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ディープインパクトは100%なのか?

  • 2005年04月11日(月) 11時12分
 本命党にとっても穴党にとっても、今週の皐月賞は「ディープインパクトを巡る戦い」であろう。

 最初に説明しておくと、私はディープインパクトの評価を下げている立場である。これが予想でなくレーティングをつけろというなら、もちろん世代最上位にするが、それと予想は別な話となる。

 グリーンチャンネルの「クラシックパーク」でも少し話したが、一番の懸念材料は、少頭数の外捲りしか経験せずに本番を迎えてしまったことである。少頭数は自分の強さが招いた結果でもあるので仕方ないが、外捲りばかりになったのは意図的なのか偶然なのか、まだ分からない。

 ちなみに、前走10頭立て以下から皐月賞に勝ったのは過去10年だとジェニュインとアグネスタキオンだが、ジェニュインはセントポーリア賞を16頭立てで、アグネスタキオンはラジオたんぱ杯を12頭立てで勝っていた。9→7→10頭立てでの皐月賞参戦は、近年ではやはり特殊なケースだろう。

 若駒Sはエンジン始動がやや遅かったが、そのぶん最後に大きく突き放し、弥生賞は反対に着差こそ小さかったものの、残り600mからのペースの上がるところを捲り上げての勝利には意味があった。ただ、それでも引っ掛かるのは、フルゲートの皐月賞には、それ以上の悪いシナリオも存在しうるからなのである。

 枠が出ていない段階では話のしようがないが、例えば内枠から下げて出直しになった場合、スロー化しつつある近年の皐月賞では、弥生賞に近いパターンになったうえで、さらにしんどい外捲りを要求される可能性がある。また、外捲りでなく中を割りに行った場合、スムースに進路が開かない可能性や馬自身がそういう競馬を得意としない可能性もある。

 もちろん、それは「可能性」に過ぎず、ディープインパクトは有利不利を超越した強さを持っているのかもしれないし、馬群を割るガッツを持っているのかもしれない。ただ、それもまた「可能性」に過ぎないのである。

 競馬では実力と関係のないリスクを全馬が持っており、予想ファクターの少ない3歳春は特にそのリスクを強く意識しなくてはならない。それを放棄しては皐月賞以外でも穴予想などできなくなる。

 今回、ディープインパクトを本命にする人でも「じゃあ単勝を100万円買え」と言われたら拒むだろうし、もし買ったらレースが終わるまでビビるだろう。その心情こそが「ディープインパクトでさえ抱えているリスク」を裏付けるものだし、予想において忘れてはいけないものなのだ。それは結果としてディープインパクトが「勝つ」「勝たない」とは別次元の話である。

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1970年東京生まれ。競馬評論家、ギャンブル評論家。中学生時代にミスターシービーをきっかけとして競馬に興味を持ち、1990年・大学在学中に「競馬ダントツ読本」(宝島社)でライターとしてデビュー。以来、競馬やギャンブルに関する著述を各種媒体で行うほか、テレビ・ラジオ・イベントの構成・出演も手掛ける。競馬予想に期待値という概念を持ち込み回収率こそが大切という考え方を早くより提唱したほか、ペーバーオーナーゲーム(POG)の専門書をはじめて執筆・プロデュースし、ブームの先駆けとなった。

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