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川崎記念展望&TCK女王盃回顧

  • 2013年01月29日(火) 18時00分
◆川崎記念展望
(1月30日 川崎 サラ4歳以上 定量 JpnI 2100m)

 川崎記念は平成8年から交流GI移行。黎明期の8〜9年をホクトベガ連覇でスタートし、以後ほぼ例外なく、その時代ダート王にふさわしい馬が制してきた。17年間の歴史は、そのまま名馬の歴史にダブってくる。

 だから印象的な馬は何か、ピックアップすること自体が難しい。強いていうなら(地方びいきで)、何とも鮮やかな末脚をみせたアブクマポーロ、渾身の捲りでレコード(当時)を樹立したエスプリシーズ、内田博Jが渾身のステッキで差し返したアジュディミツオー。いずれにせよ、今思い起こしても“凡戦”だった年がない。

 ともあれ今年は寂しくなった。フリオーソのいない冬――何やらそんな言葉が浮かんでしまう。昨暮れ東京大賞典(6着)で引退、種牡馬入りした同馬は20〜24年、5年連続で川崎記念に出走し2、2、2、1、3着の成績を収めている。カネヒキリ、ヴァーミリアンに敗れ、昨年はスマートファルコンに敗れた。しかしそのレースぶりは一貫ケレン味ない正攻法で、勝った一昨年など直線後続を見る間にちぎり、最後5馬身差をつけている。

 毎度の繰り返しで申し訳ない。統一Gの目的、意義、さらにファンの夢とはいったい何か。JRA対地方、好勝負(少なくともレース前は)が描けてこそ全国交流の意味がある。馬場を貸すだけ…とは、どうにも屈辱的な言葉と思う。ごく正直にいえば、記者本人も、JRA馬の序列(予想)には頭を痛め、そしてそれがたいした意味を持たないことに、かなりジレンマを感じている。

(1)…堅い決着。1番人気[7-2-0-1]、しかも近年6連勝、9連対中。4番人気以下の優勝は、15年カネツフルーブ(ロジータの仔)まで遡る。3連複馬券は、10年中7度まで千円以下。21年は何と“230円”だった。

(2)…JRA優勢。JRA=7勝、2着6回、3着6回と断然優勢。ただ意外なことに1〜3着独占は1度もない。船橋=2勝、2着4回、3着2回、川崎=1勝、3着1回。他場所属馬は、17年ウツミジョーダン(岩手)3着が最高。

(3)…7歳馬。7歳=4勝、2着1回、3着1回と最も優秀。次いで5歳=3勝、2着2回、3着3回、6歳=2勝、2着回4、3着1回。8歳馬も22年ヴァーミリアンが優勝している。4歳馬は2着2回、3着2回と案外振るわない。

(4)…大賞典組。今年は前年東京大賞典優勝ローマンレジェンド不在だが、その2着馬は2勝、2着回2、同3着馬は2着1回、3着2回。逃げ=8、先行=8、差し=3、追込=1。仮にハイペースで流れても、強い先行馬が粘る傾向。

※データ推奨馬
 ▲カキツバタロイヤル…船橋所属、7歳馬。南関東SIII2勝、一昨年GIIダイオライト記念(2400m)でスマートファルコンの2着だからノーチャンスではない。流れに応じ自在。川崎コース自体も[2-0-1-1]の適性がある。3連複、3連単馬券の穴として一考したい。

 ☆       ☆

◎ハタノヴァンクール 56四位
○ワンダーアキュート 57和田竜
▲タカオノボル 57内田博
△グラッツィア 57岩田
△カキツバタロイヤル 57高橋利
△サクラロミオ 57川島
 クリールパッション 57津村

 ワンダーアキュートVSハタノヴァンクール。風評通り、人気通りの一騎打ちになりそうだ。◎ハタノヴァンクールは、4歳馬の勢い、上昇度を買ったもの。前走・東京大賞典で現実に頭差先着。直線中ほど、先に抜け出したワンダーアキュート、ローマンレジェンドをインから追い詰め、ゴール際の脚いろに限れば3頭中最もよかった。

