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ベストウォーリアが断然人気に応え4馬身差V GI初制覇!/マイルCS南部杯・盛岡

  • 2014年10月14日(火) 18時00分

(撮影:高橋正和)



なんとかJpnIらしいレースになった

 中央勢もGIII(JpnIII)勝ちまで、しかも6頭中3頭は重賞タイトルがないという、例年に比べてやや手薄なメンバーで争われた南部杯。そんななかでも実績と勢いにまさる4歳馬、ベストウォーリアが単勝1.2倍という人気にふさわしい強いレースを見せた。日本テレビ盃の回顧で、「勝ったクリソライトだけが、なんとかJBCクラシック・トライアルとしての日本テレビ盃のレベルを維持したといえそうだ」と書いたが、今回もベストウォーリアのパフォーマンスで、なんとかJpnIらしいレースになった。

 互角のスタートからハナに立ったのは、予想されたとおりポアゾンブラック。ベストウォーリアは、1馬身と差のない2番手にピタリとつけた。ベストウォーリアは中団あたりにつけて直線末脚勝負という印象だが、それは中央でのレースが、テンの速い馬が何頭かいて、緩みのない流れになることが多いため。地方で行われるダート交流重賞では、中央馬は4〜6頭ほどで、これに真っ向勝負になる地方馬はせいぜい1〜2頭。自然と流れはそれほど厳しいものにはならず、中央で中団や後方につけている馬でも好位につけることができる。というより、そもそも緩い流れで中団や後方につけたのでは勝負にならない。たとえばGI級の馬でいえば、中央では逃げたことがないホッコータルマエ(昨年のJBCクラシック)や、ワンダーアキュート(昨年の帝王賞)などが、相手関係や枠順によっては逃げの手に出ることがあるというのは、そういうことだ。

 競りかける馬もなく、すぐに隊列が決まって流れが落ち着いた。ベストウォーリアがポアゾンブラックに馬体を併せたのがちょうど残り200mのところで、残り100mの手前から一気に突き放しての圧勝。良馬場での勝ちタイムは1分35秒9で、前半800mが47秒5で、後半が48秒4というもの。かつては1分37秒台や38秒台という決着もめずらしくなかった南部杯だが、エスポワールシチーが勝つか2着の過去5年(東京競馬場での開催となった2011年を除く4回)では、稍重でオーロマイスターが勝った2010年が1分34秒8というコースレコードでの決着で、それ以外の3回はいずれも良馬場でエスポワールシチーが勝ち、すべて1分35秒台の決着。今年と勝ちタイムがまったく同じ1分35秒9だった2012年のエスポワールシチーの上がり3F(600m)は35秒5で、今年のベストウォーリアの上がり3Fもまったく同じだった。ただ今年夏以降の盛岡の馬場は、マーキュリーCがレコード決着だったように時計の出やすい馬場で、それを加味すれば、ベストウォーリアのパフォーマンスはGI級ではあるものの、エスポワールシチーの域にはやや及ばないといったところだろうか。

 おそらくベストウォーリア自身は、まったくいつもどおりの自分のレースをして、前に交わすべき馬がたまたまポアゾンブラックしかいなかったというだけのことなのだろう。距離適性的には1400〜1600mがベストのようで、そういう意味ではJBCスプリントが1200mで行われる今年はレース選択に悩むことになるのではないか。

 話は逸れるが、それを考えると昨年はJBCスプリントが1400mで行われ、勝ったエスポワールシチーには幸運だった。もし今年のように1200mか2000mかという選択であれば、エスポワールシチーの最後のJpnIタイトルはなかったかもしれない。

 中央のメンバーが例年ほどではなかっただけに地元馬にも期待が高まったが、結局は中央馬が掲示板を独占という結果。3番人気の支持を受けたナムラタイタンが6着で、コミュニティが7着。走破タイムはそれぞれ、1分38秒0、38秒1というものだが、両馬ともに盛岡ダート1600m良馬場の持ちタイムはもう少し速い。しかし期待が大きかっただけに、両馬ともに4コーナーでは1、2着馬を射程に入れる3番手あたりの位置で真っ向勝負を挑み、そのぶん最後に失速したのは仕方がない。近年のダートグレードでは、レース中盤から中央4〜5頭ほどが前に固まり、そこから差がついて地方馬が追走というような場面もめずらしくないが、同じ掲示板を独占されるにしても、見せ場をつくった果敢な挑戦だった。もちろんそれだけの能力がなければ見せ場もつくれないのだが。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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