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報知グランプリC展望&川崎記念回顧

  • 2013年02月05日(火) 18時00分
◆報知グランプリC展望
(2月6日 船橋 サラ4歳以上 別定 南関東SIII 1800m)

 報知グランプリCは、今年第49回を迎える船橋厳寒期(おおむね2月上旬)の伝統レース。平成10年まで“オールカマー”で行なわれた。オールカマー、その意味は“アラブOK”ということで、現実に4頭のアラブが延べ5回優勝している。

 今にも風化しそうな話だから、改めて当時の怪物、強豪の名前を記しておく。ヨシノスカレー、ホーエイヒロボーイ、コスモノーブル(連覇)、トチノミネフジ――。数えてみると、アラブが競馬場(南関東)から姿を消してちょうど今年が15年目に当たっていた。感傷とわかっていても、やはり一つため息が出てしまう。そのころの競馬は面白かった。にわかには信じられないような逆転ドラマが、地方競馬場ではしばしば見られた。

 かつて地方競馬、いや日本ジョッキー界の第一人者であった石崎隆之騎手(57歳)。その絶頂期(1987〜2001年・南関東リーディング)に取材して驚いたことを思い出す。

「自分が乗って一番強いと思った馬? うーん何だろう…」

 寡黙ながら実直な彼は、数分真剣に考えたのち、そこで意外な答えを聞かせてくれた。アブクマポーロではなく、コンサートボーイ、トーシンブリザードでもなく、それはコスモノーブルだった。

「どっしりして安定感がある。それでいて勝負どころで反応がめっぽう鋭い。乗り役はね、馬と自分、お互いの信頼感があれば、技術以上のものが出せると思う」

 コスモノーブルについてフォローしておく。父タイムライン、母の父エルシド、480〜490キロ台。石崎隆之騎手がもっとも得意とする切れ味鋭い追い込み馬で、通算66戦22勝、アラブ戦の最高峰である「全日本アラブ大賞典=大井2600m」も、7〜8歳時に連覇した。そして本題の平成5年、報知グランプリCは、トーシンイーグル、ウエルテンションらを相手に見事な差し切り。前者は川崎記念勝ち、後者は東京ダービー2着の実力馬だから、この年レースレベルが低かったわけではけっしてない。

 ☆       ☆

(1)…波乱含み。1番人気[3-3-2-2]、2番人気[1-3-2-4]、3番人気[2-1-1-6]。数字とするとまずまずだが、人気馬同士のワンツーは意外に少ない。昨年は5→3人気の決着で、馬複4680円。

(2)…地元優勢。船橋=7勝、2着3、3着7と大きくリード。ただ1〜3着独占は過去10年1度だけで、川崎=2勝、2着3、大井=2勝、2着2回と脈がある。浦和も21〜22年クレイアートビュンが連続2着。

(3)…7歳馬。4〜8歳まで好走実績があるが、中では7歳馬=3勝、2着2回、3着1回。出走頭数比を含め最もアベレージがよさそうだ。次いで4歳=3勝、2着1回。5歳、6歳もそれぞれ2勝ずつをあげている。

(4)…差しタイプ。逃げ=2、先行=6、差し=11、追込=1。例年平均ペースで流れ、好位〜中団からの差しが理想。ジョッキーでは張田騎手が、17年ジーナフォンテン、21年モエレラッキーで優勝と相性がいい。

※データ推奨馬
 ◎トーセンルーチェ…船橋所属7歳馬。昨年「金盃」「大井記念」と重賞2勝、交流GII「ダイオライト記念」も3着に健闘した。フリオーソの半弟でまだまだ成長するイメージ。鞍上・張田Jと呼吸のよさも目立っている。

☆       ☆

◎ナイキマドリード 57川島
○タマモスクワート 56見沢
▲トーセンルーチェ 56張田
△シーズザゴールド 56戸崎
△アドマイヤシャトル 56山崎誠
△スターシップ 56石崎駿
△ガンマーバースト 56森
 セレン 56御神本
 ケイアイゲンブ 56和田
 ナムラクレセント 57金子
 クリーン 56的場文

 ナイキマドリードの前進に期待した。GIIさきたま杯=千四、制覇を筆頭に、NAR最優秀短距離馬のタイトル2回。記者自身も長く短〜マイラーと考えてきたが、改めて近走のレースぶりをふり返ると新たな可能性も十分浮かぶ。道中行きたがる気性ではないこと、闘志に火がつけば終い2段加速で伸びること。そもそも重賞6勝、逃げて勝ったのは昨暮れゴールドC1戦だけで、当時も距離千五を上がり37秒6だから、単調なスピード馬とは一線を画している。

