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クイーン賞展望&勝島王冠回顧

  • 2012年12月04日(火) 18時00分
◆クイーン賞(12月5日 船橋 サラ3歳以上牝馬 ハンデ JpnIII 1800m)

 クイーン賞は、平成9年から交流G昇格。当初2年をマキバサイレント、イシゲヒカリと船橋所属馬が制したが、11年ファストフレンド(通算15勝・帝王賞、東京大賞典)が勝って以降、一貫JRA勢が主導権を握ってきた。

 その中で1つ傾向というなら、新旧交代。すでに実績を積み上げた“女王”より、ここを出発点に昇りつめていく“新星”に分があることか。実際、一昨年ミラクルレジェンド、昨年クラーベセクレタ、3歳馬がいずれも1番人気で堂々たる横綱相撲を演じている。

 さて今年の顔ぶれ。川島正行厩舎、現南関東女傑級である3頭が、一挙に揃いぶみという形になった。クラーベセクレタ、エミーズパラダイス、そしてアスカリーブル。それぞれ個性が違うだけに興味深く、しかもJRA側からは芝GIウィナー・ホエールキャプチャが登場する。視点によっては今年の地方ダートG、最もワクワクするレース(少なくとも馬券検討は上)といえるかもしれない。JRA対地方、ほぼ等分にチャンスが浮かび、その意味でも文字通りビッグマッチだ。

(1)…上位拮抗。1番人気[4-3-2-1]、2番人気[4-1-2-3]、3番人気[1-3-1-5]。1人気で馬券の対象から消えたのは、22年ブラボーディジー(大出遅れ)だけ。総じて堅い。

(2)…JRA優勢。JRA=7勝、2着5回と大きくリード。次いで船橋=2勝、2着4回、川崎1勝(JRAから移籍したユキチャン)。他場所では、17年笠松=クインオブクインが2着している。

(3)…3歳馬。3歳=4勝、2着2回は特筆に値する。次いで4歳=4勝、2着3回。5〜6歳馬は案外ふるわず、それぞれ1勝をあげただけ。牡馬に較べ、新旧交代が早い結果かもしれない。

(4)…先行型。逃げ=4、先行=9、差し=6、追込=1。ペースがあまり上がらず前残りの傾向が強い。その年の関東オークス馬は相性がよく、5頭出走し[2-0-1-2]。ロジータ記念→クイーン賞連破は昨年クラーベセクレタが初めて。

※データ推奨馬
 ▲レッドクラウディア…ダート6戦3勝の3歳馬。出世レースといえる昇竜Sを制し、前走初交流GスパーキングLC4着だから格下感はない。地方ダートGに良積の目立つ栗東・石坂正厩舎。父アグネスタキオンらしく、自在性と瞬発力を兼備する。内田博J騎乗、53キロも恵量だ。

 ☆       ☆

◎アスカリーブル 53今野
○クラーベセクレタ 56戸崎
▲ホエールキャプチャ 57・5蛯名
△エミーズパラダイス 53御神本
△レッドクラウディア 53内田博
△ショウリダバンザイ 52五十嵐冬
△アクティビューティ 52吉田隼
 プリンセスペスカ 52幸
 ハルサンサン 54石崎駿
 ネオグラティア 51町田

 アスカリーブルに狙いをつけた。川島厩舎3頭出し、あるいは最も人気薄かもしれないが、実績、底力、距離適性、すべての面で互角以上と判断する。GII関東オークスを含む堂々たる牝馬二冠、さらに牡馬相手の「黒潮盃」→「戸塚記念」連破。

 なるほど前走ロジータ記念こそエミーズパラダイスに及ばなかったが、当時超のつく高速馬場で、二千百=2分14秒1のレースレコード(15年間)。アスカ自身それに1馬身差=14.3秒は、単純比較ながら同開催JBCクラシック、4着ソリタリーキング=14.9秒を凌いでいる。しかも当時10キロ増、まだまだ伸びしろを残している証拠だろう。馬群にひるまず、いい脚を長く使うあたり交流向き。初コースになる船橋千八も、ごく普通にイメージして減点はない。

 このレース連覇を狙うクラーベセクレタは、今回1つ課題がある。スタートを無難に切り、早めに好位に取りつくこと。実績通り総合力は一枚上だが、前2走で見せた意外なズブさがやはり気になる。前走JBCレディス2着も、川崎千六、ミラクルレジェンド逆転可能な条件と思えただけに、記者馬身はあまり評価していない。