 道中きまってズブさをみせ、しかし手応え以上に伸びるのが同馬の特徴。昨夏ジャパンダートダービー圧勝からも、少し時計ののかかる地方ダートが条件ベストといえるだろう。やや繊細、調子に微妙な波があるアキュートに対し、こちらはいかにも男っぽい馬力型。直線叩き合いに持ち込めれば、最後はパワーがモノをいう。

 ▲タカオノボルは補欠出走で少し格下。それでも前々走・初夢特別=1600万完勝は、当時メーデイアを下した点に価値があり、今回何より内田博J鞍上に魅力を感じる。見渡してはっきりした先行型は同馬1頭。展開的にも完全燃焼が可能だろう。グラッツィアは前走・みやこSでハタノヴァンクールに先着。JRA良積を千七〜二千百であげており、岩田J騎乗も含め、あわよくば一角崩しのイメージまで浮かんでくる。

 ただこの2頭が“3着”だと、3連勝馬券も好配当は期待できず、それなら…という意味でカキツバタロイヤル、サクラロミオを推しておく。前者は重賞経験の浅い高橋利Jだが、逆にこのケース(GI)は人気薄で気楽に乗れる。後者はJRA4勝、ベテルギウスSをキングスエンブレムの3着なら決定的な能力差はないはずで、こちらも川島正太郎J、渾身の騎乗に期待したい。

◆TCK女王盃回顧
(1月22日 大井 サラ4歳以上牝馬 別定 JpnIII 1800m重)

△(1)メーデイア 1分53秒7
 (2)アクティビューティ 5
◎(3)レッドクラウディア 2
△(4)アドマイヤインディ 3/4
△(5)プレシャスジェムズ 5
 …………………
△(6)マニエリスム
○(9)ハルサンサン
▲(11)エミーズパラダイス

単290円  馬複5410円  馬複8130円  3連複1780円  3連単17970円

 交流G初挑戦メーデイアが、1頭別次元の強さをみせた。道中は先行レッドクラウディア、エミーズパラダイスをマークする3番手。3〜4コーナー、素晴らしい行き脚、手応えで並びかけ、直線それこそあっという間に独走に持ち込んだ。

「実績のある馬が前にいたから、逆にチャレンジャーらしい真っ向勝負の競馬ができた。もともと期待していた馬。心身とも実が入ったということでしょう」(浜中騎手)

 同Jは言わずもがな、JRA若手のホープ。大井コース初体験ながら、思い切りよく、しかも隙のない騎乗で馬の能力を100%引き出した。

 メーデイアは年齢こそ明け5歳でも、まだキャリア12戦、休養をはさみ[5-3-2-2]の上昇馬。前走準オープンを勝ち切れず、レース前記者見解は“少し格下”というものだったが、現実にはまるで違った。パドックと返し馬。キングヘイロー産駒特有の“力み”がなく、歩様、走法ともしなやかで、何より“自然体”を感じさせた。

「思った以上に強い競馬でびっくりした。気性が素直で一生懸命走る馬。さまざま厳しい条件をクリアして、今後に夢が広がりました」(笹田和秀調教師)

 次走未定とされたが、今日のパフォーマンスに限れば“強烈”としか言葉がない。おそらく千八ベストの中距離型だ。

 レッドクラウディア3着は正直意外。勝ち馬の強さはともかく、自身ペースを握りながら終いあえなく失速した。

「外からかぶされるよりはいいと思ってハナを切った。自分の競馬はできたけれど…」(内田博J)

 昨暮れクイーン賞は圧勝したものの、鞍上コメントからは現時点で試行錯誤の部分もありそうだ。

 2着アクティビューティはスタートひと息。しかし開き直った直線勝負で新境地を開拓した。直線大外を突いて上がり39秒9(メンバー中第2位)なら、今後もダート牝馬Gで通用のメドが立った。期待した地方勢は全滅。今回メーディアの強さは別格にせよ、ハルサンサン9着、エミーズパラダイ11着では、今後に夢がつながらない。微妙な体調の揺れ、さらに展開。いくつか考慮しても、“新星”の出現が、緊急、切実な願いではやはりある。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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