 父ワイルドラッシュ。その代表産駒トランセンド、パーソナルラッシュ、クラーベセクレタ…と並べても、今回千八百チャレンジは説得力があるだろう。試金石、同時にいい意味の正念場といえるかもしれない。

 タマモスクワートはJRA3勝、南関東転入で再び開花した[4-3-1-4]。実戦向きのセンスと機動力が持ち味で、常に完全燃焼のよさがある。昨秋JBCクラシック=川崎二千百」を地方馬最先着。イメージ以上のパワー、持久力も備えていそうだ。トーセンルーチェは前述通り重賞2勝(大井SII)、遅咲きの良血馬で、今季もう一段グレードアップが期待できる。昨秋以来3か月半の充電(放牧)明けだが、中間長めから好時計の追い切り5本。8〜9分には仕上がった。

 以下、前走報知オールスターカップ快勝で再び存在感を示したシーズザゴールド、同レースでこれと接戦したアドマイヤシャトル。ともに左回り千八はうってつけの舞台といえる。GI実績のあるセレンは、2年を超える大きなブランク。さすがに初戦は試走となるか。それなら昨年3着、鉄砲のきくスターシップ、JRA5勝、まだ活力のありそうなガンマーバースト。とりわけ後者は距離万能の自在型。実質叩き3戦目のローテーションで、追い切りも抜群に動いている。

◆川崎記念回顧
(1月30日 川崎 サラ4歳以上 定量 JpnI 2100m梢重)

◎(1)ハタノヴァンクール 2分15秒4
○(2)ワンダーアキュート 1/2
△(3)グラッツィア 1.1/2
▲(4)タカオノボル 3
 (5)クリールパッション 3
 …………………
△(6)カキツバタロイヤル
△(7)サクラロミオ

単290円  馬複140円  馬単400円  3連複200円  3連単950円

 ハタノヴァンクールが競り勝った。道中ワンダーアキュートをマークする形の3番手。4コーナー手前、ライバルより早めに動いて直線先頭、そのまま息の長い末脚で押し切った。

「左回りは初めてだし、大跳びで不器用なところがあるから、(コーナーを)勢いをつけて回ろうと思っていた。イメージ通り。いい勝ち方ができてホッとしてます」(四位洋文騎手)

 マッチレースはこうして勝つ――。前半スロー、上がりの競馬になっただけに(3F37秒2)、今日のところは同Jの作戦勝ちとしてもいい。

「デビューからずっと手応えを感じていた馬。(年初めを)好スタートが切れて本当に嬉しい」。

 同Jは昨暮れ騎乗停止で、大井・東京大賞典、いったん内田博Jに手綱を譲る(結果2着)経緯があった。ジョッキーという職業の、厳しさと冥利というもの。勝利インタヴューの弾けるような笑顔など、改めて痛感させられたことはやはりある。

 ハタノヴァンクールは、キングカメハメハ×ブライアンズタイムの牡4歳。11戦6勝、重賞は昨春大井・ジャパンダートダービーに続く2勝目となった。

「軌道に乗ってきましたね。今日はさまざまな意味でメドがついた。地方の馬場が向いていること。長めの距離が合っていること。馬の状態と適性をみながら進んでいきたい」(昆貢調教師)

 2週後のフェブラリーS回避、今春目標は6月帝王賞と明言された。最もフィーリングが合いそうな大井二千。この日の勝ちっぷり、成長度からは、現時点で最有力といえるだろう。時計は常に相手なり。歴代ダート王者のタイプとすれば、ヴァーミリアンに少し似ている。

 2着ワンダーアキュート。今日1/2馬身差は前述通り作戦負けだが、現実に持ちタイム(JBC=2分12秒5)と大きく遠く、記者自身はピークになかったと判断する。馬券上は難しい馬。絶対能力は高いものの、いざ万全(ローテーションなど)と思えたときに案外モロい。3着グラッツィアは正攻法。逃げたタカオノボルが突然失速(物見とのこと)、ごく自然流に先頭に立ったものの、上位2頭と力量差は歴然だった。ただパドックなど、いかにもハチ切れるような好馬体。1つ経験を経て可能性(地方G好走)は十分浮かぶ。同様にタカオノボルも前半の反応など地方適性はうかがえた。中距離型で次走が改めて勝負になる。地方勢はカキツバタロイヤル、サクラロミ6、7着。フリオーソのいない冬――は正直深刻としか言葉がなく、改めてため息が出てしまった。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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