スマートフォン版へ

金盃展望&ユングフラウ賞回顧

  • 2013年02月19日(火) 18時00分
◆金盃展望
(2月20日 大井 サラ4歳以上 別定 南関東SIII 2000m)

 金盃は、今年第57回目を迎えるTCK伝統重賞。おおむね2月・中〜下旬に施行され、南関東番である記者などには“春を告げる大井金盃”というキャッチコピーがしっくりくる。梅の開花、水ぬるむころ――。しばし冬眠していた実力馬が充電を経て始動する、なにかワクワクするような重賞だった。

 歴代優勝馬を並べると、ロッキータイガー、カウンテスアップ、チャンピオンスター、コンサートボーイ、近くはボンネビルレコード。すべてGI級の実力派で、こう書き出すと、またぞろ“昔はよかった”風の話になってしまう。まあしかし当時と今、ダート競馬の価値と重みが大きく変わった。だからここ数年の金盃は、逆に成長株、上昇馬が、本物かどうか試される、そんな位置付けになったとも思う。

 もっともかつての金盃は、昭和31年〜平成18年まで“ハンデ戦”で行なわれていた事実がある。ファイルをめくり改めて思い出したから、昔話を追記しておく。昭和52年カネオオエという馬。記者、日刊競馬入社翌春のことで印象深い。

 同馬はJRA6勝(皐月賞6着・日本ダービー7着)で南関東転入。以後、佐々木竹見騎手騎乗で4勝した。そのうち1つが金盃で、当時何と63キロを背負っている。二千=2分03秒0、完璧な先行抜け出し。現在レコードはスマートファルコン=2分00秒4だが、それなら昨暮れ東京大賞典、ローマンレジェンド=05秒9との比較してどんな評価が当たるのだろう。父バーバーは、当時テスコボーイと遜色ない種牡馬実績をあげたプリンスリーギフト直仔。前々を進み、勝負強い産駒が多かったと記憶する。申しわけない。昔話はやはりついつい長くなる。

(1)…波乱含み。1番人気[4-1-1-4]、2番人気[3-1-0-6]、3番人気[2-2-0-6]。ハンデ→別定変更(19年)後、比較的堅い傾向だが、それでも昨年は4→10番人気の決着で馬単=31590円。油断できない。

(2)…大井VS船橋。大井=5勝、2着5回、船橋=5勝、2着5回と、まったくのがっぷり四つ。3着も大井=6回、船橋=3回で、22年浦和クレイアートビュン3着が唯一例外。一昨年は大井、昨年は船橋のワンツーで決着した。

(3)…5〜7歳馬。勝利数トップは6歳=3勝だが、2着は0回。5歳=2勝、2着4回、7歳=2勝、2着2回も、実質上互角だろう。4歳馬は18年メイプルエイト1勝だけ(2着2)。牝馬は17年アウスレーゼが最高。

(4)…末脚勝負。逃げ=1、先行=2、差し=13、追込み=4。アジュディミツオー、フリオーソ級の出走がなかったにせよ、極端な数字といえる。ジョッキーでは過去9度騎乗、4勝をあげた張田騎手が大きく目立つ。

※データ推奨馬
 ◎トーセンルーチェ…昨年覇者。船橋所属7歳馬で、大井二千向きのパワフルな末脚が光っている。呼吸のぴったり合う張田騎手。リピーターが活躍する傾向があり、15〜16年コアレスハンター11着、20〜21年ルースリンドが12着を記録している。

 ☆       ☆

◎プーラヴィーダ 56吉原
○トーセンルーチェ 57張田
▲ツルオカオウジ 56的場文
△スターシップ 56石崎駿
△トーセンアドミラル 56戸崎
△フォーティファイド 56御神本
△サクラロミオ 56川島
 セレン 56酒井
 クリーン 56森
 ラインジュエル 54有年

