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かしわ記念展望&しらさぎ賞回顧

  • 2013年05月05日(日) 18時00分
◆かしわ記念
(5月6日 船橋 サラ4歳以上 定量57キロ JpnI 1600メートル)

「かしわ記念」は平成8年交流G移行。当初GIIIからのスタートだったが、6年後GII昇格、さらに3年後GIとして定着した。過去17年間、JRA=10勝、南関東=7勝は、他交流Gと比較すれば誇れる歴史。ただ改めてその中身を検証すると、今後“伝統”を継承、持続できるかは、正直難しい印象もある。例えばGI昇格後、南関東サイドの(船橋)勝者は、アジュディミツオー、フリオーソ、言わずもがな怪物級で、そのレベルの馬が現われない限りJRA攻勢に抵抗できない。現在のダート界。JRA勢はとにかく層が厚いのである。

 そして今年。JRA出走5頭すべてGI級、何とも手強いメンバーが顔をそろえた。以前も書いたことだが、このケース、地方競馬担当の記者としては、戸惑い、無力感…が本音ではある。どうひいきしても劣勢がはっきりしている地方陣営。その状況で、エスポワールシチー、ローマンレジェンド、ホッコータルマエ、さらにテスタマッタ、セイクリムズンを、どう較べ、どう序列をつけたらいいものか。だから今回予想は、各馬の船橋1600m適性、勝負度合をイメージした評価にすぎず、記者自身、頭の中があちらこちらとさまよっている。もっともこういうケース、経験的にふり返れば好結果が出ることもときおりあった(リキまないためか)。ともあれ今回は地方びいきを封印する。上位拮抗の中、どれがマイル王を勝ちとるかを考えた。

 (1)…上位拮抗。1人気[3-3-1-3]、2人気[3-1-3-3]、3人気[2-1-3-4]。典型的な上位拮抗で、ここ7年は連続して1〜2番人気馬が優勝している。中でも“3連複馬券”が例年堅い。

 (2)…JRA対船橋。JRA=7勝、2着5、3着9、船橋=3勝、2着5、3着1。過去10年に遡り、南関東他3場、他地区所属馬は馬券の対象になっていない。ただJRA馬のワンツースリーは2度だけ。

 (3)…熟年層。4〜8歳まで好走例があるが、6歳=3勝、2着4、3着3がアベレージを含め一歩リード。以下、7歳=3勝、2着2、3着2、5歳=2勝、2着1。4歳も2勝しており悪くない。

 (4)…快速型。逃げ=5、先行=4、差し=10、追込=1。道中ハイペース、時計勝負が大半で、先行馬には傑出した速さ、差し馬には切れ味が要求される。過去10年連対20頭中、11頭がフェブラリーS組。

 ※データ推奨馬
 ◎エスポワールシチー…すべてに円熟の8歳馬。このレースすでに3勝、敗れた一昨年は致命的な出遅れがあった。21年、1600m=1分35秒2はかしわ記念史上No.2。前走フェブラリーSを正攻法(2番手追走)で堂々たる2着。波に乗る浜中俊騎手。

       ☆       ☆

 ◎セイクリムズン     内田博
 ○エスポワールシチー   浜中俊
 ▲ホッコータルマエ    幸
 △ローマンレジェンド   岩田
 △テスタマッタ      戸崎
 △ピエールタイガー    真島
 △ナイキマドリード    川島正
  トーセンアドミラル   御神本

 きわめてハイレベルの上位拮抗。中で今回妙味はセイクリムズンと判断した。通算15勝、うち交流G6勝。大井、浦和、名古屋、高知、4地方競馬場で見事なタイトルを獲ってきた事実があり、環境、コース、展開、あらゆる状況に動じない逞しさ、したたかさが大きく光る。確かに従来ベスト(実績)は短距離だが、今季GI「フェブラリーS」あわやの4着など、いい意味で枯れてきた近況からはマイルも十分守備範囲。初コンビの内田博騎手J、ややジリっぽい馬を動かす、その技術は文句なく日本ジョッキー界No.1だ。

 かしわ記念4勝目をめざすエスポワールシチーは、前走時“鼻出血明け”の影響が唯一不安。高齢ながらスピード、勝負強さとも健在で(少なくともレースパフォーマンスは)、いい結果が出れば、さすがというしかないだろう。ホッコータルマエは若さと勢い、さらに競ってのしぶとさが魅力だが、今季いかにも押せ押せのローテで、そろそろ反動が出ないかどうか。大賞典馬ローマンレジェンドの場合、今回4か月余のブランク。能力上位は認めても、本来中〜長距離志向だけに、次走「帝王賞」へワンステップという懸念もある。戸崎J・テスタマッタもGI2勝、マイル適性からは脈ありだが、昨年現実にエスポワール、フリオーソに完敗。気性面に難しさを抱え、船橋コースの適性がどうか。あえて地方勢ならピエールタイガー。交流G初挑戦ながら充実度とマイル適性は胸が張れる。帝王賞馬コンサートボーイの甥に当たる良血馬だ。

◆しらさぎ賞回顧
(5月1日 浦和 サラ3歳以上牝馬 別定 南関東SIII 1400メートル良)

 △(1)ナターレ     1分28秒7
 ▲(2)センゲンコスモ    2
 ○(3)マニエリスム     頭
 △(4)サクラサクラサクラ 11/2
 △(5)ハルサンサン     3/4
 ………………
 △(6)ツキノテンシ
 ◎(9)クラーベセクレタ

  単860円  馬複9470円  馬単24480円  3連複17410円  3連単145910円

 波乱になった。いや勝者ナターレのスピード能力は過去再三実証済みで、今回2番手から抜け出したレースぶりも完璧だったが、何より今日の場合、単勝1.2倍、すべて断然と思えたクラーベセクレタ惨敗にショックが大きい。少し大げさにいうなら、競馬とはいつも無常、何が起こるかわからないこと。クラーベはスタートでやや安目を売り1コーナー8番手、そこからいっこうにエンジンがかからず、デビュー以来22戦、最も数字の大きい“9着”でレースを終えた。「道中ぎくしゃくして、なかなか前に進まない。気持ちの問題かな。(初騎乗で)今日は正直わかりません」(今野騎手)。記者予想的には、昨暮れから4か月半ぶり、それを軽く考えたのが失敗だった。ただ十分な稽古をこなして7キロ増。事実パドックの馬体などゆったりして休養前よりよくみえた。次走統一G「スパーキングレディーC」でどう変わるか。一過性のポカで終わればいいのだが。

 さてナターレは、今回「クラウンC」、「戸塚記念」に続く重賞3勝目。父クロフネらしい距離万能のスピード型で、しかしハナ切れないとモロい、展開しだいの気性に弱みがあった。「道中2〜3番手は描いた通り。自らハミをとってくれたし、追ってからもしっかり伸びた」(的場文騎手)。スムーズな流れに恵まれたのか、それとも自身完全にひと皮むけたか、今日このレースだけでは判断しづらい。ただ結果論ながら、パドック、返し馬の動きなど、メンバー中最も光り、得意の春〜夏シーズンを迎え(過去4〜5月・4勝)体調は再びピークに達している。「息を入れながら使って完全燃焼するタイプ(今回2か月の充電)。力はある。ローテは慎重に考えます」(内田調教師)。ひとまず大目標「JBCレディスクラシック」とコメントされた。11月4日、金沢1500メートル。脚質、コース形態など、彼女に絶好の舞台とは想像できる。

 センゲンコスモ2着。イン3番手から終始スキのないレースぶりで、持ち前の機動力、しぶとさをフルに生かした。地味なイメージながら着々と力をつけていくあたりが父トーホウエンペラーらしさか。マニエリスムは惜しい3着。道中クラーベを意識するレースぶりで、結果仕掛けが微妙に遅れた。上がり3F37秒0はメンバー中抜けた最速。心身両面リズムが戻ったとなれば、今後に改めて期待が浮かぶ。サクラサクラサクラは外枠から思い切った逃げに出たが、久々6キロ増もあり4コーナー失速。ただレースぶり自体、鞍上の同馬に対する自信、信頼感とも判断でき、次走はおそらく大きく変わる。ハルサンサンも行き脚良化。距離オールマイティ、「TCK女王盃」勝ちがある実力派で、こちらもまだ夢がつなげる。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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