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「このままじゃダメだと思った」松山騎手ご指名対談〜藤岡佑介騎手編(4)

  • 2013年04月24日(水) 18時00分
これまで騎手会の細かい仕事なども、自身が中心になってこなしてきた佑介騎手。そんな佑介騎手に、後輩たちは心身ともに頼りっきりだそうです。しかし、佑介騎手は約1年間フランスへ。その決断の裏にあった葛藤や、フランス遠征の目的など、松山騎手が佑介騎手の“今”に迫ります!

■あえて、一番“受け入れてくれなさそうな”フランスへ

──佑介さんは、騎手会の細かい仕事なども中心になってこなしていらっしゃいますよね。みなさん、そんな佑介さんに頼りっきりだとか。

松山 そうなんですよ。競馬のことはもちろん、競馬以外のことでも、なんでもかんでも佑介さんに聞いてしまうんです。すべてのことに正解を出してくださるから、佑介さんに言われた通りにやれば間違いはない。すごく頼りにしてます!

佑介 騎手会としては、後輩が育ってくれないと困るんだよ(笑)。

松山 はい。わかってるんですけど…。佑介さんより上の先輩にお聞きしても、みなさん「ああ、佑介に聞いといて」って(笑)。

佑介さんに頼ってしまいます

佑介さんに頼ってしまいます

──浜中くんも、つらいことがあると佑介さんに慰めてもらうって言ってましたよ。

佑介 僕の仕事って一体…(苦笑)。でも、弘平ちゃんはなんでも積極的に「やりますよ」って動いてくれるから、僕も助かってるよ。しばらくは弘平ちゃんが中心になって頑張って。

松山 僕なんて無理ですよ! 

佑介 大丈夫! 何とかなる。今回、長期間、日本を留守にすることで、一度すべてを放棄することにしたから。騎手会の仕事は細々とあるけど、一度やってみてよ。ジョッキーたちからは何も言われないけど、騎手会の窓口になってくれていたJRAの職員さんに、「え〜、いなくなっちゃうんですかぁ…」って、すごく不安げな声を出された(笑)。

──そんな佑介さんも、今度ばかりは自分のためだけにフランスに行くことを決断されたんですものね。きっかけは何だったんですか?

佑介 気持ちが固まったのは、去年の秋ですね。オールザットジャズにすごく手応えを感じていたんですけど、エリザベス女王杯の直前に乗り替わりになってしまって。あのあたりの時期です。それまでにも海外に行きたい気持ちはあったんですけど、なかなか踏ん切りがつかなくて。でも、ちょうど去年の秋に「このままじゃダメだ」って思うような出来事が立て続けにあったんです。

松山 どうしてフランスを選んだんですか?

佑介 環境的に、一番厳しいだろうなと思ったから。一番受け入れてくれない感じがするでしょ。

松山 あえて厳しいところに…ということですか?

佑介 うん。あと、僕はルメールがすごく好きで、彼がフランスでどういう競馬をしているのかっていうのも、すごく興味があった。今後のキャリアのことを考えても、そういう環境のなかでもう一度、馬について勉強したいなと思ってね。

松山 さきほど、「このままじゃダメだと思った」っておっしゃってましたけど、具体的に、どんなところが自分に足りないと思ったんですか?

佑介 細かい技術は少しずつ上がってきてるとは思うんだけど、それをいい状態で発揮するための精神的な強さが足りないなって。実際、フランスに行くことを決めてからは、気持ちにブレがないから、自分の競馬が良くなってる自覚がある。

──決断をした時点で、それまでとは気持ちが違いますよね。

佑介 そうかもしれません。今は、競馬を観る側の目が肥えてきているので、たとえフランスで勝てなくても、そこでいい競馬をしていれば、帰ってきてからも絶対に声をかけてくれる人がいるだろうなって感じているので。少し前までは、海外に行ったはいいけど、帰ってきてからまったく乗せてもらえなかったらどうしよう…とか思ってたんですけどね。

松山 僕も海外には興味はありますけど、帰ってきたとき、まさに“誰も声をかけてくれいんじゃないか…”っていう不安が大きいです。日本で自分という存在を固められてから、あとは佑介さんくらいコンスタントに成績を挙げられるようになったら、本気で行こうっていう気持ちになるのかなって思います。でも今回、佑介さんが長期で行くことで、僕ら下の世代も行きやすくなるんじゃないかなぁっていう気はしています。

佑介 うん、そうなればいいなって思ってるよ。これで僕が何も変わらなければあとにも続かないだろうけど、帰ってきてから少しでも変わったところを見せられれば、行ってみようかなっていう後輩も出てくるんじゃないかなって。僕の場合、フランスに行って何がしたいとかではなく、帰ってきてから成績を出すことが目的だからね。

佑介「このままじゃダメだと思った」

佑介「このままじゃダメだと思った」

──具体的に、こう変わりたいという理想のジョッキー像はありますか?

佑介 一番の理想は、「この馬、走ると思うんだけど、どうしたらいい? ちょっと乗ってみてよ」って言われて、実際に跨って馬の特徴をパッとつかんで、バチッと結果を出せるジョッキーになりたいです。そのために、この馬はこうすればもっと良くなるっていう引き出しを増やしたいんです。何かその馬のためになったという結果を残したいし、それを積み重ねていけば、自然と大きいところに行ける馬とも巡り合えると思うから。それで、最終的には四位さんみたいになりたい。「その馬、俺に任せてみろよ。バチッと決めてやるから」って自信を持って言えて、実際に高いパフォーマンスを引き出すことができる、そんなジョッキーになりたいですね。

松山 なるほど。なんか深いですねぇ。ところで佑介さん、本当にひとりで行くんですか?

佑介 そうだよ。とりあえず今考えてるのは、空港に着いて、そこからどうやって移動すればいいんだろ?って(笑)。

松山 え〜!! 通訳さんとかいないんですか?

佑介 うん、いない。言葉は今、勉強中です!

松山 あの〜、競馬以前に生活していけるんですか? めっちゃ不安じゃないですか?

佑介 ねぇ(笑)。ま、大丈夫でしょ!

【次回のキシュトーーク! は?】
 藤岡佑介騎手を迎えてのご指名対談もいよいよ最終回。「精神的な弱さが今後の課題」という松山騎手に、はたして佑介騎手は最後にどんなアドバイスを送るのか!? ともに高い志を持って騎手業にまい進するふたりの熱いトークをお楽しみに!

元祖「キシュトーーク」のレギュラー陣、国分恭介、国分優作、松山弘平、川須栄彦、高倉稜を中心に、栗東・美浦・地方からも幅広く、これからの競馬界を担うU25の若手ジョッキーたちが登場します!

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