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習志野きらっとスプリント展望&ジャパンダートダービー回顧

  • 2013年07月14日(日) 18時00分
◆ 習志野きらっとスプリント展望
(7月15日 船橋 サラ3歳以上 別定 地方交流 南関東SIII 1000m)

「習志野きらっとスプリント」は、一昨年新設されたSIII。1月恒例となった「船橋記念」と同舞台、同条件の電撃5Fだが、こちらは“地方スーパースプリントシリーズ”そのファイナルという位置付けにワンランク違いがあり、実際一昨年、昨年とも、快速女王ラブミーチャン(笠松)が圧倒的な強さで連覇した。自然流の先行から楽々抜け出し、58秒4、58秒2の快時計。ラブミーチャンの、ラブミーチャンによる、ラブミーチャンのためのレース――思わずそんな言葉さえ浮かんでしまう。据え置きの別定56キロ、地元TR「でら馬スプリント=名古屋800m」を制して東上するステップも、前2年とまったく同じ。ごく客観的にみて死角がいっさい浮かばない。

 ただ今年のメンバー。それにしても…という寂しさは正直ある。前2年連続2着ジーエスライカーが今年は不在(昨年10月・左種子骨骨折で予後不良)。唯一実績互角といえるナイキマドリードも直前回避で、ライバルと呼ぶべき馬が見当たらない。通算16勝、うち統一G4勝、9競馬場で勝利をあげたラブミーチャンは確かに稀代の女傑だろう。しかし、徐々にレベルを上げ、層も厚くなってきた(と思える)地方競馬スプリント界。彼女の勝ちっぷりだけが焦点(単1.0倍の可能性)では、真の意味で夢と展望がつながらない。打開策かどうか微妙だが、1つだけあえて書く。南関東重賞番組には、4場バランスを基本に好メンバーを集める企画がほしいこと。例えば直前7月12日、大井「ゆりかもめオープン=千二」というレースがあり、そこにミヤサンキューティ(2着)、ゴールドキャヴィア(3着)が出走していた。ともに3歳夏「優駿SP」を制した快速牝馬。この2頭が「きらっと」に出てくれば、ラブミーチャンの相手として、少なくとも1つ話題(予想)は盛り上がった。

      ☆       ☆

 ◎ラブミーチャン   56森
 ○ディープハント   56町田
 ▲スターボード    57御神本
 △アイディンパワー  57的場文
 △タマモスクワート  57見沢
 △エーブダッチマン  58矢野
  トウホクビジン   54佐藤友
  スパロービート   56山崎誠

 ともあれ馬券上は、2着、3着をどう拾うかに絞られる。今後ステップを思うと(盛岡クラスターカップ→大井東京盃が有力)、自分の形(好位差し)を崩したくないラブミーチャンだが、ここはこれといった同型不在。出たなりの先行策で、そのまま押し切ってしまう可能性が強い。作戦、脚質云々というより、成り行きというやつ。当然その周辺に位置する馬は苦しくなる。

 対抗にみたディープハントは1月「船橋記念」2着、ナイキマドリードを3/4馬身差まで追い詰めた。当時上がり35秒6(Nマドリード=36秒1)。もう1〜2完歩あれば差し切っていた脚いろで、今回同じ町田J鞍上という点にも期待感が大きい。以後結果ひと息(5戦・4、13、7、2、10着)は、負けを承知の千六〜千七もあり、いうところの捨てゲームと納得する。じっくりタメて完全燃焼ならラブミーチャン相手でも肉薄可能だ。

 スターボードは先行争いをどう捌くか。ただし昨夏GIIIクラスターC4着など潜在能力は相当高く、加えて今回叩き3戦目、久々にピークで適条件を迎えることは間違いない。前走TR(川崎九百)、スターボードと1着同着のアイディンパワー(JRA4勝)も争覇圏だが、こちらはもともと末一手。ストレートな時計勝負になる船橋1000mは、ひと息イメージがしっくりこない。それならタマモスクワート。本質マイル前後ベストだが、転入後4勝、昨暮れゴールドCはナイキマドリードと一騎打ちを演じている。前々で流れに乗れると面白い。

◆ジャパンダートダービー回顧
(7月10日 大井 サラ3歳 定量 JpnI 2000m 良)

 ○(1)クリソライト    2分04秒8
 △(2)エーシンゴールド    7
 ▲(3)ケイアイレオーネ    鼻
 △(4)インサイドザパーク   31/2
 △(5)ベストウォーリア   鼻
………………
  (6)ソルテ
  (7)トラバージョ
  (8)ジェネラルグラント
  (9)アルムダプタ
 △(10)チャーリーブレイヴ
 ◎(11)アウトジェネラル

  単220円  馬複290円  馬単520円  3連複1680円  3連単4840円

 クリソライトが圧勝した。好位キープから楽々抜け出し直線独走。02年、父ゴールドアリュール優勝時と同じ“7馬身差”は、終わってみれば運命的な数字かもしれない。テンよし、中よし、終いよし。父=2分04秒1より気持ち時計はかかったが、レースの印象というなら、むしろアリュール以上にどっしりとして重厚感があった。「ペースが上がらなかったから(千通過62秒6)早めに動いた。勢いがついて止まらない。大井でこのレースを勝つのは毎年の自分の目標。素晴らしい馬に乗せてもらった」(内田博J)。実際直線あと1ハロン、加速がついて重心が低く沈む走法など、それこそどこまでも伸びていくイメージが浮かぶ。歴代JDダービー馬の中でも最上級、一つ別格の馬と判断できる。

 クリソライトはゴールドアリュール×エルコンドルパサー、490キロ台・鹿毛の牡馬。デビューから一貫ダートを使われ[4-5-0-0]、いまだ連対を外していない。当初取りこぼしが多かったのはやや不器用なためだろうが、いざエンジンかかってのパワー、勝負強さは、およそ3歳馬とは思えない迫力と凄みがある。「初コース、初ナイター、相手関係。レース前の不安を、馬と乗り役さんが一掃してくれました。二千向き、大井向きと考えて遠征したから(ユニコーンS回避)なおさら嬉しい」(音無秀孝調教師)。今後は12月GI「JCダート=阪神千八」を大目標に、そこから逆算したローテーションが明言された。アロンダイト(06年JCダート優勝)の甥という背景がある。ともあれクリソライト自身、今回圧勝でダート王者(古馬を含め)への道が大きく開けた。けっして軽くないメンバー、そこでの7馬身差は相当な重みを感じる。

 エーシンゴールド、ケイアイレオーネの2着争い。勝ち馬(の強さ)を意識して直線に賭けた前者、奔放なレース(捲り)で大駆けを狙った後者。結果それが鼻差に表われたということか。馬自身の能力、器は、ごく公平にみてレオーネの方と思う。地方側最善戦はインサイドザパーク。中団キープからしっかり伸び、ひとまずjra凡走組(ベストウォーリア・チャーリーブレイヴ)に先着した。上がり39秒2も着順と同じ第4位。パドックで見る馬体など依然華奢に写ってしまうが、同馬の場合、外見を大きく超えた成長力を持っている。好位からジリ貧のソルテ、不発に終わったジェネラルグラント、アウトジェネラル。ただ圧勝クリソライトから2着1.3秒差を思うと、勝てないまでももう少し走っていい。とりわけ◎アウトジェネラル。大外枠、スタートひと息は想定内にせよ3〜4コーナー勝負どころを待たず脚があがった。力関係(競走能力)だけではないかもしれない。ホームとアウェー、それを思っても地方勢には精神面のパワーアップが必須になる。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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