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大井記念展望&かしわ記念、東京湾C回顧

  • 2013年05月14日(火) 18時00分
◆大井記念展望
(5月15日 大井 サラ4歳以上 別定 南関東SII 2600m)

「大井記念」は、秋「東京記念=2400m」と並ぶTCK名物レース。現在、“日本競馬・ダート最長距離戦”のポジションを担っている(門別・ステイヤーズカップ、王冠賞、金沢・北国王冠も同じく2600m)。過去56年の歴史。優勝馬には、カツアール(宝塚記念)、テツノカチドキ(東京大賞典2勝)、チャンピオンスター(帝王賞2勝)、アブクマポーロ(GI・5勝)……一時代を築いたビッグネームがずらりと並び、しかもかつてはハンデ戦だったから、例えば昭和61年テツノカチドキなど極量60キロ(佐々木竹見騎手)を背負っていた。その意味でも、ずっしり重みがあるレースだろう。

 ただし近年は明らかにレベルダウン。表向き「帝王賞TR」と謳われているものの、現実には交流GI級が顔をみせない。ふり返れば大井記念→帝王賞連破は、平成15年ネームヴァリューが最後だった。全盛期のアジュディミツオー、フリオーソも「かしわ記念」→「帝王賞」のステップを例年選び、タイトル“大井記念”におよそふさわしくない、単なる南関東限定Sにグレードを下げてしまった。毎年書くこと。大井記念の“復権”には、同レースを交流移行、JRA長距離走者を呼び込む方策がいいと思う。実際、過去2300mで行なわれてきた「東海S」が22年から1900m、今年から1800mに距離を変更し、今年から施行時期が1月に変更、変わって施行時期が変更となった移ってきた平安Sも1900m。JRAスタミナ型はその活躍場所を失っている(最長距離ダート重賞・阪神シリウスS=2000m)。記者個人的には砂のステイヤー、その戦いにはまだまだ捨てがたい魅力を感じる。少し古くなるが、キョウトシチー、トーヨーシアトル、ハギノハイグレイドなどはまさしくそんなタイプの馬だった。現在足踏みのソリタリーキングあたりも、この条件に出走できれば突破口がイメージできる。

 (1)…波乱含み。1番人気[4-1-0-5]は微妙な数字で、2番人気[3-2-0-5]とほぼ互角か。3番人気[0-4-1-5]。1→2番人気のワンツーは過去10年中1度しかなく、総体的には波乱含み。

 (2)…船橋VS大井。船橋=6勝、2着3回と優勝馬数でリードするが、大井=3勝、2着7回も、アベレージで互角に近い。特筆は大井1〜3着独占の年が2度あることか。他は川崎=1勝だけ。浦和は好走例がない。

 (3)…意外に新鋭。5歳=5勝、2着2回。以下、6歳=3勝、4歳(2着3回)、9歳がそれぞれ1勝。高齢馬(リピーター)の健闘もさることながら、イメージ以上に新鋭も活躍する。遅咲きのステイヤー注目。

 (4)…末脚勝負。逃げ=0、先行=3、差し=11、追込=6。仮に道中スローでも差しタイプ有利。勢い重視が鉄則で、前走「ブリリアントカップ」出走組(昨年ツルオカオウジなど)の好走が目立っている。

 ※データ推奨馬
 ◎フォーティファイド…大井所属、8歳牡馬。前走「ブリリアントC」を好位から息の長い末脚で完勝した。母は女傑ファストフレンド(帝王賞、東京大賞典制覇)。遅咲きの中〜長距離型と判断できる。リーディングJ独走態勢に入った御神本騎手。今季躍進めざましい(大井リーディング2位、連対率3割2分)藤田輝信厩舎。

       ☆       ☆

 ◎トーセンルーチェ   57坂井
 ○フォーティファイド  56御神本
 ▲アスカリーブル    56吉原
 △スマートインパルス  57楢崎
 △アドマイヤシャトル  56山崎誠
 △ピサノエミレーツ   56町田
 △テラザクラウド    57今野
  マズルブラスト    57佐藤太
  クリーン       56森
  ビービーガザリアス  52達城

