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米クラシックの勝利はやはり夢なのか いや国枝師の見解は違う!!/トレセン発秘話

  • 2016年05月12日(木) 18時00分


◆「日々の調教が米国と日本では決定的に違うから」

 21年ぶりとなる日本調教馬の挑戦が注目を集めた7日のケンタッキーダービー(チャーチルダウンズ競馬場・ダ2000メートル)は、1番人気ナイキストがデビューから無傷のV8で快勝。UAEダービー制覇から駒を進めた日本馬ラニは、後方から差を詰めるも10馬身半差の9着に終わった。

「内容は良かった」と主戦・武豊が語ったように95年スキーキャプテン(14着)に比べれば健闘だろうが、改めて敷居の高さを感じさせる一戦だったのも確か。日本調教馬が米クラシックを制するのは、やはり夢のまた夢なのだろうか?

「いや、決して不可能な挑戦ではないと思う」

 週明けの美浦で、当方の悲観的見解に“ノー”の答えを出した人物がいる。美浦のご意見番・国枝栄調教師だ。

 ラニはテンから飛ばす米国独特のサバイバルレースに対応できなかった。なぜか?それは絶対的な能力差や、粘土質と言われる米ダートに対する適性ではない。「日々の調教が米国と日本では決定的に違うから」と師は語る。

「徐々にピッチを上げて直線はじけさせるのが日本では理想の稽古だけど、アメリカは違う。調教にゴールという意識はなく、テンから12秒で入ってそのスピードを持続させるのが定番。競馬スタイルの違いが、調教にもしっかり表れるんだ。これも準備の差と言えるが…」

 なるほど、関西圏のGIでは栗東滞在を定番とするトレーナーらしい分析。「関西馬を負かすにはこっちも関西馬になること」が師の口癖だが、米国馬を負かすには米国馬として生まれ変わる必要があるというわけだ。

 もっとも国枝師が感嘆していたのは、レース終了直後の優勝馬インタビュー。

「日本の馬ならエキサイトして大変だろうが、両側に人に立たれて平然と歩いている。これが競馬を終えたばかりの馬かと感心したよ。向こうは日頃からポニーが誘導してゆったり調教するから、落ち着きがまるで違うね。日々、ラッシュ状態でせかされて調教する日本馬とは、メンタルで決定的違いが生まれている。施設、乗り手を含む日本調教馬の課題がそこには見えた」

 結果は完敗。だが、日本の調教スタイルに一石を投じるなら、今回の果敢なる挑戦も決して無駄ではないかもしれない。(美浦の宴会野郎・山村隆司)

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