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浦和記念展望&ハイセイコー記念回顧

  • 2012年11月20日(火) 18時00分
◆浦和記念展望(11月21日 浦和 サラ3歳以上 別定 JpnII 2000m)

「浦和記念」は平成8年から統一G移行。その初年度をホクトベガが制し、以後もおおむね“小回り二千”のイメージを覆すような実力派が勝ってきた。思いつくままあげれば、キョウトシチー、インテリパワー、マキバスナイパー、ヴァーミリアン、さらにスマートファルコン。“重厚なタイプ”という意味では昨年ボランタスもイメージに合っている。とりわけヴァーミリアン、スマートファルコンの場合は当時3歳。両馬にとって文字通りの出世レースとなった。

 もう一つ。このレースは地方馬(南関東)にとって、あくまで結果的かもしれないが、“最後の砦”と呼べる交流Gだ。過去16年、JRA9勝、地方7勝、2着もJRA8頭、地方8頭。この記録は他交流Gと較べて例をみない。むろん恵まれたケースは多分にあり、例えば09年スマートファルコンの逸走など。ただそれでも、ゲンがいい、追い風があることは事実だろう。はたして今年も双方の顔ぶれ、見渡して傑出馬不在。微妙な力関係というしかない。JRAのプライドか、地方の意地か――。CS中継などで繰り返し流されるCMが、ここで改めて脳裏をよぎった。

 (1)…波乱含み。1番人気[4-3-0-3]、2番人気[2-2-1-5]、3番人気[0-1-3-6]。1人気の勝率、連対率はまずまずだが、過去10年、馬単万馬券が2度あり、イメージほど堅くもない。4〜6番人気あたりが妙味。

 (2)…地方勢。冒頭書いた通りJRA、地方、ほぼ互角の形勢で、過去10年に絞ると、JRA=5勝、2着4、川崎=3勝、2着2、船橋=1勝、2着3。大井も18年ケイアイミリオンが優勝している。20年浦和クレイアートビュン3着。

 (3)…3歳馬。3歳=4勝は、この時季としては異例といえる。中でもヴァーミリアン、スマートファルコンは、その後ダートGの主役を長く演じた。6歳=2勝、2着4と続き、以下7歳=2勝、5歳、8歳もそれぞれ1勝。なぜか4歳馬が勝っていない。

 (4)…逃げか捲りか。逃げ=5、先行=6、差し=8、追込み1。逃げ馬はやはり要注意で、16年モエレトレジャー、18年ケイアイミリオンなど、伏兵の優勝はこのパターンが多い。他で目立つのは“捲り追込み”。昨年ボランタスは向正面10番手、しかし4コーナー5番手まで追い上げていた。

 ※データ推奨馬
 ◎プレティオラス…今春東京ダービーを強烈な末脚で制した3歳馬。今回5〜6番人気あたりの評価だろうが、21年ブルーラッド級が勝った比較からは好勝負して不思議ない。気鋭の若手・本橋J鞍上、意外性のある父フィガロ。前述ボランタスのような捲りが打てれば脈が出る。

       ☆       ☆

 ◎トーセンアレス   56張田
 ○エーシンモアオバー 56戸崎
 ▲ランフォルセ    57ムーア
 △プレティオラス   54本橋
 △ビイラニハイウェイ 56岩田
 △ダイシンオレンジ  56川田
 △ディアーウィッシュ 56今野
  グランシュバリエ  56御神本
  トウホクビジン   54森

 トーセンアレスに期待する。今季JRA→浦和転厩。その初戦、いかにも忙しいと思えた「オーバルスプリント=千四」をアースサウンドの鼻差2着。続くここへのTR「埼玉栄冠賞=二千」は、道中4番手から早めの捲りでカキツバタロイヤル以下に完勝だった。底力があること、南関東適性が高いこと。元より父アドマイヤドン、JRA5勝をすべて千八以上であげた本格派のステイヤーで、3歳時に遡って「ジャパンダートダービー」0.2秒差5着も価値がある。5歳秋、ピークを迎えたところで、最も条件が合う二千GII。ベテラン張田Jはここ一番に強く、こういったケースでチャンスを逃がさないイメージが浮かぶ。

