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羽田盃、東京プリンセス賞展望&クラウンC回顧

  • 2013年04月23日(火) 18時00分
◆羽田盃展望
(4月24日 大井 サラ3歳 定量56キロ 南関東SI 1800m)

 南関東クラシック第1弾「羽田盃」。“第57回”だから、もちろん重い歴史だが、それとは別に記者個人的には何やらホッとしたような気分がある。羽田盃(1800m)→東京ダービー(2000m)→JDダービー(交流2000m)、距離と条件が確定して、今年12年目を迎えたこと。これまで“南関東3冠”は、レース順が入れ替わったり、距離が動いたり(平成11〜13年は羽田盃を1600mで実施)、少し昔は「東京王冠賞」を加えた“4冠”であったり、たとえばビギナーの方に尋ねられたときなど、どうにも説明に苦労した。3冠馬、4冠馬(トーシンブリザード)、羽田盃ウィナーから素晴らしい優駿は出ているものの、その価値を新たなファンに伝えきれない。当欄で毎回記す「過去データ」も、相当量の積み重ねがあってこそ、それなりの説得力が生まれてくる。いずれにせよ現3冠、ほぼ理想形に固まっただけに、しばらく不動としてほしい。競馬の魅力、愉しさとは、やはり“変わらない”ことが一つ前提であり絶対条件。改めてそう思う。

 (1)…おおむね順当。1人気[4-2-1-3]、2人気[2-4-1-3]。昨年こそ波乱(8→3人気)だが、過去10年、1→2人気の馬複ワンツーが3度ある。近年典型的な穴馬の勝利といえば、20年ニックバニヤン(単勝109倍)が目立つ程度。

 (2)…船橋優勢。船橋=6勝、2着4回、3着2回と大きくリード。次いで、大井=3勝、2着4回、3着3回。川崎は1勝、2着2回、3着5回ともうひと息で、浦和は過去10年馬券の対象になっていない。連対20頭中10頭が、道営、JRAからの転入馬。

 (3)…京浜盃注目。京浜盃勝ち馬=1、不、1、7、1、2、1、不、1、9着。登竜門らしく信頼度が高い。同2着=8、6、7、2、2、5、2、1、6、6着も一応の合格点か。優勝馬の平均キャリア=7.2戦、同2着=8.6戦。重賞初挑戦の優勝は12年イエローパワーの1例だけ。

 (4)…好位差し。逃げ=3、先行=5、差し=10、追込=2。好〜中位からの差しが主流で、単調な逃げ馬、置かれる追い込み馬は、一枚抜けた能力を要求される。ジョッキーでは的場文騎手6勝だが今年は騎乗馬がない。張田、山田信、石崎駿Jがそれぞれ1勝。

 ※データ推奨馬
 ◎ジェネラルグラント…船橋所属、このレース圧倒的に強い京浜盃優勝馬。当時3馬身差だから、ごく普通に“主役確定”の見方ができる。石崎駿Jは19年トップサバトンで優勝。流れに応じ緩急自在のレースぶり。データ面ではいっさい死角が見当たらない。

       ☆       ☆
 
 ◎ソルテ       真島
 ○ジェネラルグラント 石崎駿
 ▲アウトジェネラル  御神本
 △インサイドザパーク 張田
 △オーネットエース  坂井
 △ナリチュウドラゴン 酒井
 △オグリタイム    吉原
  ブラックワード   柏木
  ハブアストロール  本橋
  ホクトマックィーン 山田信

 改めてソルテを狙った。前走「京浜盃」4着は、マークしたジェネラルグラントに突き放され、最後アウトジェネラル、インサイドザパークにも差される厳しい結果。ただし当時ひと息入れて13キロ増、勝ちを意識して動いたレースぶりも含め、収穫は十分感じる。前々走「ニューイヤーカップ」は自然流のまくりで9馬身差。その2着がアメイジア(先週クラウンC圧勝)だから説得力があるだろう。そのニューイヤーC圧勝後、寺田調教師は同馬の特長を「心臓がいいタイプ」と表現した。距離延長はもちろんプラス。今回真島J起用にも、新境地開拓の可能性が浮かんでくる。

