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東京スプリング盃展望&エンプレス杯回顧

  • 2013年03月05日(火) 18時00分
 ◆東京スプリング盃展望
 (3月7日 大井 サラ4歳以上 別定 南関東SIII 1400m)

「東京スプリング盃」は平成22年、準重賞「スプリングカップ」から南関東SIII昇格。同時に新設「東京スプリント=JpnIII」のトライアルとして再スタートした(1着馬に優先出走権)。ただこのレース1400m→本番1200m、大井コースの形態上、直接には結びつかない印象も否めず、記者個人的には本番の方を“1400m”に変えてほしい希望がある。1200mは純粋な速さの勝負、対して1400mはパワー、勝負強さも要求される微妙な戦い。そもそも毎年秋には「東京盃=JpnII」が1200mで行なわれる。同舞台、同条件の統一グレードが、なぜ1年に2度必要なのか。「帝王賞」→「東京大賞典」(ともに2000m)も含め、一つ変革の意見があっていいと思う。

 ともあれ前3年「スプリング盃」はフジノウェーブ、文字通り一人舞台で終始した。同馬は平成19年、5歳時に「JBCスプリント」で金星獲得、しかしその後、純粋な短距離戦では良積があがっていない。元よりゲート難があること、出張戦(とりわけ左回り)では気性難が出ること。それでもこのレースに関すると、3連勝ともズバ抜けた強さを示し、一昨年、昨年、連続1分24秒台の時計も、さして軽くない馬場状態だけに胸が張れる。同一重賞3連覇の記録。グレードの高い(とされる)順にいえば、アドマイヤドン、ヴァーミリアン(JBCクラシック)、ブルーコンコルド(南部杯)、ラヴェリータ(スパーキングLC)になるだろう。2度あることは3度ある…という。とすれば、3度あることは4度あるか。いずれにせよフジノウェーブは今季11歳。今回結果はともかく、それだけの大河的ドラマを作ってきたことに、まず大きな拍手を送っておきたい。

       ☆       ☆

 ◎ミヤサンキューティ  57今野
 ○フジノウェーブ    59御神本
 ▲トーセンアレス    59張田
 △スマートインパルス  59酒井
 △クリスタルボーイ   58吉原
 △ケイアイゲンブ    58和田
 △イーグルショウ    59赤岡
  ピエールタイガー   59真島
  ヤサカファイン    59石崎駿
  ディープハント    54川島
  リアライズノユメ   56酒井

 ミヤサンキューティは牝馬ながら、現南関東スピード路線、その王道を突き進むイメージがある。昨年暮れ「シンデレラマイル」、明けて1月「ウインタースプリント」と2連勝。いずれもハイペースを自ら動き、一頭別次元の強さをみせた。父クロフネ、芦毛の巨漢(540キロ台)。ユキチャン、ホワイトメロディー、ブラボーデイジーなど、このタイプは抜群の地方(南関東)ダート適性があり、キューティの場合、前記3頭と較べても、切れ味、センスで上回る。大井1400m自体は初体験だが、のびのび走れる外コースだけに減点なし。充実度と勢いを素直に買った。

 フジノウェーブは前述通り、ある意味特別な馬、奇跡の馬。緩やかな下降線は否めないにせよ、ベスト条件に乗り込み十分で臨む以上、同馬らしいパフォーマンスは期待できる。トーセンアレスは今回、やや忙しい1400mへの対応が鍵だろう。JRA5勝、南関東転入2勝(重賞1勝)だが、前走マイル戦(川崎)など正直苦しい勝ち方(マズルブラストに頭差)で、父アドマイヤドンの背景からも中〜長距離向きははっきりしている。総合能力と好調さでどう補うか。ただ大井コース自体は、3歳時「JDダービー」5着も1着馬とは小差(0秒2差)だから悪くない。

 以下、△をどこにつけるか少し迷った。実績上位スマートインパルス、ピエールタイガー、ヤサカファインは、いずれも昨秋以来充電明けで今回8分。最終的に混戦向きのガッツとしぶとさ、さらに“意外性”でSインパルスをとったが、この比較は微妙かつ難しい。JRA5勝、前走「ウインタースプリント」3着クリスタルボーイは、1200m→1400m、やや落差のある成績で評価が分かれる。むしろ薄目なら、1400mベストが明確なケイアイゲンブ、イーグルショウか。とりわけ後者はこのレース、現実に前2年2、3着と好走した。鞍上・赤岡J起用にも脈を感じる。

 ◆エンプレス杯回顧
 (2月27日 川崎 サラ4歳以上 別定 JpnII 2100m梢重)

 ◎(1)ミラクルレジェンド   2分15秒9
 △(2)エミーズパラダイス    11/2
 ▲(3)ダートムーア        5
 △(4)プレシャスジェムズ     1
 △(5)マニエリスム        5
 ………………
  (6)ママキジャ
 ○(7)アドマイヤインディ

  単110円  馬複390円  馬単530円  3連複470円  3連単1340円

 ミラクルレジェンドが完勝した。スタート直後の行き脚こそやや鈍くみえたが、向正面から外々を回ってポジションを上げ、4コーナーでは逃げるエミーズパラダイスを射程圏。直線あと1ハロン、それこそ一瞬のうちに差し切った。磨き込まれた瞬発力と競馬センス。この日“ラストラン”を思えば、最も彼女らしく、そして集大成のようなレースだったかもしれない。「馬のリズムを崩さないように運びました。直線はこれが最後なんだ…そう噛みしめながら乗れる余裕があった。凄い牝馬。(引退は)残念だけれど、これからいい仔を出してほしい」(岩田康成騎手)。相手のレベル云々はひとまず置いて、何とも見事な“有終の美”を飾ってみせた。

 ミラクルレジェンドの戦歴をおさらいする。通算12勝、ダート牝馬グレード[7-1-2-0]。牡馬GI路線をも睨みつつ(例えばJCダート・過去2年6、6着)、勝つべきところをけっして落とさないあたりが彼女の底力というべきだろう。交流グレード発足後の歴代女傑。ホクトベガはともかく、レマーズガール、グラッブユアハート級とは、はっきり一線を画している。印象、個性は違うものの、単に絶対能力というならファストフレンド(H.11〜12年連覇・帝王賞、東京大賞典勝ち馬)に匹敵する。「人馬ともパーフェクト。(自分にとって)いろいろ夢を与えてくれて本当に頭が下がる。今後は母として期待してます」(藤原英昭調教師)。社台F・吉田照哉スタッフのルールは“牝馬の競走生活は5歳まで”。確かに残念だが、こうした決断がなければ、日本の競馬は、ゆくゆく行き詰ってくるともやはり思う。

 エミーズパラダイス2着。好枠からマイペースに持ち込み、一瞬あわやのシーンを作った。もっとも昨春牡馬2冠2、3着、さらにロジータ記念制覇からは実力通りの評価ができる。大きく揺れ動く成績の理由が、体調なのか展開なのか。ひとまず戸崎J、南関東所属ラストランという観点からは完全燃焼に拍手したい。3着ダートムーア、4着プレシャスジェムズはそこから大きく離された。2頭とも決定打のないタイプ。今日の場合「TCK女王盃」組、メーデイア、レッドクラウディア不在でこの結果となると、正直限界の感は否めない。妙味ありとしたアドマイヤインディは、結果論ながらパドックから活気がなかった。高知所属。昨暮れ船橋「クイーン賞」3着、明けて大井「TCK女王盃」4着からはもう少し走っていいが、短期間の輸送競馬、そこで力走の反動が出たものか。好位追走から終い失速のママキジャは一つ経験の段階だろう。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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