 JRA馬の比較。絶対能力は今春「ダイオライト記念」完勝、当時ワンダーアキュートを競り落としたランフォルセだが、以後3戦がピリッとしない。今回R.ムーア騎手起用で一変があるのかどうか。同馬の場合、折り合って差す競馬が理想とみえる。対してエーシンモアオバーは思い切りのよい逃げで勝負。過去このレース2戦4、5着だが、昨年シビルウォーと0.3秒差など内容は悪くなかった。ピイラニハイウェイ、ダイシンオレンジも、前者「佐賀記念」、後者「アンタレスS」を制した中〜長距離型だが、この2頭は体調、精神面で波が大きく、ひと息常識にかからない。それなら3歳プレティオラスの大駆け。現段階で未知数としかいえない世代レベル(南関東牡馬の場合)だが、同馬自身に爆発力、個性があることは間違いない。もう1頭△をつけたディアーウィシュは一昨年3着。平均ペースの二千前後に案外強く、道中すんなり好位キープなら、3連勝馬券、あるいはワイドの穴馬にはなりうる。

◆ハイセイコー記念回顧(11月14日 大井 サラ2歳 定量 南関東SII 1600m重)

  (1)ソルテ        1分43秒2
  (2)ヴェリーブライト     3
 △(3)ナリチュウドラゴン   11/2
 △(4)ザスパイスガール    1/2
 △(5)キタサンオーゴン     4
 ………………
 ○(6)ドリームタイム
  (7)イブニングスター
 △(8)ドリームキングダム
 ▲(11)ブラックワード
 ◎(13)アウターバンクス

 単2280円  馬複9170円  馬単18420円  3連複8900円  3連単102600円

 伏兵ソルテが鮮やかに差し切った。道中5番手、絶好のポジションを反応よくキープして手応え十分。直線中ほど、先行争いから抜け出したヴェリーブライトを並ぶところなく抜き去った。1勝馬(3戦)、前走実質TR「はくたか特別」4着からは、この日低評価(9人気)もやむをえないが、結果としてただ1頭、別格の強さをみせたと言い切れる。千六1分43秒2の時計も、同日古馬C1=44秒3との比較からは合格点がつく。「道中ずっと感触がよかったし、手応え通り直線伸びた。(自分の重賞勝ちが)久しぶりなので興奮している。馬と調教師さん、スタッフに感謝の気持ちでいっぱいです」(金子正彦騎手)。同Jは川崎所属、50歳、通算117勝の大ベテラン。04年モエレトレジャーで浦和記念、09年サイレントスタメンで東京ダービーなど、数々大レースも勝っている。追い込み得意。いわゆる“いぶし銀”的な名手の一人だ。

 ソルテは、タイムパラドックス×マルゼンスキーの鹿毛・牡馬。重厚かつ成長力豊かな血脈で、馬格こそ小ぶり(当日452キロ)でも、エンジンかかっていい脚を長く使うタイプといえる。「負けたレース(はくたか特別)でも中身があったし、私なりに期待していた。嬉しいね。厳しい展開になってひるまず動けるのは、心臓がいい証拠でしょう」(寺田新太郎調教師)。終わってみれば父タイムパラドックスは、インサイドザパーク(鎌倉記念→平和賞連破)に続き、来春クラシック候補を続けて送ったことになる。自身JBCクラシック2勝(04年大井・06年川崎)の偉業。その産駒も地方ダート、とりわけ南関東適性がきわめて高い。次走未定とされたソルテだが、むろん今後状態がよければ、GI「全日本2歳優駿=12月19日川崎」への夢も浮かぶ。相手が上がっても、実戦向きのパワーとガッツで対抗できる。

 2着ヴェリーブライトは先行争いを捌いて四角先頭。勝者とは決め脚の差が如実に出たが、内容自体は悪くない。父メジロベイリー、いかにもそれらしいセンスとしぶとさを感じさせる。3着ナリチュウドラゴン、4着ザスパイスガールも、前者は末脚、後者は先行力、それそれ持ち味を生かして善戦した。ドリームタイムはスタートこそポンと出たものの、精神面が未完成か折り合いひと息。大井初体験キタサンオーゴンとともに、今は経験を積む段階と納得する。対して◎アウターバンクスは、懸念されていた気難しさがそのまま出た。中団でもまれ込む展開になってあえなく失速。個体の問題はあるにせよ、先日「北海道2歳優駿」の結果も含め、道営2歳馬のレベル自体、少々危うくなった感は否めない。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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