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全日本2歳優駿展望&ゴールドカップ回顧

  • 2013年12月17日(火) 18時00分


◆全日本2歳優駿展望
(12月18日 川崎 サラ2歳 定量55キロ JpnI 1600m)

 「全日本2歳優駿」は平成9年統一G移行。今年で新生以来、16年間の歴史が積み上げられた(昭和25〜平成8年まで地方競馬交流として施行)。各年若干のレベル差、温度差は2歳戦ゆえだろうが、それでもその16年、おおむねGIにふさわしい優駿が制してきた。例えばJRAからは、後に“国際級”まで飛翔するアグネスワールド、アグネスデジタル、ユートピア。対して地方側からトーシンブリザード、フリオーソ、ラブミーチャンなど、殿堂入りの名馬が並ぶ。予想、馬券の首尾はともかく、記者の過ごす1年間、最もワクワクするレースであるとは毎年思う。

 さて今年の顔ぶれ。古くさいかもしれないが群雄割拠、そんな言葉が浮かんで嬉しくなる。JRA5頭、地方9頭、ひとまず大半に“勝負権”がイメージでき、予想、馬券は、ファンそれぞれ好みと印象で(地元ひいきを含め)、さまざま狙い馬が選択できる。移籍、トレードはさておき、JRA、北海道、大井、船橋、浦和、笠松、6場所からNo.1をめざすメンバーが立ち上げられたこと。ついでに書けばこの種のレースは、過去施行された「ダービーグランプリ=水沢」「全日本アラブ大賞典=大井」などが理想形と思う。未知の馬を較べ、推理し、それを馬券に託す愉しさ。競馬の原点、少なくとも地方主導のダートGには、可能な限りそんな状況を期待したい。

 (1)…波乱含み。1人気[3-2-3-2]、2人気[0-3-1-6]、3人気[3-1-2-4]。イメージより荒れムードで、過去10年、1→2人気の決着は1度しかない。昨年は3→7人気、馬単9600円。上位拮抗の見方が妥当か。

 (2)…JRA中心。JRA=8勝、2着3回、3着5回と大きくリード。ただ地方側も18年フリオーソ、21年ラブミーチャン優勝などノーチャンスではなく、北海道=2着4回も特筆できる。昨年は船橋ジェネラルグラント2着。

 (3)…兵庫ジュニアグランプリ。園田「兵庫JG」勝ち馬からプライドキムら3頭優勝。最も密接なTRといえる。「北海道2歳優駿」からもオーブルチェフら2頭優勝だが、アベレージは少し低い。「平和賞」「ハイセイコー記念」からの連破はまだない。

 (4)…実績重視。勝ち馬平均キャリア=3.9戦、同2着馬=5.9戦と意外なほど少ないが、連対20頭中19頭がダート2勝以上だから、基本的に実績重視。逃げ=4、先行=6、差し=9、追込=1。昨年のサマリーズなど逃げ馬はやはり怖い。

 ※データ推奨馬
 ◎ニシケンモノノフ…道営、JRA、ダート計5勝。前走「兵庫JG」も好位からきっちり抜け出す完勝だった。父メイショウボーラーはフェブラリーS勝ち馬で1600mベストと判断できる。今年最も乗れている福永祐一騎手。このレースは18年トロピカルライト、22年リアライズノユメでそれぞれ2着。

       ☆       ☆

 ◎ハッピースプリント   宮崎光
 ○マキャヴィティ     戸崎
 ▲ブラックヘブン     有年
 △ニシケンモノノフ    福永
 △ナイトバロン      本田重
 △メイショウイチオシ   武幸
 △サーモピレー      御神本
  スザク         武豊
  ダイイチトゥルース   武士沢

 前述通り今年はハイレベルの上位拮抗。中でもハッピースプリントにはズバ抜けた強さを感じる。道営ダート4戦4勝(JRA・函館芝5、5着)。とりわけ前走「北海道2歳優駿=門別1800m」は、邪魔が入らなければ勝てる…鞍上の強い自信が伝わるレースぶりで、道中ただ1頭外々に進路をとり、はたして直線GOサインが出るや一瞬のうちに突き抜けた。510キロ超、何ともパワフルな馬格と走法。父アッミラーレはJRAダート6勝、爆発力に定評があったサンデーサイレンス直仔で、血統的な裏付けも十分といえる。今回川崎へ早めの入厩、左回りの追い切りも豪快に動いてみせた。

 ニシケンモノノフ、マキャヴィティは、「兵庫JG」1、2着馬。実績、完成度はむろん前者だが、後者は当時初ダート。道中後手後手に回りながら、直線1/2馬身差まで迫ったから器が大きい。父デュランダルらしく末脚強靭。川崎1600mが舞台なら鞍上・戸崎騎手、改めて腕の見せどころでもあるだろう。ブラックヘブン▲は正直、ひいきが入るが、それでも前走「ハイセイコー記念」の勝ちっぷりは素晴らしかった。3番手から横綱相撲で大井1600m=1分42秒2。昨年ソルテをおよそ1秒凌ぐから、こと素質は見劣りしない。売り出し中の父パイロ。半兄ディープハント(船橋記念2着)の良血だ。

 以下、転入初戦の「平和賞」大外一気、能力と個性を同時に示したナイトバロン、JRA1800m2勝、切れとパワーを兼備するメイショウイチオシ。すんなり先行して時計勝負ならサーモピレー、スザクも差がないだろう。記者自身の馬券は馬単、ハッピースプリント1着固定。当日の気配を加味して強弱をつけることを、今現在イメージしている。

◆ゴールドカップ回顧
 (12月11日 浦和 サラ3歳以上 別定 南関東SIII 1500m稍重)

 ◎(1)ジョーメテオ   1分34秒7
 ▲(2)タマモスクワート   21/2
 △(3)サイオン        頭
 △(4)スマートジョーカー  11/2
 ○(5)ナイキマドリード    頭
 ………………
 △(6)ナムラオウドウ
 △(7)メイショウパーシー
 △(9)ウインペンタゴン

 単320円  馬複2560円  馬単3800円  3連複3740円  3連単23360円

 ジョーメテオが会心の捲りで重賞初制覇を果たした。新鋭メイショウパーシーの逃げを、ケンブリッジエル、ロビンフッドら、人気薄がつつく展開。ジョーメテオは前半後方にじっくり構え、3コーナー手前、一歩先に動いたサイオン、タマモスクワート目標に、大外から爆発的な脚を使った。直線入り口で堂々先頭。そのまま余裕を残して押し切った。「馬の気持ちに合わせてスパートした。最初に乗ったとき(サンタアニタトロフィー2着)から、南関東重賞はいつでも勝てると思った馬。ようやくいい結果が出てホッとしてます」(坂井英光騎手)。同馬は浦和転入後、重賞2、2、3、6、4着。敗れて強し…のレースが続き、それだけに鞍上のコメントは実感がこもっていた。

 ジョーメテオは、ネオユニヴァース×ジョーセクレタリー(トニービン)の7歳牡馬。JRA4勝を1700〜1800mであげ、しかし転入後はスロー〜平均ペースだと強烈にカカってしまい、それが自身を勝利から遠ざけていた(前々走埼玉栄冠賞=1900m6着など)。年齢を重ね、環境が変わり、馬のタイプ(精神面)が違ってきたと推測する。「ここまでさまざま試してきたし(距離・コース)、今日地元ファンの前で勝てたからよけい嬉しい。鞍上も最高に乗ってくれました」(小久保智調教師)。気性はともかく、パドックの馬体、気配などどっしり重厚。本質晩成型と思えるだけに、来季適条件(マイル前後)でさらに前進が期待できる。同師は「今後はJRA挑戦も視野に入れて…」と付け加えた。左回り1400〜1600mとすると、「プロキオンS」「武蔵野S」あたりがひとまず浮かぶ。

 2着タマモスクワート。結果的に昨年(ナイキマドリード優勝)同様の完敗だが、好不調の波を繰り返しながらすでに8歳、それでいて再び結果を出すあたりが地方ダート向きの逞しさ、打たれ強さと納得する。ゴール際、サイオンに競り勝った闘志が、本来同馬の売りだろう。そのサイオンも自ら動く競馬で内容十分。今後大きな昇り目はないにせよ、適距離が再確認できた点で収穫があった。スマートジョーカーは久々が響いたか行き脚ひと息。それでも直線の伸びは合格点で、良化しだい、展開ひとつでもう一度チャンスが出る。ナイキマドリードは、抜群のスタートを切りながらメイショウパーシーに先を譲った。どう判断するか難しい。目標にされるのを嫌ったためか、あるいは状態に自信がないのか。いずれにせよ不完全燃焼。記者自身は次走再び正念場と考える。メイショウパーシーは新鮮さを買われ1番人気。しかし後続に早めに来られ、オープンでのキャリア不足が出てしまった。持ち時計は互角でもそれが通用しない難しさ。競馬のミステリアスな部分を、改めて実感するレースでもあったと思う。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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