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ディアドムスが競り合いを制し、重賞連勝で2歳ダート王者に!/全日本2歳優駿・川崎

  • 2014年12月18日(木) 18時00分

(撮影:高橋正和)



三浦皇成騎手、狙った通りの会心の勝利

 川崎競馬場では、この開催の前に本馬場の砂の全面入れ替えが行われた。今回の勝ちタイム1分45秒3(稍重)は、過去10年の勝ちタイムが1分40秒0〜42秒3ということを考えると相当遅いもの。ちなみにレース数が比較的多く行われている、C1およびC2、1400メートル、良〜稍重という条件の勝ちタイムの平均を計算してみたところ、前開催(11月3〜7日)が1分30秒7で、今開催のこの日までの3日間が1分32秒3と、1秒6ほど遅くなっていた。

 さらにこの日は稍重でも全体的にかなり時計がかかっていた印象で、それゆえ例年よりも遅い決着となったのは必然。入れ替えた砂の産地は変わったものの、砂質(海砂)、砂厚(8.5cm)は変わらずだから、馬場がまだ落ち着いていなかったと考えられる。前年のハッピースプリントの勝ちタイムからは5秒近くも遅いもので、何年かののちには、「なぜこの年の勝ちタイムだけこんなに遅いのだろう」と疑問に思うこともあるかもしれないので、直前に砂の入れ替えがあったことは忘れないようにしておきたい。

 今回は南関東2歳馬のチャンピオン級の2頭、平和賞、ハイセイコー記念を連勝したストゥディウム、JpnIIの兵庫ジュニアグランプリを制したジャジャウマナラシが、ともに早々と年明けからの始動を表明していたため、中央vs地方という観点ではやや興味の薄いものとなった。中央5頭のうちダートで2勝と実績を残している4頭が単勝5倍以下で拮抗し、5番人気以下は30倍以上という人気。レースもそのとおり、3コーナー過ぎからは人気を集めた4頭による争いとなった。勝ったのはディアドムスで、北海道2歳優駿からの連勝。デビューから2戦は芝を使われていたが、ダートに限ればこれで4戦3勝とした。

 スタート後の直線では、ワンダフルラスター、タイセイラビッシュ、タップザット、それに浦和のラッキープリンスの4頭が横一線の先行争い。そのため2F目で10秒9と速くなったが、1〜2コーナーを回るところでは4頭が内枠からの順に隊列が決まると、4F目のラップは14秒2と落ち着いた。前後半で分けてみると、前半4Fが51秒0なのに対し、後半4Fは54秒3。最後の2Fは、14秒7、14秒2とかかっている。勝ちタイムは例年より遅いものだが、冒頭で触れたとおり砂の入れ替えによってかなり時計のかかる馬場になっていて、スタート後に競り合った4頭はややオーバーペース。その争いを前に見る位置を追走していたのが勝ったディアドムスで、前で競り合った馬たちの行き脚が鈍り始めた3コーナー過ぎで仕掛け、一気に先頭をうかがう位置まで進出。あとは先行勢の中で粘っていたタップザットを競り落とすだけという競馬だった。

 思えばディアドムスは前走の北海道2歳優駿も、回りこそ逆だが同じようなレースをしていた。4コーナー手前で前の4頭が横一線となり、その後ろで虎視眈々。4コーナーを回るところで外に持ち出し、直線で突き放すというもの。ディアドムスはそれが今回もピタリとハマり、鞍上の三浦皇成騎手にとっては、狙った通りの会心の勝利だった。

 ディアドムスは2走前のプラタナス賞でタップザットの5着に負けていたこともあり今回は3番人気という評価だったが、前走の北海道2歳優駿、そして今回のレースぶりからは、むしろプラタナス賞が力を出し切っていなかったということなのだろう。3〜4コーナーから直線で見せた際立った脚色からは、中央よりも地方のダートでこそ力を発揮するという可能性はある。もしそうであれば、特に今回は砂の入れ替えによって普段より時計のかかる馬場になり、それがプラスに働いたということも考えられる。

 ディアレストの所有馬、高橋裕調教師の管理馬では、かつてディアヤマトが2007年の兵庫ジュニアグランプリを制して臨んだこのレースで4着ということがあったが、今回はその雪辱を果たしたという結果。高橋裕調教師にとっては、中央・地方を通じてのGI初制覇。同じく、三浦皇成騎手もGI初制覇となったことをことのほか喜んでいたのが印象的だった。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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