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桜花賞展望&ダイオライト記念回顧

  • 2014年03月25日(火) 18時00分


◆桜花賞展望
(3月27日 浦和 サラ3歳牝馬 定量54キロ 地方競馬交流 南関東SI1600m)

 いよいよ南関東クラシックが始動する。元々3月下旬とは思い描くイメージよりよほどうすら寒いが、今年の場合なおさらそれを実感する。東京最低気温が5度を境に足踏みし、仮に昼間15度前後に到達しても北風など意外に強く、戸外に出たとき何やら踏み出す一歩が遅れてしまう(たぶん中〜高年ゆえの反応)。先週時点、首都圏の桜開花は3月28日と発表された。が、正直体感となると三寒四温。さて気象庁の“予想”が正否かどうか。もちろん当たってくれればホッとする。

 あまり“益”もない話だが、「浦和桜花賞」について思い入れを少し書く。記者はこのレース毎年浦和競馬場で観戦し、その後「JR南浦和駅」までぶらぶら歩く。およそ15分。目的は道すがらにある小公園で、いつもこの時季、見事な枝ぶりの桜が開花のときを今や遅しと待っている。しばらく佇む。1本煙草を吸いながら、直前に見た桜花賞のシーンをプレイバックする。少し気取っていえば秘かな悦楽。いずれにせよその反芻(自己満足)が何とも愉しい。近年の名牝というなら18年チャームアスリープ、21年ネフェルメモリー。勝ちっぷりが鮮烈であればあるほど、佇む時間が長かったような記憶がある。そしてきわめつけはやはりロジータ。平成元年、彼女は桜花賞で初タイトル、以後1年を風のように走り抜け、地方競馬最高峰の名牝、女傑へ昇りつめた。当時の桜花賞、今振り返って確かに低レベル(時計・相手関係)としかいえないが、それでも全身から湧き立つような躍動感、不思議なほど調和された闘争心と落ち着き。形容するなら“太い幹の桜”、そう確信したことを思い出す。

 (1)…波乱含み。1人気[2-2-2-4]、2人気[1-1-2-6]、3人気[2-1-1-6]。現実に過去10年、馬単は5度まで万馬券の波乱だった。昨年はカイカヨソウが3着と敗れ11260円。

 (2)…川崎注目。4場所いずれも脈ありの記録だが、中で特筆すべきは川崎=5勝、2着4回、3着2回の活躍か。船橋=2勝、2着3回、大井=2勝、2着2回。浦和も1勝しているが今年は出走馬がない。

 (3)…実績微妙。TR「ユングフラウ賞」優勝馬[1-4-1-3]、同2着馬[2-0-2-4]。どちらも意外ほど信頼度が低い。SI「東京2歳優駿牝馬」ウィナーも21年ネフェルメモリーが勝っただけ。

 (4)…先行型。逃げ=6、先行=6、差し=6、追込=2。“牝馬同士千六”のイメージに反しペースは上がらず先行有利。4コーナー5番手以降からの優勝は16年カネマサヴィーナスただ1例。

 ※データ推奨馬
 ◎テイクユアチョイス…出走頭数のわりにアベレージが高い大井所属馬。わずか3戦のキャリアだが、新馬、桃花賞と価価ある2勝。父ゴールドアリュール、自在型、天才肌のマイラーを連想させる。桃花賞勝ち馬から、22年ショウリダバンザイ優勝、20年2着インカローズ。真島騎手は当時そのショウリダバンザイに騎乗した。

       ☆       ☆

 ◎ノットオーソリティ   石崎駿
 ○ブルーセレブ       森
 ▲テイクユアチョイス   真島
 △クライリング      山崎誠
 △シャークファング    矢野
 △タントタント      繁田 
 △イエスアイキャン    山田信
  コマンドゥールキイ   御神本
  チャプレット      左海
  オープンベルト     和田
  イグレシアス      張田

 ノットオーソリティが総合力で上回る。前走TR「ユングフラウ賞」は出たなり、馬の気分に合わせた先行策。道中ごく自然流に折り合い、直線並んできたシークファングを余裕十分に突き放した。道営を通じ7戦5勝、GIII「エーデルワイス賞」4着。昨暮れ「2歳優駿牝馬」こそ致命的な出遅れで落としたが、この結果が出てしまえば、スピード、切れ、競馬センス、改めて一枚別格と納得できる。ゆったり伸びやかな馬体と走法。血統背景(スウェプトオーヴァーボード×サンデーサイレンス)を含め、距離もマイル前後がベストだろう。手の内に入れた鞍上が自在に捌く。

 ブルーセレブは、オーソリティが敗れた優駿牝馬で大外一気。時計こそ平凡(古馬C1レベル)だが、勝ちっぷり自体は“豪脚”の言葉がそのまま当たった。前走ユングフラウ3着もここへの布石とすれば合格点がつく。父アサクサデンエン(安田記念馬)らしくハマって抜群の切れがある。テイクユアチョイスは前述通り天才型。新馬→ゴールドJ→桃花賞、いずれも中間3〜4か月のブランクがあり、それでいてきっちり結果を出すあたり、センス、勝負強さが並みではない。パドックなど少々イレ込み加減でも、いざゲートが開くと一転集中力を発揮する。

 今年は伏兵陣もレベルが高い。クライリングは道営1勝で東上、SIII「ローレル賞」を圧勝し川崎・山崎尋美厩舎へ移籍。続く優駿牝馬小差3着。今回ぶっつけのステップながら入念な乗り込みで9分通り仕上がった。瞬発力型。父ハーツクライならおそらく“本番”に強いだろう。ユングフラウ2着シャークファングには“原石”の魅力を感じる。ムラな成績、首の高い走法などつかみづらい部分を残すが、反面気分よく走ってパワー全開。事実ユングフラウは直線入口、オーソリティをひと呑みするかの勢いがあった。以下、ケレン味なく先行してタントタント、じっくり末脚勝負に構えてイエスアイキャン。コマンドゥールキイは前走完敗で出張戦と左回りに課題を残した。

◆ダイオライト記念回顧
(3月19日 船橋 サラ4歳以上 定量 JpnII 2400m梢重)

 ○(1)ニホンピロアワーズ  2分34秒6
 ▲(2)トウショウフリーク    2
 △(3)サミットストーン     3
 △(4)ゴールドバシリスク    4
 ◎(5)ムスカテール       首
 ………………
 △(6)ナイスミーチュー 
 △(8)アウトジェネラル

  単210円  馬複710円  馬単1110円  3連複14170円  3連単32420円

 ニホンピロアワーズが貫録の勝利を収めた。道中逃げるトウショウフリークの3〜4番手。終始スムーズに折り合いがつき、直線中ほどGОサインが出るや一気に弾けた。あっという間、それも最後余裕を残した2馬身差。完勝という以外に言葉がない。「豊さんの馬(トウショウフリーク)を目標にイメージ通りの競馬ができた。改めて強さをアピールできて嬉しい。今日は馬に気持ちが入っていました」(酒井学騎手)。この日のパドック。同Jが騎乗の直後、アワーズの首さしを愛おしそうに何度も撫でいたシーンを思い出す。人馬一体の信頼感。競馬とはやはりそうした部分が勝敗を分け、同時に観戦者としてはそこがミステリアスな魅力でもあると、改めてそう思ったりする。

 ニホンピロアワーズは、ホワイトマズル×アドマイヤベガの7歳牡馬。ダート通算12勝、うち統一G6勝、一昨年「JCダート」制覇はもちろん、本格的な長距離(2100〜2500)も金沢、名古屋で勝っているから、生来パワー、持久力のタイプかもしれない。記者予想段階、一つ半信半疑に思えたのは、昨今南関東4場所に通じる“重い馬場”だが、今日の結果からは問題なかった。「ずっと好調をキープしていたし、実績からは負けられない相手。馬が気分よく走ってくれたことが何より大きい」(大橋勇樹調教師)。昨暮れ「東京大賞典」、ホッコータルマエ、ワンダーアキュートに完敗は、馬場と展開、微妙なフィーリングが明暗を分けたと納得か。いずれにせよ血統は晩成型。今後もダート王道を歩んでいくことは間違いない。

 2着トウショウフリークは前走川崎記念とは一転して落ちついた逃げが打てた。武豊さすがの騎乗。絶対能力で勝者アワーズには一歩譲るが、四肢がゆったり伸びた体型など本質的に長距離向き。相手しだい、展開しだいでGI〜GII制覇の脈が出る。サミットストーン、ゴールドバシリスク、南関東勢が3、4着と健闘した。ともに転入馬だから手放しでは喜べないが、厩舎の水が合っていること、個性に合わせたステップを踏んでいること。とりわけサミットはケレン味ない先行で粘りに粘り、結果馬券に絡んだのから地方ファンとしては少なからず元気が出る。◎ムスカテールは期待外れ。確かにスタートはひと息だったが、すぐ巻き返して好位に取りつき騎乗自体は隙がなかった。「道中挟まれ(3〜4角)、そこで馬が嫌気をさしてしまった」(岩田騎手)。言い訳めくがこのケース、次走正念場というしかない。ナイスミーチューは不器用、大跳びの走法で、本質地方G適性に疑問がある。アウトジェネラルは結果論ながらパドックから馬が小さくみえて覇気がなかった。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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