 トーセンルーチェの連覇とみる。半兄フリオーソとは個性が大きく違うステイヤー。JRA3勝、南関東6勝、大半を2000m超であげており、昨年このレースも3〜4コーナー外から捲り気味に追い上げ、1頭別格のパワーを発揮した。以後息を入れながらのローテとなったが、前々走金盃を制し、前走ダイオライト記念GII6着。今回へ向け調整万全は論を待たない。2冠牝馬アスカリーブルの挑戦を除くと、正直新味に乏しい組み合わせ。対してルーチェ自身は、7歳馬ながらまだ上昇余地を残している。

 フォーティファイドは前述通り、TR「ブリリアントカップ」をこれまでにない切れ味で完勝した。タフに使い込まれ、年齢を超えた成長をみせるあたりが、やはり血筋ということだろう。本格的な長距離はJRA時を通じ初めてだが、今のデキなら問題なく克服できる。アスカリーブルは今回5か月ぶり、川島正行厩舎→出川克巳厩舎、トレード初戦。それでも昨年牝2冠、とりわけ関東オークスGII制覇はひいき目なしに偉業といえ、彼女自身の適性も、本来中〜長距離にありそうだ。いきなり好勝負して不思議ない。

 以下、距離万能(昨秋東京記念勝ち)、意外性を秘めるスマートインパルス、JRA5勝、前々走報知オールスターカップ2着アドマイヤシャトル。さらに底力を買ってピサノエミレーツ、テラザクラウドと序列をつけた。長距離路線の顔役(大井記念、東京記念計3勝)マズルブラストも侮れないが、さすがに11歳。前2走はテンから反応が鈍かった。むしろ不気味といえばビービーガザリアスか。父サウスヴィグラスながら近走1800〜2000m中心のステップ。52キロの軽量で爆発力を生かすと大穴。

◆かしわ記念回顧
(5月6日 船橋 サラ4歳以上 定量57キロ JpnI 1600m良)

 ▲(1)ホッコータルマエ   1分37秒8
 ○(2)エスポワールシチー    11/2
 △(3)ローマンレジェンド     1
 △(4)テスタマッタ        頭
 ◎(5)セイクリムズン       4
 …………………
 △(6)ナイキマドリード
  (7)アイディンパワー
 △(11)ピエールタイガー

  単240円  馬複480円  馬単760円  3連複210円  3連単1370円

 ホッコータルマエが完勝した。道中好位をスムーズに進み、直線楽々と抜け出す横綱相撲。「スタートはいつも速いし、頭がよくてレースが巧い。逃げた馬(エスポワールシチー)を射程圏に入れながら理想的な競馬ができた」(幸騎手)。重賞3連覇(佐賀記念→名古屋大賞典→アンタレスS)中の4歳馬ながら、今回初コースGIは客観的に高いハードル。しかし鞍上の言葉、表情は、拍子抜けするくらい淡々と自然流で、勝って当然…のニュアンスが感じられた。こうしたケース、何度となく思うこと。外野(観戦者)の評価はやはり外野の評価でしかない。少なくとも今日の同馬は、記者の想像を大きく超えて強かった。

 ともあれホッコータルマエ。デビューから一貫ダートを使われかしわ記念までの成績は[7-1-4-4]。タフに使い込む戦略も、馬自身の体質、個性とぴたり合致した結果となり、距離・コースすべて万能、それこそ瞬く間にGI級、全国レベルの王者候補に駆け昇った。「レースと調教、うまく噛み合って好結果が出ています。オンとオフ、切り替えがわかっている利口な馬。筋肉の付き具合などからは、まだまだ伸びしろがあると思う」(西浦調教師)。確かにパドックで見た同馬は、前躯隆々でもなく、細身スラリでもなく、とにかく体全体にハリがあってバランスがとれている。レース直後「帝王賞」→夏場休養→「JCダート」、長期プランも明言された。そうなると、まず帝王賞、同じ父キングカメハメハ=ハタノヴァンクールとの対戦に興味が浮かぶ。

