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ハイセイコー記念展望&鎌倉記念回顧

  • 2013年10月15日(火) 18時00分
◆ハイセイコー記念展望
(10月16日 大井 サラ2歳 定量 南関東SII 1600m)

「ハイセイコー記念」は、旧「青雲賞」。今年第46回目を迎える伝統の大井2歳重賞。ハイセイコー死亡(享年32歳)、その翌年(平成14年)から、現タイトルへレース名が変更された。元祖・怪物くんであり、時代の寵児であり、永遠のアイドルホースでもあったハイセイコー。たださすがに年月が遥かに過ぎ、同馬の強さ、存在感を“自分自身の記憶”として残しているファンは少なくなった。で、改めて書かせていただく。ハイセイコーは昭和47年「青雲賞」を7馬身差で圧勝した(2着トサエンド)。当時1600m=1分39秒2は、それから40年が過ぎた今もなお、レースレコードとして輝きを放っている。記者自身は当時20歳、学校より競馬場出席率の方が断然高い、前途あやしい青年だった。後年ハイセイコーについて、鞍上・高橋三郎騎手(現調教師)に取材したことを思い出す。「走りはスローモーションみたいでね。500キロ超で大きいから、乗っていてスピード感が全然ない。だけど、調教でもレースでも時計を聞いていつも驚く。こんなに速いか…。とにかくケタ外れの馬だった」。

“怪物“の名を冠したわりに、その活躍馬が翌年につながりにくいこのレース。平成に入り、明春クラシック優勝馬といえば、6年ジョージタイセイ(東京ダービー)、9年ゴールドヘッド(羽田盃)、21年ナイキハイグレード(羽田盃)、3頭しか例がない。南関東生え抜き馬の地盤沈下、北海道から転厩組のレベルアップ。ただ昨年鮮やかな差し切りを演じたソルテは、その後ニューイヤーCを勝ち、羽田→東京ダービー→JDダービー、それぞれ2、3、6着と一応の形をつけた。勝ち馬自身に素質、成長力があれば、傾向、ジンクスなど、あっさり突き破れるということか。見渡して今年のメンバー、現南関東2歳、最有望の一頭モデールノが出走。対して北海道トップグループの一角ジュリエットレターが大井転入、いきなり重賞でヴェールを脱ぐ。先週「鎌倉記念」(道営ニシノデンジャラス圧勝)より、一段ハイレベルのレースになれば夢が広がる。

 (1)…波乱含み。1人気は[2-2-3-3]と頼りなく、むしろ2人気[4-3-1-2]に安定感がある。3人気[0-2-3-5]、4人気[3-0-1-6]。予想紙の印でいえば○→▲、○→△、▲→△あたりが妙味になるか。ここ2年1人気=7、11着。

 (2)…3場脈あり。大井=5勝、2着3とリードするが、船橋=3勝、2着6もほぼ互角で、川崎=2勝、2着1も健闘といえる。ただ大井初コースの馬は[1-2-1-17]と分が悪く、昨年も北海道から転入初戦アウターバンクスが、3人気13着と大敗した。

 (3)…牝馬注意。TR「ゴールドジュニア」優勝馬は過去10年=6、8、2、1、3、14、3、2、2、不で、連破は18年ロイヤルボスだけと案外勝てない。牝馬は出走頭数のわりに侮れず、レース史上5頭優勝。一昨年などドラゴンシップ→アイキャンデイのワンツーだった。

 (4)…差しタイプ。逃げ=3、先行=7、差し=9、追込=1。近年は道中緩みなく流れ、終い乱戦のケースが多く、好位〜中団からの差しが主流。ジョッキーでは的場文男騎手が、レース通算8勝をあげており、過去10年=1、3、1、9、3、15、1、3、2、不…も特筆できる。

※データ推奨馬
 ▲ポッドルージュ…大井所属の牝馬。デビューから4戦2、3、2、2着と惜敗続きだが、フレンチデビュティ×マンハッタンカフェの良血で、エンジンかかっていい脚を長く使う。骨太のがっしりした馬格を誇り、いかにも混戦向きのムードがある。このレース抜群に相性がいい的場文騎手。

       ☆       ☆

 ◎モデールノ     55石崎駿
 ○ジュリエットレター 55御神本
 ▲ビックボーイ    55酒井
 △グライス      55和田
 △ブラックヘブン   55有年
 △ポッドルージュ   54的場文
 △ドラゴンエアル   55今野
  ファイヤープリンス 55左海
  キャンディッド   55真島
  アルコバレエノ   55達城

 モデールノは、いかにも“実戦派”を思わすクラシック候補だ。地元デビュー戦(船橋1000m)こそ快速馬(ネバーシーストップ)を追い切れず惜敗したが、以後大井に照準を据えて1、2、2着の快進撃。前走TR「ゴールドジュニアー」も、道中好位をスムーズに進み、直線狭いインから一瞬のうちに突き抜けた。父ゼンノロブロイ、均整のとれた垢抜けた馬っぷり。加速がついて重心がグッと沈む走法も素晴らしい。派手なパフォーマンス、傑出した時計はないものの、いざレースに行って“必要十分”、常に完全燃焼できるタイプと判断する。じっくり乗れる1600mも当然プラスだ。

 ジュリエットレターは道営新馬(1200m)を完勝後、続く特別戦(1700m〜1800m)で、ニシノデンジャラス(先週・鎌倉記念圧勝)と1勝1敗。確かな能力はもちろん、VTRを見る限りデンジャラスより自然かつ素直な走りで、いわく完成度も高そうだ。問題は前述通りこのレース、転入馬に“鬼門”という点だが、父ゴールドアリュール、社台ブランド。前走から中1か月の理想的なステップで、追い切り(ミッドウェイファーム)もきっちりこなした。あっさり勝たれてしまうのかどうか。いずれにせよ今回の結果と内容。道営×南関東、現時点の勢力図が一つ明確になることは間違いない。

 割って入る新星にはビックボーイをとった。デビュー2戦2勝。初戦逃げ切り、2戦目直線一気と両刀を使った点に非凡さがあり、430キロ台と小柄でも、母系エルコンドルパサーなら成長力がイメージできる。グライスは、道営時ジュリエットレターと差がない戦歴。父スクリーンヒーロー、前走ゴールドJ小差4着からも上積みしだいで好勝負可能だろう。以下、前走8馬身差圧勝、勢いのついたバイロ産駒ブラックヘブン、的場文Jの腕を加味してポッドルージュ。前走初コース大井1600mを豪快に差し切ったドラゴンエアル(父タイムパラドックス)も、混戦を想定すれば穴に狙える。

◆鎌倉記念回顧
(10月9日 川崎 サラ2歳 定量 地方競馬交流 南関東SIII 1500m梢重)

 ▲(1)ニシノデンジャラス   1分35秒9
 ○(2)ファーストキス        5
 ◎(3)ウィーゴー          首
 △(4)バーンザワールド     11/2
 △(5)エスティドゥーラ       1/2
 …………………
  (6)グレンデール
 △(7)フラッシュモブ
  (8)エスティロックオン
  (11)ソードオブホロウ
   ウィンカイザー       出走取消

  単350円  馬複1480円  馬単2130円  3連複1100円  3連単6620円

 ニシノデンジャラスが圧勝した。道中逃げるウィーゴーの1馬身後ろをぴたりと追走。36秒1〜49秒0〜61秒3のペース自体はかなり厳しく、それでいて直線前を軽々とねじ伏せ、あとは独走(5馬身差)だから、少なくとも現時点、このメンバーでは力が違った。「相手は山崎くんの馬(ウィーゴー)と思っていたので早めに動いた。イメージ通りの競馬。ただ、ずっと周囲を気にしながら走っていたし、最後まで余力があった。僕自身は(有力馬を任され)勝ってくれてホッとしてます」(今野騎手)。確かにこのレース、例年実績のある道営所属馬に思わぬポカが多かった。初体験の左回り、やや癖のある(鋭角コーナー)川崎コース。今野騎手、安堵の笑顔は、文字通りジョッキー冥利というやつだろう。

 ニシノデンジャラスは父スペシャルウィーク、500キロ超、栗毛の牡馬。道営新馬戦だけの1勝ながら、パドックの馬体、歩様など威圧感にあふれ、今日この結果が出れば素質開花と納得できる。「前3走3、2、3着(門別)は展開のアヤもあった。今回気になっていた長距離輸送もクリアできたし、期待通り成長している」(堂山芳則調教師)。1500m=1分35秒9は正直平凡だが(昨年インサイドザパーク=35秒4)、直線中ほどからワンサイド。人馬ともセーブした結果とみて正解だろう。次走11月7日「北海道2歳優駿=門別・1800m」。その後JRA移籍のプランもあるらしい。記者本音でいえば「平和賞」→「全日本2歳優駿」を歩んでほしいが、オーナー、トレーナー側は、むろんさまざま戦略を持っている。

 ファーストキス2着。絶好のスタートをいったん下げ、ウィーゴー×デンジャラス、攻防に決着がついたあと再び末脚を伸ばしてきた。鞍上(張田京)の技術もさることながら、馬自身抜群のセンスがある。ウィーゴーはハイラップの逃げで、直線勝ち馬に交されてから急激に失速した。心身両面でまだ若いということとか。プレティオラスの半弟だが、父サウスヴィグラスに替わってスピード優先。しばらく試行錯誤の戦いになりそうだ。4着バーンザワールド、5着エスティドゥーラは、ともに中団からしぶとい伸び。自ら動く脚には疑問もあり、時計がかかる混戦で一発穴…というタイプだろう。未知数の馬ではグレンデールに注目したい。新馬1勝だけの重賞挑戦。結果6着ながら上がり41秒0は勝ち馬と数字上互角だった。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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