレンスの背景なら、むろん伸びしろも大きいだろう。来春クラシックを意識した東上。転入先・月岡賢二厩舎(現在大井リーディング2位)という点にも期待感がある。

 相手本線にみたドリームタイムは豪快な末脚で新馬勝ち。続く2戦目ゴールドジュニアーも致命的な出遅れを力任せに追い上げて4着だった。初の内コース千六、不器用さは気になるものの父サイレントディール、ガッシリした好馬体。素質のよさに期待する。

 はくたか特別組は6頭出走。レース自体が前崩れの大混戦(1〜6着まで0.2秒差)で、結果を出したナリチュウドラゴン、ヴェリイブライトより、当時1番人気、スローにかかった感のあるブラックワードを上にみた。同馬は6〜7月とワンサイド2連勝。馬体、走法にも威圧感がある。

 以下、前走転入初戦を余裕残しで勝ったザスパイスガール(川島正行厩舎)、データ欄推奨キタサンオーゴン。ドリームキングダムもデビュー2連勝のマンハッタンカフェ産駒で、前走鎌倉記念(6着)をいい経験にできれば面白い。

◆ロジータ記念(11月7日 川崎 サラ3歳牝馬 定量54キロ 南関東SI 2100m不良)

○(1)エミーズパラダイス 2分14秒1
◎(2)アスカリーブル 1
△(3)グラッドクライ 1.1/2
△(4)シラヤマヒメ 1
▲(5)グレコ 9
 ……………………
 (6)レディソルジャー
△(7)プロハンター
△(12)コテキタイ

 単300円  馬複200円  馬単550円  3連複870円  3連単3410円

 一騎打ちになった。逃げるコテキタイを3コーナーで捕えたエミーズパラダイス、同馬を目標に外から動いたアスカリーブル。直線を向いてエミーズ、アスカの差は1馬身前後あり、結局ゴールまでそれがまったく詰まらなかった。二千百=2分14秒1は、過去23回の歴史でレースレコード。今回に限っていうなら、両馬の勝因、敗因は、高速馬場への適性、対応力に尽きると思う。スピードとセンスが特徴のエミーズパラダイス、並んでねじ伏せるパワーが武器のアスカリーブル。いずれにせよ好対称のライバルであることが、この一戦ではっきりした。

 エミーズパラダイスは、今回南関東重賞初制覇。改めてそういわれると正直驚く。がしかし、JRA芝(東京クイーンS5着)、牡馬相手のクラシック(羽田盃2着、東京ダービー3着)など、一貫高いハードルに挑んだためで、今回この結果が出れば“ポスト・クラーベセクレタ”の評価も再び説得力を持ってくる。

「何とか重賞を勝たせたかった。スピードの生きる馬場もよかったけれど、いつも一生懸命走ってくれる素晴らしい馬」(戸崎J)

 いかにも愛着を感じさせるコメントと納得した。そして川島正行厩舎、思惑通りのワンツー決着。

「エミーズは、いいところがすべて出た。アスカは少し重かったかな。でもこの結果なら厩舎としてはもちろん嬉しい」

 両馬とも次走は未定。記者的には“牝馬枠”にとらわれない路線選択を期待したい。

 3着グラッドクライが健闘した。これまで7勝はすべて距離千〜千六。それでいて直線2強に食い下がり、しかも上がり3Fはアスカを凌ぐ39秒1だから胸が張れる。キッケンクリス×シャンハイ、地味ながら地方向きの背景を持っている。

 同様に4着シラヤマヒメも内容は悪くない。出遅れをじわりと追い上げ、ゴール際あわやと思わせるシーンもあった。こちらは父サクラローレル、典型的な晩成タイプ。今後さらに成長が望めるだろう。

 TR勝ちグレコは、道中エミーズを意識する競馬で結果的にちぎられた。ただキャリア自体がまだ浅く(7戦目)、加えて父ハーツクライ。経験を積んでまだまだ前進がイメージできる。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング