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京浜盃展望&エンプレス杯回顧

  • 2014年03月11日(火) 18時00分


◆京浜盃展望
(3月12日 サラ3歳 定量56キロ 南関東SII 1700m)

「京浜盃」は南関東クラシック、直近かつ最重要のトライアル。過去36年、その優勝馬は第1回ハツシバオーを皮切りに、ホスピタリティ、サンオーイ、ロジータ、さらにトーシンブリザード、シーチャリオット…。誇張でなく歴史的なダート王が名前を連ねる。「ジャパンダートダービー」創設(11年)、「東京王冠賞廃止」(14年)。確かに“3冠”自体が変遷したが、それでもこの京浜盃、南関東(近年は地方競馬全体)馬にとって、最高峰の登竜門、試金石であることは論を待たない。実際記者個人的には、ほぼ例外なく1年間で最もワクワクするレースだった。

 もっとも焦点と見どころ、さらに馬券的な狙いは、各年ごとパターンが明確に分かれている。1…1強の相手探し、2…上位拮抗の群雄割拠、3…混戦で成長株注目――。言うまでもなく今年の場合1だろう。ダート5戦負け知らず、前走交流GI「全日本2歳優駿」を楽々と制したハッピースプリント。同馬は2歳にして、NAR「年度代表馬」にも選出された(ラブミーチャン以来4年ぶり)。JRA移籍、ドバイ挑戦、さまざま選択肢はあったと聞くが、現実に1月・森下淳平厩舎(大井)入厩、ひとまず「東京ダービー」まで南関東スケジュールが明言された。夢がふくらむ。どう頂点に昇っていくか何とも楽しみ。むろんこうしたケース、相手(2着〜3着)を確実にヒットしたい。いつにも増してそんな“欲”が自然と出てくる。

 (1)…上位拮抗。1人気[5-3-0-2]と優秀だが、2人気[2-3-1-4]、3人気[1-1-2-6]も合格点。ここ2年は、2人気が1人気を逆転した。純然たる伏兵は総じて厳しく、過去10年、6人気以下の優勝は1頭だけ。

 (2)…船橋優勢。船橋=7勝、2着4回、3着3回と大きくリード。前10年間で1〜3着独占が2度ある。次いで川崎=2勝、2着1回、3着2回、大井=1勝、2着4回、3着5回。浦和は23年キスミープリンス(2着)以外好走例がない。

 (3)…転入馬。過去10年、北海道からの転入馬がトップサバトン、ジェネラルグラントなど4頭優勝、2着5回と断然の実績をあげている。案外侮れないのが「ニューイヤーカップ」勝ち馬で、ベルモントストーム優勝、ゴールドメダル2着。

 (4)…自在型。逃げ=5、先行=5、差し=8、追込=2。脚質、決まり手はバラエティに富んでいるが、強い馬が自らレースを作る傾向もあり、結果的に先行有利。4コーナー2番手から抜け出した昨年ジェネラルグラントが理想形か。

 ※データ推奨馬
 ▲サーモピレー…GI「全日本2歳優駿」3着のクロフネ産駒。前走初コースの大井「雲取賞」を小差4着と合格点の内容で発進した。自在型。510キロ台の大型馬でまだまだ上積みがイメージできる。川島正行厩舎はこのレース3勝。山崎誠騎手は24年ベルモントレーサーで3着。

       ☆       ☆

 ◎ハッピースプリント   吉原
 ○ドラゴンエアル     真島
 ▲ダンスパフォーマー   御神本
 △ファイト        張田京
 △サーモピレー      山崎誠
 △レガルスイ       繁田
 △ファイヤープリンス   見沢
  パンパカパーティ    左海
  キットピーク      石崎隆
  ドミヌス        石崎駿

 ハッピースプリントがどう勝つかだ。GIを含むダート5戦全勝。何より特筆すべきは一貫レースぶりの余裕と自信で、前走2歳優駿など、逃げるスザクを4コーナー射程内に捕えると直線は迷わず大外。それこそ一瞬のうちに突き抜けた。別次元、圧倒的な爆発力。当時田中淳調教師(道営)は「ちょっといない馬ですね」とコメントし、まさしくそれは実感であり的確な同馬評とふり返る。520キロ台と大柄ながらバランスよくしなやかな好馬体。歩様、身のこなしも、ごく“自然体”という印象があった。大井入厩後、長めから快時計の追い切り3本。じっくり乗れる大井1700m(外コース)も、むろんうってつけの舞台だろう。

 相手探し。筆頭にみたドラゴンエアルは南関適性の高いタイムパラドックス産駒で、パワフルな末脚に特徴がある。昨秋ハイセイコー記念2着は大外一気。以後不器用さが災いし足踏みだが、今回直線の長い大井1700mなら一転完全燃焼を期待していい。ダンスパフォーマーは道営時、ハッピースプリントに次ぐNo.2〜3の評価があった。小柄でも父アドマイヤドンらしい芯の強さ。前走大井転入2戦目「若獅子特別=1800m」を制し、ここへの態勢は整っている。レガルスイ、ファイトは、準重賞「雲取賞」2、3着馬。ともに自在性兼備のスピード型で、今回1700mをこなせばもうワンランク上の夢が出る。ニューイヤーC1、2着ファイヤープリンス、パンパカパーティの比較は大井適性を含め素直に前者上位と考えた。データ推奨サーモピレーは本質ジリ脚の懸念もあり、道中前々が条件になる。

◆エンプレス杯回顧
(3月5日 川崎 サラ4歳以上牝馬 別定 JpnII 2100m不良)

 ▲(1)ワイルドフラッパー   2分12秒1
 ◎(2)アクティビューティ     大差
 ○(3)サンビスタ          鼻
 △(4)クラーベセクレタ       3
 △(5)アムールポエジー      3
 ………………
  (6)トウホクビジン
  (7)ママキジャ
 △(8)ビタースウィート
 △(10)エミーズパラダイス

  単130円  馬複310円  馬単390円  3連複270円  3連単770円

 ワイルドフラッパーが圧勝した。絶好のスタート。内から先手を主張したエミーズパラダイスにいったんハナを譲ったものの、2週目向正面からは押さえきれない手応えで一気に先頭。直線ほぼ馬なりのまま後続に大差(11馬身)をつけた。2100m=2分12秒1、レースレコード。降雨で軽い馬場は確かだが、それにしてもこの時計は牡馬GI「川崎記念」でもなかなか出ない。「馬の状態も雰囲気も素晴らしかった。自分は乗っていただけ。もっと大きいところが狙えると思う」(C・デムーロ騎手)。前走「TCK女王盃」、メーデイアの2着。馬自身の本格化、地方ダート適性が見事に噛み合ったとしか言葉がない。

 ワイルドフラッパーは、父ゴーストザッパー×母スモークンフローリックの5歳馬。JRAから一貫ダート[6-4-0-5]。休み休みの戦歴だけに改めて相当の素質を感じる。今回この結果が出てしまえば唯一ネックだった“左回り”も問題ない。「前走が手応えのある競馬だったし、自信を持って臨みました。前へ行って速い上がりを使える、底知れないエンジンを持っている」(松田国英調教師)。JRA勢の陣容、とにかく懐が広く層が厚い…が、ごく素直に記者実感。近年の女傑というなら、ラヴェリータ、ミラクルレジェンド、さらにメーディア。今日のレース(内容)だけをとるならワイルドフラッパー、しばらく“絶対女王”で当然かもしれない。

 アクティビューティ2着。スタートでやや遅れたサンビスタと鼻差を思えば、正直恵まれた連対だった。終始勝者を意識したソツのないレースぶり(先行策)からも、今回完全燃焼と納得する。その3着サンビスタは出遅れを焦らず折り合い、直線インを突いてしぶとく伸びた。父スズカマンボ(天皇賞・春勝ち馬)。当然まだまだ伸びしろがあるだろう。4着クラーベセクレタは、勝負どころで前3頭に置かれてしまった。6歳春、燃え尽きてはいないものの、3〜4歳ピーク時(ジャパンダートダービー3位入線など)と較べると、心身両面で翳りがある。繁殖入り、いい仔を出すことに夢をかけたい。アムールポエジーはジリ脚に大きな課題。ビタースウィートは道悪、先行馬ペースの距離2100m、闘志に火がつかないままレースが終わった。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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