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浦和記念展望&ローレル賞回顧&ロジータ記念回顧

  • 2013年11月19日(火) 18時00分


◆浦和記念展望
(11月20日 浦和 サラ3歳以上 別定 JpnII 2000m)

「浦和記念」は、昨今稀少になってしまった“地方脈あり”のレースである。過去17年中(平成8年から交流移行)、南関東馬が7頭優勝。例えば同じ浦和GII「さきたま杯」は17年中優勝馬ただ1頭だから、傾向の違い、温度差がきわめて大きい。JRA勢から超A級の出走が少ないこと、その超A級にしばしば思わぬポカ(21年スマートファルコン逸走など)があること。やや窮屈な位置からスタートする浦和2000mも、結果地元勢に追い風を吹かせてきたといえるだろう。いずれにせよ浦和記念は、南関東馬にとって最後の砦――。記者的には近年そう認識(期待)してきた。

 ただ現南関東の実態、番組の流れ。薄々感づいてはいたものの、今回いざ出走メンバーが出てみると、やはり“愕然…”を禁じえない。TRであったはずの10月23日「埼玉栄冠賞」、その1〜3着、ガンマーバースト、スターシップ、カキツバタロイヤル、すべて登録時点で名前がなかった。翌週27日に、大井「勝島王冠=1800m」が控え、中〜長距離型オープン馬は、大半がそちらへ流れていく情勢らしい。各陣営、“名”ではなく“実”をとること。もちろん競走馬の戦略とステップは、オーナーサイドの決めることだが、それなら、地方競馬上で施行するGレースの意味とはいったい何か…? そう改めて考えてしまう。大相撲の地方巡業、ローカル球場のオープン戦とある意味似ている。浦和近隣のファン、おらが競馬場でホクトベガの力走を“生で見た”(平成8年)感動などは否定しないが、地方主導の統一Gがある以上、それだけでは何とも寂しい。GIならともかく今回GII。せめて一頭か二頭、夢が描ける地元馬に出てきてほしい。もっともその前提になるのは、南関東オープン馬全体のレベルアップ。にわかに解決する問題ではないとも、確かに思うが。

 (1)…波乱含み。1人気[4-3-1-2]は優秀だが、2人気[0-2-3-5]、3人気[0-1-2-7]。馬券的には1人気から薄め…が妙味になるか。20年スマートファルコン→アンパサンドの決着で、馬単7040円。

 (2)…地方馬脈あり。JRA=6勝、2着6回、3着5回と優勢は当然だが、前述通り地方勢も健闘で、川崎=3勝、2着1回、大井=1勝、船橋=2着2回の記録がある。他地区馬も18年キングスゾーン(名古屋)が2着。

 (3)…6〜7歳。3歳=4勝(17年ヴァーミリアンの出世レース)は特筆ものだが、残念ながら今年は出走馬がない。6歳=3勝、2着4回と優勢で、7歳=2勝、5歳=1勝、2着2回と続く。8歳以上は勝てない(2着1回だけ)傾向。

 (3)…先行有利。逃げ=6、先行=5、差し=7、追込=2。コース形態通り先行有利で、“追込”に分類した21年ルースリンド、22年ボランタスも、3角から捲り気味に動いている。ジョッキーでは3度騎乗、2勝をあげた岩田騎手。

 ※データ推奨馬
 ◎マグニフィカ…GI(ジャパンダートダービー)勲章がある6歳馬。依然一進一退だが、前走TRを正攻法で5着なら体調自体は合格点と判断できる。過去10年、地方馬3頭が逃げ切り(モエレトレジャー、ケイアイミリオン、ブルーラッド)。能力比較で見劣るとも思えない。鞍上・山崎誠Jは一昨年ボランタスで優勝。

       ☆       ☆

 ◎シビルウォー     57内田博
 ○エーシンモアオバー  57岩田
 ▲マグニフィカ     57山崎誠
 △ランフォルセ     57戸崎
 △ダイショウジェット  56柴山
 △トーセンマドローナ  56見沢
  グランシュバリエ   56繁田
  ハリマノワタリドリ  56本橋

 冒頭、愚痴めいた前フリを長々書いてしまったが、こと予想、馬券となると、何とも簡潔、シンプルに終わってしまう。焦点は、シビルウォー、エーシンモアオバー、どちらが勝つか。そして3着候補をどう絞るか。いずれにせよこの2頭に、ランフォルセを加えた3連複は、たぶん120〜130円くらいの低配当になるのだろう。迷いのない、目移りしない状況がファンとすると逆に寂しい。

 シビルウォーは交流G4勝、2011年JBCクラシック3着、2012年JBCクラシック2着。超A級にほぼ遜色ない格と貫録を備えており、とりわけ中〜長距離に絶対の自信がある。前走金沢「白山大賞典」3着も、終始大外を回る力の競馬で、印象は敗れて強し。今回エーシンモアオバー1頭に照準を絞った乗り方が予想され、直線並んでしまえばパワーの違いがモノをいう。父ウォーエンブレム。今季8歳ながらレースぶりの勢いなど、むしろ絶頂期を感じさせる。

 3着候補。マグニフィカは3歳春JDD制覇後、昨年京成盃GM1勝だけだが、当時続く「日本テレビ盃」をソリタリーキング、サイレントメロディと接戦し、現実に先行争いを演じたランフォルセに先着している。どこで大駆けがあっても不思議ない力関係。コンビ3戦目の山崎誠J、思い切った騎乗に期待したい。ランフォルセは実績互角、パドックの馬体など、依然威圧感にあふれるものの、近走のレースぶり自体、常に中途半端でメリハリに欠けるうらみがある。記者自身は3連単、6→9→7をまず買って、6→9→2が押さえ馬券。ただ後者で決まると、配当が間尺に合うかどうか。オッズ3.5倍程度が、一つ基準になると思う。

◆ローレル賞回顧
(11月12日 川崎 サラ2歳牝馬 定量54キロ 地方競馬交流 南関東SIII 1600m良)

 ▲(1)クライリング    1分43秒1
  (2)ヴァカンス       11/2
  (3)ストロベリーラン    1
  (4)マリアンズクック    1/2
 △(5)タントタント      7
 ……………………
  (6)レインボーラヴラヴ
 △(8)ペパーミントリボン
 ○(9)ファーストキス
 △(11)エドノミリアン
 △(12)ハイエストパワー
 ◎   トキノセレブ     出走取消

  単320円  馬複2140円  馬単3570円  3連複35710円  3連単129030円

 クライリングが直線鮮やかに抜け出し、実績通り、風評通りの強さをみせた。好スタートをいったん下げて4〜5番手。初コースに気遣ったか前半ややモタつく場面もみられたが、3〜4コーナー、馬群がほどけてからは危なげなかった。あと1ハロン、それこそ一瞬のうちに前を捕え、終いまだまだ余裕があった。「道営で強いメンバーと戦っているから地力が違う。もまれてひるまない根性があるし、ずっと(自分が)乗りたい馬ですね」(御神本騎手)。1600m=1分43秒1。トキノセレブ取り消し(左肩ハ行)を含め、ファーストキス(9着)、エドノミリアン(11着)、確かにライバル凡走の競馬だったが、それでも過去10年中第4位(昨年デイジーギャル=44秒5)。合格ラインには十分届く。

 クライリングは道営新馬圧勝(5馬身差)後、重賞「フローラルC」をノットオーソリティ(4戦3勝、GIII4着)の0.2秒差3着。終わってみれば順当勝ちとしか言葉がない。ハーツクライ×スウェプトオーヴァーボード、奥の深い血統、どっしり幅がある好馬体(470キロ台)。今回タイトルを確実に獲得し、視界が大きく広がった。「一戦ごとに折り合いを覚えてきたし、本質的にマイル以上が向いている。今日は安心して見ていられた」(田中淳司調教師)。今後はそのまま川崎に残り、山崎尋美厩舎に転厩予定。優先出走権を得た「東京2歳優駿牝馬=大井12月31日」、あるいは「全日本2歳優駿・川崎12月18日GI」、両にらみで調整されることになるだろう。

 2着ヴァカンス。道中単騎逃げにせよ、36秒3〜50秒1〜61秒9のペースはかなり厳しく、初1600mも含め胸が張れる内容だった。サウスヴィグラス×ダンスインザダークの血統背景。さらに成長が期待できる。中団からじわりと伸びたストロベリーランも立派な3着。こちらは新馬勝ちだけのキャリアしかなく、そう思うと勝負根性、センスなど大きく光る。2番人気ファーストキス、3番人気エドノミリアンとも好位からジリ下がり。明確な敗因はつかめないが、もまれる展開になったときの対応力と集中力、現時点で課題残しということか。穴馬に推したタントタントは素軽く2〜3番手を進んだものの、いざ追ってからスタミナ切れ。実績のある大井短距離(1200〜1400m)で、改めての狙いになる。

◆ロジータ記念回顧
(11月13日 川崎 サラ3歳牝馬 定量54キロ 地方競馬交流 南関東SI 2100m良)

 ◎(1)カイカヨソウ    2分16秒3
 △(2)ケンブリッジナイス   3
 △(3)オキナワレッド     首
 △(4)エイシンルンディー  21/2
 ○(5)イチリュウ       3/4
 ………………
  (6)トーセンレディ
 ▲(8)ローズベビークリス
  (11)ハクシュウベリー
 △(12)マヒナズヒル

 単120円  馬複740円 馬単920円  3連複3400円  3連単8110円

 カイカヨソウが、改めて世代牝馬No.1を証明した。単オッズ1.2倍、それに応えた重賞通算6勝目。しかしこれほど明快、完璧な勝ちっぷりは久々で、スタートからゴールまで危ういシーンがまったくなかった。道中好位のインをスムーズに進み、直線GОサインと同時に1頭別次元の瞬発力。今春「桜花賞」をよもやの敗戦(7馬身差3着)、以来長く引きずっていたモヤモヤを、一挙に断ち切った勝利ともいえるだろう。「落馬しなければ勝てる…今日はそう自分に言い聞かせて乗りました。終始反応よく動いてくれたし、終わってみればやっぱり強い」(今野騎手)。同Jは2月「ユングフラウ賞」からコンビを組み、前走の戸塚記念まで以後5戦1、3、1、4、3着。数字上は十分合格点としていいが、人気、期待値の高さゆえプレッシャーがどうにも重い。勝利インタビュー。深い安堵の表情に、こちらも何やらホッとした。

 カイカヨソウは前述通りこれで重賞6勝目(道営時含む)。ティンバーカントリー×エリシオの血統背景で、スピードというより、追っての味、勝負強さに特徴がある。今回の場合、半信半疑だった左回りにはっきりメドをつけた点が、何より大きい収穫だろう。「鞍上が焦らず、馬のリズムで走らせてくれた。少し間隔を開けて使った方がいいタイプ。そのぶん(戸塚記念3着から中2か月)今日は状態もフレッシュだった」(川島正行調教師)。体質、気性などは、同厩舎クラーベセクレタに似ているかもしれない。牝馬らしく繊細で天才型。次走未定とされたが、師コメントからは12月4日「クイーン賞=GIII」はやや厳しく、明けて1月「ТCK女王盃」、2月「エンプレス盃」あたりが目標か。来春早々現役引退が決定している現ダート女王メーデイア。記者自身は一度その対戦も見たいのだが。

 2分16秒3の時計は過去10年第5位。良馬場とすると水準だが、ペース自体1000m通過63秒1だからナマぬるく、勝者カイカヨソウ以外、そうほめられない内容と思う。一気に逃げたオキナワレッド3着、道中折り合いをつけ瞬発力を生かしたケンブリッジナイス2着。ただ前者・見沢譲二、後者・張田京、いずれも熟達のベテランで、それぞれ馬の個性を生かし切ったあたり、改めて感じ入ってしまう部分はやはりある。2番人気イチリュウは、カイカヨソウをマークするレースぶりで直線失速。川崎2100mなら条件はいいはずで、当日プラス8キロ、まだ絞り切れないということか。ロジータの孫ローズベビークリスも好位からジリ下がり。経験を重む段階は確かだが、現時点で地力不足、パワー不足は否定できない。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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