 ジェネラルグラントは、前述通りごく普通にイメージして堅い中心。対アウトジェネラルを含め、道営戦歴からはズバ抜けた印象もなかったが、さすが社台系の良血で、転入後の充実ぶりが素晴らしい。今回すっきり勝てるなら完全降伏。あとは交流「JDダービー」レベルの期待になるだろう。アウトジェネラルは新コンビ・御神本Jが京浜盃の3馬身差をどう詰めるか。追ってのパンチ力はジェネラル以上のイメージがあり、父アドマイヤドンの背景も大井GIで大きな魅力だ。2歳時「鎌倉記念」「平和賞」を連覇したインサイドザパークも切れ者だが、こちらはゲート難を含め依然不器用さが残っている。以下、大井千八2勝オーネットエースが思い切った捲りを打って大駆け。オグリタイム、ナリチュウドラゴンも末脚は確かだが、スピード面で主力4頭とかなり差がありそうだ。

◆東京プリンセス賞展望
(4月24日 大井 サラ3歳牝馬 定量54キロ 南関東SI 1800m)

 「東京プリンセス賞」は、南関東牝馬クラシック第2関門。創設当初(昭和62年)は施行順などまちまちの時代もあったが、平成15年から、「桜花賞=浦和1600m」→「東京プリンセス賞=大井1800m」→「関東オークス=川崎2100m」と完全に確定。以後クラシックにふさわしい整然とした形で推移している。ただし言わずもがな、この3冠は難しい。最終関門・関東オークスがJRA交流であること。すべて大井を舞台とする牡馬に対し、こちらは3競馬場を巡る戦いになること。唯一達成した18年チャームアスリープでさえ、楽勝のケースはいっさいなく、とりわけ「プリンセス」は不得手の右回りと道悪に苦しんだ(首差辛勝)。桜花賞快勝、今年ただ1頭“3冠”の資格を得たイチリュウに、残る2冠、はたしてどんな運命が待っているか。もっとも昨年アスカリーブルは返す返すも惜しかった。桜花賞TR「ユングフラウ賞」を勝ったものの、同厩馬との兼ね合いで本番回避。以後「東京プリンセス賞」→「関東オークス」をズバ抜けた強さで連覇した。ごく普通にイメージして偉業達成。まあしかし競馬とは、しばしばそんな皮肉と不運がある。

 (1)…波乱含み。1人気[3-3-0-4]、2人気[1-2-1-6]、3人気[3-0-1-6]。数字上はまずまずだが、1→2人気のワンツー(馬複)は過去10年1例しかない。順当にみえる昨年も3着に伏兵レディーソルジャーが食い込み、3連単は14万円超の馬券になった。
 
 (2)…船橋VS川崎。船橋=6勝、2着2回、3着3回、川崎=4勝、2着2回、3着3回。地元大井は案外不振で、2着6回、3着4回はあるものの、肝心の優勝馬が出てこない。一昨年リアンローズ、昨年エンジェルツイートとも、1番人気で6、2着と敗れている。

 (3)…桜花賞組。連対18頭(23年中止)中、13頭が桜花賞出走。ただ連覇はチャームアスリープ、ネフェルメモリー、名牝級2頭だけで、代わりに3着からの巻き返しが17年テンセイフジ、22年トーセンウィッチと2例ある。他路線から食い込んだ5頭はすべて道営出身。

 (4)…捲り優勢。逃げ=3、先行=2、差し=9、追込=6。近年単調な先行馬は厳しく、3〜4コーナーから捲りあげる戦法が主流になった(昨年アスカリーブルなど典型)。ただ伝統的に内枠が強い傾向で、過去26年「1枠=7勝、2着3」は見逃せない。

 ※…データ推奨馬
 ◎カイカヨソウ…道営出身、現船橋所属、このレース過去3勝している川島正行厩舎。桜花賞1番人気で3着だが、左回りはスムーズさを欠く印象がある。鞍上・今野騎手にとっても、3勝、2着2ときわめて相性がいいレース。父はチャームアスリープと同じティンバーカントリー。行き脚がついたところで一気に捲る。

       ☆       ☆

 ◎イチリュウ     的場文
 ○カイカヨソウ     今野
 ▲ローズベビークリス  繁田
 △アステールネオ   石崎隆
 △ビーディフォース    森
 △パパパノチョイナ   和田
 △ケンブリッジナイス  張田
  デイジーギャル    真島
  サブノハゴロモ    坂井
  ハシルセンセイ   佐藤博
  ベルフェスタ    石崎駿

 イチリュウの2冠とみた。先行有利の馬場、絶好の1番枠、確かに運も味方した桜花賞だが、スタートからゴール、まったく危なげない逃げ切りで最後2.1/2馬身差。1600m=1分41秒5自体、良馬場に限ると過去20年に遡りNo.2(21年ネフェルメモリー=41秒0)だから、大きく胸が張れるだろう。父キングヘイローは、今季メーデイアの活躍で地方G向きを証明。イチリュウの場合、母系もまさしく一流で(弟にブンブイチドウ)、牡馬並みのパワフルな馬体(500キロ超)にも魅力がある。今回15番枠、一見“試練”の状況だが、逆にそれで人気が下がれば馬券的な妙味も増す。本来中〜長距離型の自在型と判断したい。

 カイカヨソウは、前述通りデータ面などあらゆる項目で最有力。ただ現実に桜花賞、イチリュウに完敗の事実は重く、記者“印象点”を素直にとればひと息食指が動かない。転入当初からやや寂しく映る馬体。大井右回りはベターとしても、今回一変があるかどうか。逆にローズベビークリスはデビュー2連勝、前2走意識的に1800mを使い(2、5着)、ここへ布石を敷いてきた。ロジータ→ヤマノボンディーヌ(JRA2勝)→同馬…という血統背景。南関3歳牝馬同士なら善戦以上を期待する。桜花賞2着アステールネオは、当時隙のない競馬で能力いっぱい、同4着ケンブリッジナイスも、道中スムーズなわりに伸び切れず昇り目はイメージしづらい。それならビーディフォース、パパパノチョイナが、道中うまくタメて可能性。2頭とも瞬発力は光っ
ている。

◆クラウンC回顧
(4月11日 川崎 サラ3歳 別定 南関東SIII 1600m良)

 ○(1)アメイジア    1分42秒8
 △(2)エスケイロード    4
 △(3)キタサンオーゴン   11/2
  (4)ファイアーベル    3/4
 △(5)キタサンオーゴン   3/4
………………
  (6)ドリームキングダム
  (7)ヴィクトリータイム
 ◎(8)リコーハラマ
 △(11)スマートパンドラ
 ▲(13)オベロンホワイト

  単990円  馬複148060円  馬単32580円  3連複32580円  3連単215380


 アメイジアが圧勝した。3〜4コーナー、一歩先に抜け出したリコーハラマを外からねじ伏せ直線先頭。ゴールでは決定的な4馬身差をつけて独走した。「速い流れ(1000m通過61秒7)で道中は厳しかったが、勝負どころから自らハミをとって動いてくれた。パワーがある。今日の感触からは距離が延びても大丈夫」(吉原騎手)。同騎手とは初コンビ、人馬とも南関東重賞初制覇。さまざまな意味でメモリアル、感慨深いレースになったといえるだろう。1600m=1分42秒8は、同開催古馬A3〜B1レベル。勝ちっぷり、最後の余裕を含めると水準以上に達している。

 アメイジアはイーグルカフェ×ジェイドロバリー、本格派のダート血統。540キロ超の巨漢で、フットワークも迫力に満ちている。昨秋平和賞、明けてニューイヤーCと重賞を2、2着。マイラーか、中距離型か、現時点では評価に迷うが、ひとまず能力自体、クラシックレベルと判断したい。「元より期待馬。結果が出せてホッとしている。(優先出走権を得た)東京ダービーも視野に入れるが、馬の状態を見ながらオーナーサイドと協議して…」(坂本昇調教師)。確かにアメイジア自身、今回1つタイトルはとったものの、すべてに未知数、無色透明…のような部分がある。ただ鞍上が感じた通り、おそらく本質パワー型。ダービー挑戦は、やはり当然、必然であるとも思う。

 2着争い。あと100m、キタサンオーゴンがいったん2番手に押し上げ、しかしその外からエスケイロードが強襲した。両馬とも追っての味が魅力だが、ともにゲート難を抱え展開しだいの面がある。今回ハイペースを考えると、まだ安定性はイメージできない。逆に実績ひと息のファイヤーベル、ヴェリイブライトは次へつながる好走だった。とりわけ後者はハイセイコー記念2着、今回川崎初コース。父メジロベイリー譲りのしぶとさを感じる。記者◎リコーハラマは結果的に力不足。ハイペースを強気に乗った鞍上の判断は責められず、今後この経験をどう生かすか。スマートパンドラはアジュディミツオーの半妹で注目は当然だが、3か月ぶり初コース、1番人気は正直重い。パドックなどゆったりバランスのいい体型とみえたが、結果的に馬が若いということだろう。▲オベロンホワイトは好位追走から直線失速。血統も含めスプリンターなのかもしれない。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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