 今回、エスポワールシチー2着、ローマンレジェンド3着とも、内容は納得できた。エスポワールは絶好の1番枠、平均ペース(1000m通過62秒2)の逃げだから本来押し切って不思議なく、それを4歳下の精鋭がそれ以上の瞬発力をみせたのだから、レースぶり自体に悔いはない。3着ローマンレジェンドの場合、本質1600mは忙しいという結果ととれる。道中外々をじわりと追い上げたものの、先行2頭に最後ひと息及ばなかった(上がり37秒5=メンバー中No.2)。テスタマッタは昨年(3着)と酷似した走りとなり、1〜2コーナー、首を上げていったん下がり、直線再び伸びてきた。船橋コース、ひとまずその適性が問題か。期待したセイクリムズン5着。スタートのタイミングが合わず、1コーナー8〜9番手を進む厳しい展開。力関係、マイル適性以前に、今日は自分の競馬ができなかった。地方勢はナイキマドリードが先行策で最先着。ただ1.2秒差(11馬身)では、健闘という言葉にも正直大きく届かない。

◆東京湾C回顧
(5月8日 船橋 サラ3歳 別定 南関東SIII 1700m良)

 ◎(1)アメイジア     1分48秒8
 △(2)キタサンオーゴン    鼻
 ○(3)イヴアルブ       首
 △(4)リアライズリンクス  11/2
  (5)フルーツサンデー    鼻
 ………………
  (6)ファイアーベル
  (7)ドリームキングダム
 △(8)トーセンギネスオー
 ▲(9)エスケイロード
 △(10)ヴェリイブライト

  単200円  馬複710円  馬単990円  3連複1170円  3連単4590円

 アメイジアが接戦を制して重賞2勝目を獲得した。好スタートのリアライズリンクス、フルーツサンデー、トーセンギネスオー、互いに相手をうかがいながらの先行で、流れはスロー(1000m通過63秒0)。アメイジアはスムーズな4〜5番手キープから、直線外に持ち出し手応えよく先頭。それでいて最後鼻差は意外だが、馬自身いっぱいというより、早めに抜け出したぶんソラを使ったようにもみえる。「最後はヒヤリとしたけど勝ててよかった。自分から動く競馬だったし着差以上に強いと思う。残る課題は集中力でしょう」(吉原騎手)。540キロ超、見映えのする黒鹿毛は、今日もパドックなど威圧感にあふれていた。1700m=1分48秒8は平凡だが、ひとまず相手なり…と判断したい。

 アメイジアはデビューから一貫エリート路線を歩み[4-2-2-2]。船橋生え抜きに限るとNo.2の実績があり、現実に昨秋特別戦(1600m)では宿敵インサイドザパークを押さえている。3月大井「京浜盃」大敗(12着)など未知数の部分を残すが、こと潜在能力(とりわけパワー)は、例年クラシックレベルに十分届く。「最後辛勝になったのは、まだ精神的に幼いため。もまれない外々を動いた乗り役さん(吉原J)が巧かった。伸びしろを見込めば東京ダービーでも楽しみがある」(坂本昇調教師)。検討記事でも書いたこと。羽田盃の結果を受けほぼ固まったと思える3歳戦線。しかし今回上位組はわずかながら可能性を残している。とりわけアメイジアは、イーグルカフェ×ジェイドロバリー。ダート中〜長距離の本格派だ。

 いったん楽勝態勢かにみえたアメイジアに、直線キタサンオーゴン、イヴアルブがきわどく迫った。前述通りアメイジアが最後やや気を抜いたとしても、前者38秒7、後者38秒8だから、その瞬発力は評価できる。とりわけイヴアルブはまだキャリア4戦目、今回初重賞。東京ダービー・ボーダーの収得賞金(850万円)ながら、こと潜在能力は相当高い。4着リアライズリンクスは逃げて目標になる辛さがあった。ただ父ダイタクリーヴァ、本質スピード優先、短〜マイル向きの印象も否めない。5着フルーツサンデーは戸崎J、巧く先行馬ペースに乗ったにせよ、想像以上に芯が強い。クロフネ×サンデーサイレンス。南関牝馬同士なら今後オープンに昇れそうだ。凡走のドリームキングダム、エスケイロードは、ともに末脚勝負で、現状“当たり外れの多いタイプ”としか表現できない。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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