◆東京2歳優駿牝馬展望
(12月31日 大井 サラ2歳牝馬 定量53キロ 地方競馬交流 南関東SI 1600m)
「東京2歳優駿牝馬」は昭和52年新設。すでに36年の歴史を重ねる。地方馬限定戦にもかかわらず“SI”をうたうところがこのレースの重みといえ、1着賞金も翌春牝クラシック「桜花賞」「プリンセス賞」と同じ2000万円。実際その優勝馬は、カシワズプリンセス、ラヴァリーフリッグ、ネフェルメモリー、さらにクラーベセクレタなど、牡馬相手にそれこそSI級の実力をみせてきた。もう一つ、古い話ながら語り継ぎたいのが第3回(昭和54年)を勝ったツキメリー(父シャトーゲイ)。同馬は結局一流牝馬と女傑、その中間くらいで競走生活を終了し、しかし早めの繁殖入り、日本ダービー馬メリーナイスの母となった。「東京2歳優駿牝馬」、レースの注目度、評価が一挙に高まったことは言うまでもない。
改めてファイルをめくると、他にも好例はいくつもあった。第5回優勝ラドンナリリー(父キタノカチドキ)がリンデンリリー(エリザベス女王杯)を出したこと、第21回ダイヤモンドコアがナイキハイグレード(羽田盃)を生んだこと。少し違う意味にはなるが、第15回カシワズプリンセスは一世代(ケイアイメモリー)を隔て、第32回ネフェルメモリーとともに、このレース“祖母→孫娘”制覇を果たしている。血を感じさせる重賞、あるいはタイムトンネル――。もちろんそれは、競馬の持つ最も奥深いロマンといっていいだろう。12月31日、まさしくオーラス。しかし大井競馬にはまだお愉しみが残っている。
(1)…波乱含み。1人気[5-2-0-3]は合格点だが、2人気[3-0-0-7]、3人気[1-0-1-8]と確率があまりよくない。昨年は1→7人気で馬単1460円。ヒモが狂う傾向か。
(2)…3場脈あり。船橋=5勝、2着4回、3着1回とリードするが、大井=3勝、2着1回、3着5回、川崎=2勝、2着5回、3着4回とほとんど差がない。他地区からの参戦は[0-0-0-8]と低調。
(3)…実績と経験。優勝馬平均キャリア=5.8戦、同2着馬=6.8戦。2歳牝馬同士のイメージ以上に実績と経験がモノをいう。北海道からの転入馬が優秀で、過去10年=6勝、2着6回、3着3回。
(4)…逃げ=4、先行=6、差し=7、追込=。総じて道中ペースは上がらないが、それでも差し、追い込み馬が意外に届く。18年ブラックムーンなど四角9番手から大外一気を決めている。
※データ推奨馬
◎クライリング…19年優勝マダムルコント、21年2着オノユウなど、好走例が多い道営→川崎の転厩パターン。同馬の場合、前走すでに「ローレル賞」を勝ち、能力と南関東適性を実証している。父ハーツクライ、本格派の追い込み馬。
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◎ノットオーソリティ 石崎駿
○ブルーセレブ 森
▲クライリング 山崎誠
△コマンドゥールキイ 御神本
△ラブミーブルー 真島
△ストロベリーラン 楢崎
△ティアラン 石崎隆
イグレシアス 吉原
ファーストキス 張田京
タントタント 服部茂
ノットオーソリティの能力は一枚別格と判断できる。道営4戦3勝。いずれもきわめて濃密な内容で、新馬戦など後続を3.2秒(16馬身)引き離し、続く2戦目もパンパカパーティ(南関転入後オープン2連勝)を問題にしなかった。スウェプトオーヴァーボード×サンデーサイレンス、社台F生産。スピード、瞬発力に加え抜群のセンスがあり、事実前走大井初戦(1600m)も道中スムーズに折り合い、直線GOサインが出るや見事に弾けた。川島正行厩舎は、道営出身馬を手がけ3度優勝(ネフェルメモリー、クラーベセクレタ、カイカヨソウ)。先達と比較してもオーソリティの場合、完成度、自在性でむしろ優る。
馬券(馬複・馬単)は相手探しと考えた。実績、データ面ではクライリング、ラブミーブルー(GIIIエーデルワイスSでオーソリティに先着)だが、あえて狙ってみたいのがブルーセレブ(父アサクサデンエン)。4戦2勝、とりわけ前々走「若武者特別」の大外一気が強烈で、当時1500m=1分34秒8だから時計面でも遜色ない。初コースをどう乗るか。今回新コンビ・森泰斗Jは追って達者だ。地元コマンドゥールキイも3戦2勝、牡馬相手の「ゴールドジュニアー」3着からはまだ底をみせていない。もう1頭、今回盲点になりそうなのがストロベリーラン。前走キャリア2戦目のローレル賞3着は看過できない。小柄(400キロ台)でも芯の強い実戦派とイメージする。