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田中健騎手(1)『徹底した逃げ戦法!逃げ馬として完成するまで』

  • 2015年03月09日(月) 12時00分
おじゃ馬します!

▲3月のゲストは田中健騎手、相棒アンバルブライベンのこと、GIへの意気込みを語ります


アンバルブライベン(牝6)とのコンビで京阪杯、シルクロードSを勝利。徹底した逃げ戦法で、数々の強豪牡馬たちをも封じ込め、短距離戦線をおおいに沸かせています。次の戦いはいよいよ、GI・高松宮記念。今回は、“逃げ馬”として完成の域に達するまでの過程を伺っていきます。(取材:赤見千尋)


最初は「何がだめなんだろう?」と


赤見 京阪杯とシルクロードSで、重賞2勝。すごいコンビになりましたね。レースのVTRは何回も見ました?

田中 あっ、はい、見ました。何回見てもうれしいですね。

赤見 重賞を勝ったの、ご自身にとっても久しぶりですよね?

田中 そうですね。木原厩舎のマルモセーラ以来です(2010年ファンタジーS)。なので、ゴールした時はうれしかったですし、感慨深いものもありました。

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▲馬にとっては初重賞、田中騎手にとっては久々のタイトルとなった京阪杯


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▲コンビ2つ目の重賞タイトル、シルクロードSでの勝利騎手インタビュー


赤見 でも、ゴールの時はひょうひょうとしてたように見えました。あんまり感情を爆発させないタイプですか?

田中 そうだとは思うんですけど…、ちょっと自分ではわからないです(苦笑)。でも、重賞を勝てるということ自体、簡単にできることではないので、やっぱりうれしかったです。それに、一頭の馬をこんなにずっと乗せてもらうこともなかなかないですし、重賞というひとつの結果を出せて、オーナーさん、先生には本当に感謝してます。

赤見 今の時代、一人のジョッキーと一頭の馬がここまで一緒って、なかなかないですよね。

田中 ないですね。オープンを勝ったぐらいから乗り替わりっていうことも多いですからね。去年の夏場に結構重賞を使わせてもらったんですけど(アイビスサマーD、北九州記念、セントウルS)、そこでなかなか結果が出せなくて。自分でも重賞を勝ちたくて、結構無茶な競馬もしてしまったんです。

赤見 勝ちたい気持ちが強すぎて。

田中 自分でもわかってたんですけどね。それで負けてたので、すごく悔しかったですね。それでもずっと乗せてもらっているのは、本当にありがたいです。

赤見 500万条件の頃からずっと一緒に戦ってきた馬ですけど、最初のきっかけはどんなことだったんですか?

田中 最初は本当、普通に先生から頼まれただけだったと思うんですけど。うちの師匠(浅見秀一調教師、3/1付けでフリーに)は、他の厩舎の馬でも乗せてくれるので。

赤見 最初に乗った頃の印象って覚えてますか?

田中 最初は攻め馬に乗ったんですけど、すごくよく動いてたので「走るな」って思いました。昔から坂路で結構いい時計で走ってくれてたんです。それなのに、競馬に行ったら大敗するような感じで…。

赤見 調教はいいけどレースになると、という感じですか?

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▲「調教はいいけどレースになると、という感じですか?」


田中 はい。最初の頃はダートのレースを使ってたんですけど、ゲートから出て躓いたりしてたので。その頃は「何がだめなんだろう?」っていう印象でしたね。

赤見 それが、変化を感じるようになったのはどの辺りからですか? 一昨年の夏の小倉で500万1000万を2連勝しましたが、この辺りで一気に強くなったという感じですか?

田中 そうですね。その頃になると、逃げた時の感じがすごく良くなっていきました。きれいに逃げられるようになると、やっぱり変わりますね。逃げさえすれば走ってくれる、ただ逃げるだけでちゃんと力を発揮してくれる、そんな感じになってきました。馬自体が変わったというよりは、逃げるレース自体が板に付いてきたというか。

赤見 そこからもう一段階成長というか、レースぶりが変わってきたじゃないですか。

田中 変わってきましたね。乗り方自体はそんなに変えてるつもりはないんですけど、それまでにいろいろ試してきたというのもあります。

去年の夏の福島の時は(バーデンバーデンC)、本当に楽に出て、3着に粘ったという感じでした。その後が、さっき言いました重賞で負けてた時期なんですけど、その時にもいろいろと試していましたので。ハイペースで行ってみたり、二番手で行ってみたり。そういう経験ができたので、非常に合ってきたのかなとは思いますね。

赤見 この馬にとって一番良い逃げ方みたいなのを試行錯誤してたという。

田中 そうですね。条件戦の時は、スピードだけはすごくあったんです。最初に行き切って、突き離して、あとは最後にどこまで粘るか、みたいな感じだったんですけど、重賞を勝てるようになった頃は、最後の直線で二の足をすごく使えるようになって。それがやっぱり、重賞を勝てるようになった理由かなと思います。

赤見 レースを見てると、ゲートが速いというよりは、その後のダッシュが速いように見えるんですけど。

田中 両方速いですね。ただ、今より条件戦を走ってた時の方が、多分速いと思います。

赤見 周りと比べてということですか。

田中 そうですね。オープンになって周りの馬も強くなって、あの馬にとっては、条件戦の時よりは楽に行けなくなったので、そう感じるのかもしれないですけど。

赤見 でも、すごい成長ですよね。だって、去年の今ごろはまだ重賞では…、という感じだったじゃないですか。5歳の暮れ、6歳になっての本格化。

田中 はい。それまでも、うまいこと行けば重賞でもやれるかなとは思ってたんですけど、やっぱりそんなに甘くはなくて。去年の夏場はちょっと苦しかったですけど、その後にいろいろ試してきたことに、馬が応えてくれた感じですね。(つづく)

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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