 プーラヴィーダの本格化に期待する。昨春の兵庫CS3着、東京ダービー2着の4歳馬。同世代のライバル、プレティオラス、アートサハラが伸び悩む中、同馬は昨秋カムバックから順風満帆の3連勝。とりわけ初タイトルとなった前走、勝島王冠は直線GOサインと同時にものの見事な差し切りで、3歳時のどこかジリっぽいイメージを完全に払拭した。さらに上積みが期待できるフィガロ×アフリートの血統背景。道中スローを自然流に折り合うあたりも中〜長距離馬の特性といえるだろう。鞍上・吉原騎手とのコンビは東京ダービーで十分な結果が出ている。

 トーセンルーチェ有力はデータ欄で記した通り。フリオーソの半弟なら7歳馬でもまだ成長力がイメージでき、今回叩き2戦目、例年春先に調子を上げる傾向もありそうだ。先行トーセンアドミラル、ツルオカオウジは、前者の逃げ、それを後者が3〜4角から捲る形か。2頭とも気性面でやや難しく、道中長く競り合ってしまうと共倒れの危険も出る。

 それなら前走、報知グランプリC快勝で地力健在を示したスターシップ、転入後8戦、一貫手堅い末脚をみせるフォーティファイドも互角の評価。もう1頭、大穴はサクラロミオ。JRA4勝、みやこS3着から能力自体は見劣らず、今回右回りでどう変わるか。

◆ユングフラウ賞回顧
(2月13日 浦和 サラ3歳牝馬 別定 南関東SIII 1400m梢重)

◎(1)カイカヨソウ 1分30秒4
△(2)イチリュウ 1.1/2
○(3)ビーディフォース 2.1/2
 (4)オキナワレッド 2
 (5)デイフォーユー クビ
 …………………
△(6)シーギリヤガール
▲(11)パパパノチョイナ
△(12)マダムベガ

 単120円  馬複490円  馬単680円  3連複1230円  3連単3550円

 カイカヨソウが力通り完勝した。左回り初経験だったこと、本質的に千四は忙しいこと。道中の行き脚、手応えなどけっして楽にもみえなかったが、いざ闘志に火がついてしまえば爆発力が大きく違う。直線あと1ハロン、一気に突き抜け最後はセーブする余裕があった。

「追ってから重心がグッと沈む。描いていた通りの強い馬。道中物見をしたり周りを気にしたりで、今日は本気で走っていない」(今野騎手)

 いい意味で用心深さ(慎重さ)があり、無駄な力を使わない、そんなタイプともいえるだろう。千四1分30秒4、上がり3F40秒6。数字上は平凡だが(昨年アスカリーブル=30秒2)、“本気”で走れば、時計1つ(1秒)くらい楽々短縮のイメージが浮かぶ。

 カイカヨソウはこれで通算6戦5勝、道営時を通じ重賞3勝。昨秋GIII、北海道2歳優駿3着など牝馬離れしたスケールがもとよりあった。今回左回りクリア、忙しい千四に少し苦しみ、しかし結局堂々と勝ち切ったあたり収穫が相当大きい。一昨年クラーベセクレタ、昨年アスカリーブル、女傑級2頭と較べても、ほぼ互角の能力と競馬センス。道営最終戦、減っていた馬体(新馬戦より26キロ減)を立て直した川島正行厩舎スタッフもさすがといえる。今後はレース前コメント通り、3月21日浦和桜花賞、その感触しだいで羽田盃→東京ダービーのステップと明言された。何とも夢のふくらむ春になった。

 2着イチリュウは道中中団よりやや後ろ。厳しい位置から直線馬群を割って伸びてきた。勝ち馬を凌ぐ上がり40秒2。一戦ごとの充実、混戦向きのガッツが大きく光る。3着ビーディフォースも、3〜4コーナー外々を捲ってあわやのシーン。父クロフネらしいセンスと勝負根性を同時に示した。いずれにせよ今回2〜3着馬は本番・桜花賞、優先出走権を獲得した点で意味が大きい。

 シーギリヤガールは中間転厩でふっくらとした好馬体。自然流の先行策で終い失速は、本質短距離向き、芝向きということかもしれない。パパパノチョイナは中団からジリ貧。能力差以前に左回りに疑問を残した。デイフォーユーはこの日も馬体が戻らなかった(1キロ減)。ごく客観的にみて充電が必要だろう。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング