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ジャパンダートダービー展望&スパーキングレディーC回顧

  • 2013年07月09日(火) 18時00分
◆ジャパンダートダービー展望
(7月10日 大井 サラ3歳 定量 JpnI 2000m)

「ジャパンダートダービー」は平成11年新設(黎明期はスーパーチャンピオンシップ、スーパーダートダービーなどの名称で秋季実施)。それから3年を経て、「羽田盃」→「東京ダービー」→「JCダービー」、牡馬クラシック3冠が理想的な形で確定した(平成14年)。以後JRA9勝、地方(南関東)2勝。2〜3着数も含めJRA優勢は動かないが、さりとて、まったく勝負にならない…結果、傾向とも少し違う。19年フリオーソ、22年マグニフィカがそれこそ渾身の力走で一矢を報いた。

 何度か書いたこと。「JDダービー」には元々ミステリアスな歴史がある。例えば12年アグネスデジタル・謎の凡走、22年マグニフィカ・よもやの大駆け。ただこのレース覇者はやはり、“何かを持っている”ケースが多く、以後いったんトンネルに入ったかにみえた21年テスタマッタ、23年グレーププランデーなども、長い雌伏の時を経て再びGIタイトルに輝いた。もう一つ、今回は「JDダービー馬からJDダービー馬…」というテーマが思い浮かぶ。14年、7馬身差で圧勝したゴールドアリュール。言わずもがな、同馬はすでにスマートファルコン、エスポワールシチーを送り、ダート一流種牡馬を確定している。今年はクリソライト。デビューから一貫ダートに狙いを定め[3-5-0-0]。ダイナミックな走法、幅のあるレースぶりも父譲りといえるだろう。

 少し横道にそれる話だが、16年このレース、4着に敗れたアジュディミツオー。彼の産駒が今夏から競馬場に登場している。現在南関東には在厩馬8頭、すでにデビューした馬が2頭おり、イチネンセイ、スーパーウィザード、それぞれ新馬戦を6、2着と完走した。中でもスーパーウィザードは1200mを選択して鼻差2着。厳しい位置から最後差し返した内容に、父アジュディミツオーらしいパワーと闘志を感じさせた。こうしたゆかりの産駒が育ってくれば…。南関東クラシックはやはりそうなってこそ理想形と思う。

 (1)…波乱含み。1人気[4-1-1-4]、2人気[2-2-1-5]、3人気[2-2-3-3]。大波乱はないものの、人気馬同士、すんなりとも決まりにくい。昨年は1→4人気の決着で、馬単2400円

 (2)…JRA優勢。JRA=8勝、2着8、3着3と断然だが、21年スーニ(単2.0倍)、22年バーディバーディ(1.5倍)凡走(ともに6着)など、思わぬ破綻がときおりある。船橋=2勝、2着1、3着3。地方他地区馬[0-0-1-37]、牝馬[0-1-0-11]。

 (3)…実績重視。優勝馬平均キャリア=7・2戦、同2着馬7・8戦。連対20頭中15頭までがダート3勝以上をあげていた。千八好走があればなおよく、今年の場合は「昇竜S」組か。「ユニコーンS」勝ち馬は[2-1-1-3]、東京ダービー馬は[0-1-2-4]。

 (4)…差し優位。逃げ=1、先行=7、差し=11、追込=1。純然たる逃げ切りは22年マグニフィカ1頭だけで、同時に純然たる追い込み(四角7番手以降)も昨年ハタノヴァンクール以外に見当たらない。好位〜中団からの差しが理想。

 データ推奨馬
 ◎クリソライト…デビューから一貫ダート[3-5-0-0]。それも中距離路線を意識的に進み、前走京都千八「昇竜S」を息の長い末脚で完勝した。前述通り節制覇を狙うゴールドアリュール産駒。内田博騎手はこのレース、18年フレンドシップで優勝、22年コスモファントムで2着している。

       ☆       ☆

 ◎アウトジェネラル  56御神本
 ○クリソライト    56内田博
 ▲ケイアイレオーネ  56幸
 △エーシンゴールド  56川田
 △ベストウォーリア  56戸崎
 △チャーリーブレイヴ 56岩田
 △インサイドザパーク 56左海
  ジェネラルグラント 56石崎駿
  ソルテ       56真島
  アルムダプタ    56三浦
  ミータロー     56服部茂
  ユメノアトサキ   54坂本

 アウトジェネラルをあえて狙った。「羽田盃」上がり36秒2はレース史上最速、文字通り究極の切れ味と思えること。父アドマイヤドン(JBCクラシック3連覇)、手脚のすらりと伸びた典型的ステイヤーであること。なるほど前走東京ダービー(6着)は誤算だが、最内枠から致命的な出遅れ。その時点で戦意喪失とみえただけに、逆にダメージの残らない敗戦とも考えられる。今回大外枠(16頭15番)。正直極端な状況になったが、いい意味で開き直り、のびのび乗れることは確かだろう。今年の南関東3歳レベルはごく客観的にみて低くない。