 初ダート・ホエールキャプチャはまさしく“単穴”で、圧勝も大敗もあるだろう。ただ格と絶対能力は、JRA芝GI実績が示す通り。まして父クロフネなら、新天地で大変身、再ブレイクの期待も当然浮かぶ。

 前走ロジータで改めて真価をみせたエミーズパラダイスは、今回馬場と展開が鍵になる。近年船橋コースは多少降雨があっても軽くはならず、本質先行型のホエールがつつくような流れだと楽観できない。

 レディスプレリュード2着プリンセスペスカは、当時クラーベの出遅れ、凡走に助けられた印象で、時計も千八=1分54秒3ときわめて平凡。それなら昇る勢いがあるレッドクラウディア、アクアビューティ、地味ながら混戦向きショウリダバンザイを上にみたい。TCK女王盃勝ちハルサンサンは、以後長期休養で前走大敗。しばらく時間が必要だろう。

◆勝島王冠回顧(11月28日 大井 サラ3歳以上 南関東SIII 1800m不良)

○(1)プーラヴィーダ 1分54秒9
▲(2)カキツバタロイヤル 1/2
△(3)フォーティファイド 4
 (4)シーズザゴールド アタマ
 (5)ドリームライナー アタマ
 ………………
△(7)ツルオカオウジ
△(9)ルクレルク
 (10)ボンネビルレコード
△(15)マチカネニホンバレ
◎(16)アートサハラ

 単180円  馬複390円  馬単590円  3連複1440円  3連単3700円

 3歳プーラヴィーダが完勝した。道中中団でスムーズに折り合い、直線GOサインと同時に弾けるような瞬発力。最後追いすがったカキツバタロイヤルに結果1/2差だが、ゴール前1ハロン、いったん相手を受け止め、そこから突き放した形だから数字以上の強さといえる。54キロ対57キロ、有利な斤量を割り引いても、勝つべくして勝った、そんな印象。

「初めて乗せてもらったときから、これは走る…という手応えがあった。勢いと成長力を感じます」(戸崎騎手)

 今秋同Jとコンビを組み3戦3勝。馬自身の素質はもちろん、それを100%引き出す鞍上も、まさしく“絶頂期”に達している。

 プーラヴィーダはJRA出身、南関東転入後4戦3勝。今春、兵庫チャンピオンシップ=GII3着があり、東京ダービーは、同厩(森下厩舎)プレティオラスの2着だった。そのプレティオラスは同オーナー(伊達泰明氏)、同生産者(サンシャイン牧場)、同血脈(父フィガロ)。関係者の信念と夢、そして努力と英断、すべてが見事に結実した結果ともいえるだろう。

「強い稽古をするとまだ反動が気になるし、自分としては本格化途上の馬と思っている。大井で1つタイトルがとれてホッとしてます」(森下淳平師)

 優先出走権を得た東京大賞典=GIはどうやら回避の模様。正直残念。しかし今日の時計千八=1分54秒9からは、例えばワンダーアキュート、シビルウォーあたりに現時点で太刀打ちできず、そう考えるともう一段パワーアップの時間がほしい。実戦向きの切れとセンスは合格点。言葉にすると難しいが、あえていうなら精神力と持久力が今後のテーマか。

 2着カキツバタロイヤルはプーラヴィーダの直後を進み、しかし枠順(16番)の不利もあり、終始外々を回るロスが響いた。ただ前述通り直線相手に並びかけ、そこから交し切れなかったのは決め手の甘さ。現南関東、オープン級の基準馬は確かだが、成長株相手にどこか限界をみせた感も否めない。

 勝ち負けとは少し離れて、フォーティファイド、シーズザゴールド、ドリームライナー、どっと流れ込む形になった。中で注目はシーズザゴールド。今回川島正行厩舎転厩。馬体重(-3キロ)はさておき、パドックの印象など、一転落ち着きが感じられた。もとよりマカニビスティーを下した羽田盃馬。再生に定評がある川島厩舎スタッフが、今後どう新境地を開かせるか興味が大きい。

 記者◎アートサハラは、あろうことか殿り負け。向正面から例によって捲りを打ったが、4角手前で勢いが止まり、そこからあっけなく馬群に沈んだ。極量59キロうんぬんの負け方ではなく、むしろアクシデント(脚元など)が心配になる。気性的な問題か、あるいは前2走(セントライト記念→JBCクラシック)のステップが辛かったか。記者的には、ひとまず前者の理由なら少しだけホッとする。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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