 JRA勢は「ユニコーンS」組より「昇竜S」組を上位にとった。中でもクリソライトは血統、脚質、二千適性、すべてに合格点以上がつく。加速がついて重心が沈む力強い走法。おそらく大井向きだろう。同レース1/2馬身差2着エーシンゴールドは当時キャリア4戦目。続く古馬1000万をあっさり制した内容からも、素質と上昇度には胸が張れる。一方「ユニコーン」組では、勝者ベストウォーリア以上にケイアイレオーネが魅力的。当時ドバイ「UAEダービー」遠征帰り、それでいて3〜4コーナー外から豪快に捲って見せ場を作った。昨秋園田「兵庫ジュニアGP」大楽勝。地方ダートは元より適性が高い。

 東京ダービー馬インサイドザパーク、2歳時からの安定株ソルテにも善戦を期待したいが、前者は本質的な不器用さ、後者は千八を超してのスタミナに課題を残す。さらに京浜盃圧勝、ダービー2着ジェネラルグラント。今回出走16頭中、馬体のよさ、雰囲気などピカ一とイメージするが、同馬の場合、レースに行ってどこかパンチ不足の感もある。

◆スパーキングレディーC回顧
(7月3日 川崎 サラ3歳以上牝馬 別定 JpnIII 1600m良)

 ◎(1)メーデイア    1分40秒8
 △(2)サマリーズ      1
 ○(3)レッドクラウディア 1.1/2
  (4)マニエリスム     4
 △(5)ハルサンサン     1
 …………………
 △(6)サクラサクラサクラ
  (7)エミーズパラダイス
  (10)ナターレ
 ▲(13)クラーベセクレタ
 △サダムグランジュテ   落馬

  単140円  馬複570円  馬単780円  3連複450円  3連単1430円

 メーデイアが完勝した。スタート直後、すぐ隣のサダムグランジュテが落馬。しかしまったく動じることなく、馬なりのまま2番手キープ。直線あと1ハロン、懸命に粘るサマリーズを外から力強くねじ伏せた。「イメージしていた展開になってじっくり乗れた。強いです。今日は初ナイターだけ気になっていたが問題なかった。この路線(ダート牝馬G)では負けたくないし、実際順調でさえいれば自信がある」(浜中騎手)。千六1分40秒8は平凡(昨年スティールパス=39秒3)だが、常に流れなり、相手なりのタイプともいえるだろう。いずれにせよプレッシャーがかかる単1.4倍。この夜の場合、精神面の逞しさがひときわ光った。

 メーデイアは、キングヘイロー×ロードエイヴァー(米GI3勝)の5歳馬。今季「TCK女王盃」→「マリーンC」連破でブレイクし、ミラクルレジェンド引退後、牝馬頂点への道を順風満帆に昇っている。特徴はトップスピードに入って息の長い脚を使うこと。「馬の骨組が完成し、同時に筋肉もついてきた。環境の変化にスッと順応できる性格で安定感がある。これからいよいよ楽しみです」(笹田和秀調教師)。

 今季最終目標は「金沢JBCレディース=GI」と明言された。あとは夏場をどう乗り切り、本番へ向けどうピークを維持するか。ただ記者的には、メーデイア自身、本質千八〜二千ベストという印象もあり、金沢千五はもうひとつしっくりこない。現時点では顔ぶれしだい…の展望が妥当と思う。

 サマリーズは立派な2着。千通過60秒8、超のつくハイペースで飛ばしながら絶頂期の古馬メーデイアと一騎打ちに持ち込んだ。昨暮れGI「2歳優駿」勝ちはダテでなかったということ。迷いのない戦法(逃げ)を持っているだけに、今後もこの路線でチャンスが多い。レッドクラウディアは向正面、前2頭を早めに追い上げたものの結局並べず、末脚もあまりピリッとしなかった。伸び悩み。3か月の放牧明けで馬体などふっくらみえたが、現実に期待ほど成長がうかがえない。レースの流れ(ハイペース)からは前崩れが当然で、末脚勝負マニエリスム、ハルサンサンの入着は、特筆できるものでもないだろう。それより何より、クラーベセクレタ殿り負けはショックだった。中団から追い通しで3〜4コーナー終了。「前に進んでいかない。気持ちが乗っていないのか…」(今野騎手)。牡馬相手の2冠制覇、輝かしい交流実績。牝馬ゆえの現象、結果とすると、正直せつない。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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